
「入社4年目。収入も安定してきたし、そろそろ投資してみたいな……」そんな会社員の方、いらっしゃるのではないでしょうか?
副業として認められやすい投資手法であること、節税効果があることなど、会社員に向いている副業としてよく挙げられるのが「不動産投資」です。
「ローンを組んで始められる」という、株式投資など他の手法にはない大きなメリットのある不動産投資ですが、そこでふと疑問に思うこと……。
「『現金をためてから』『融資を受けてすぐ』……どちらがいいの?」
今記事では、そんな疑問を解決するべく両者のメリット・デメリット、それぞれのやり方が向いている人について解説します。
さらにこの記事の最後では、不動産投資ローンについてお悩みの方に「住んでから投資」というオトクな投資手法をご紹介します。ぜひ最後までご覧ください。
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1. ローンを組むなら勤続3年目以降がいいって本当?
まずは、よく言われる「ローンを組むなら勤続3年目以降」とはどういうことなのか、それは本当なのかを検証してみましょう。
1.1 不動産投資ローンの場合
賃貸経営を行うための収益物件購入に利用されるのが不動産投資ローン。返済原資は家賃収入が基本となるため、物件の担保価値や事業計画が重要視されるのが一般的です。
しかし万が一家賃収入からの返済が難しくなった場合は、個人の収入や保有資産から返済することになります。そのため金融機関は個人の収入や勤務先、年収、勤続年数などの属性についても審査するわけです。
具体的な審査基準については公表していない金融機関が多いですが、一部の金融機関ではローンの貸し付け条件に「同一勤務先に3年以上勤務している方」などと明記しているところも見られます。
収入の安定性が重要視されるため、転職直後は審査に不利になるケースもあるでしょう。
ただし金融機関によっては、転職後間もない場合でも転職先の企業評価などによってむしろ審査に有利になるケースもあり、一概には言えません。
あくまで「ローン審査に不利にならない目安」として「勤続3年」がポイントになるといえそうです。
1.2 住宅ローンの場合
国土交通省 住宅局「令和元年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」(2020年3月)によると、調査に回答した1285の金融機関のうち95.6%が融資審査の際に「勤続年数」を考慮すると回答しています。
具体的な勤続年数の内訳を見てみましょう。

出典:国土交通省 住宅局「令和元年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」(2020年3月)より作成
住宅ローンの場合、返済原資は給与など個人の年収となるため、収入の安定性を計る審査基準として勤続年数はより重要視される傾向にあります。
ただし不動産投資ローンと違って、住宅ローンは生活になくてはならない自己居住用のための借り入れです。そのため不動産投資ローンよりは緩めの「勤続年数1年以上」を基準とする金融機関が多いことが見て取れます。
住宅ローンに関しては「最低勤続年数1年」が目安になるといえそうですね。
【円グラフで確認】融資審査の際に金融機関が考慮する「勤続年数」は何年以上?
2. 不動産投資デビュー! 「現金をためてからVS融資を受けてすぐ」どっちが正解?
では、勤続年数が4年を超え「そろそろ投資デビューしたいな」と考えている方のお悩み……「現金をためてから」VS「融資を受けてすぐ」、それぞれのメリット・デメリットを検証しましょう。
2.1 不動産投資【現金をためてから】のメリット
どんな属性の人でも物件が買える
どんな物件でも購入できる
物件引き渡しまで短期間で済む
金利がかからない
金利上昇リスクがない
運用中のキャッシュフローがよくなる
現金をためてから一括購入する場合、融資審査を受ける必要がありません。そのため審査で不利になりそうな属性の方や担保価値の低い物件を購入したい方でも不動産投資が始められます。
融資手続きが不要な分、気に入った物件が見つかってから購入までの手間・時間もかかりません。
毎月の返済や金利負担もないため、キャッシュフローが良くなるメリットもあるでしょう。
2.2 不動産投資【現金をためてから】のデメリット
レバレッジ効果がなくなる
資金がたまるまで不動産投資が始められない
手元の自己資金が少なくなる
投資資金の回収に時間がかかる
不動産投資に融資を使う大きなメリットに「レバレッジ効果」があります。これは自己資金と融資を組み合わせることで、自己資金のみの場合よりも大きな利益を上げることです。
例えば自己資金1,000万円で利回り5%の物件を購入・運用した場合、自己資金のみだと年間収益は50万円。一方自己資金1000万円+融資2000万円で3000万円の物件なら年間収益は150万円と3倍になります。
融資を使わない最大のデメリットはこのレバレッジ効果を逃すことといえるでしょう。
レバレッジについて詳しくは以下の記事を参考にしてください。
「レバレッジ」の意味を分かりやすく解説! レバレッジ取引のメリット・デメリット
2.3 不動産投資【現金をためてから】が向いている人
じゅうぶんな現金をためて、現金一括購入で不動産投資を始めるのが向いている人についてまとめてみましょう。
年収が低い、転職直後、個人事業主など融資審査に不利になりがちな人
再建築不可物件など担保価値の低い物件を購入したい人
年齢が高く、完済時年齢が貸し付け条件から外れてしまう人
健康状態に問題があるなど団体信用生命保険(団信)への加入が難しい人
じゅうぶんな資金を持っている人
気に入った物件を見つけたら素早く購入したい人
金利など余計な費用をかけたくない人
不動産投資ローンと年齢・物件の関係については、以下の記事に詳しく載っています。ぜひ参考にしてください。
2.4 不動産投資【融資を受けてすぐ】のメリット
レバレッジをかけられる
頭金があればすぐに不動産投資を始められる
金利の支払い分を経費計上できる
手元に自己資金を残しておける
団信に加入することで生命保険代わりになる
借り入れたローンを予定通りに返済した実績があれば、次の融資につながる可能性がある
融資を受けて不動産投資を始める大きなメリットの1つが、先述した「レバレッジ効果」でしょう。
また現金一括購入の場合は、購入時に手持ちの資金が一気になくなってしまいます。
一方ある程度自己資金を手元に残して残額をローンで賄えば、想定外の支出などに対応する余裕を持つことが可能です。
その他、ローン契約と同時に団信に加入すれば、契約者に万が一のことがあっても残債は保証会社が弁済してくれます。
生命保険代わりとして、借金なしの不動産を財産として家族に残すことができるでしょう。
不動産投資ローンについて詳しくは以下の記事を参考にしてください。
住宅ローンと違いあまり知られていない不動産投資ローン。金利はどのくらい? 審査基準は?
【不動産投資】頭金の目安は?頭金を入れるメリット・デメリット
2.5 不動産投資【融資を受けてすぐ】のデメリット
ローン審査から契約まで時間がかかる
ローン契約に係る手数料や保証料などが発生する
運用中のキャッシュフローが悪くなる
物件に抵当権が設定される
金利分支出が増える
金利上昇リスクがある
融資を組むにあたっては、保証料、手数料、金利などの支出が別途増えることに注意しなければなりません。
毎月の返済も発生するため、現金一括よりは毎月のキャッシュフローが悪くなることも考えられます。
ローンは長期にわたるものなので、金利上昇リスクもあるでしょう。
銀行融資を組む場合の手順やポイントについては、ぜひ以下の記事も併せて読んでみてください。
不動産投資で銀行融資を受けるには? 申込手順と審査ポイントを紹介
2.6 不動産投資【融資を受けてすぐ】が向いている人
では、融資を受けて不動産投資をするパターンはどのような人に向いているのでしょうか?
少しでも早く不動産投資を始めたい人
自己資金が少ない人
今後2件目、3件目と所有物件を増やしていきたい人
レバレッジ効果を得たい人
会社員や公務員など属性が高めに評価されやすく、ローンが組みやすい人
やはり「自己資金は少ないけど早く不動産投資を始めたい」という人には融資を受けて始めるパターンがよいでしょう。
融資審査で高く評価されやすい属性の方や担保価値のある物件を購入する方にとっても、レバレッジ効果を得て運用できる点で、融資を受ける方がメリットは大きいといえそうです。
【不動産投資】サラリーマンは融資審査に有利!?各金融機関の審査ポイント
3. 住宅ローン控除を生かす「住んでから投資」という選択肢も……!
ここまで現金一括もしくはローンを組んで不動産投資を始める方法についてお話してきました。
実はこの2つ以外に、住宅ローンを利用した「住んでから投資」という方法があるのをご存じですか?
「住んでから投資」とは、まずは住宅ローンで自己居住用の物件を購入し、マイホームとして自分が住みます。
その後自分は別な物件に引越し、元の物件を賃貸に出すことで収益を得る投資スタイルのことです。
詳しく見ていきましょう。
3.1 「住んでから投資」のメリット
不動産投資ローンよりも金利の低い住宅ローンが組める
住宅ローン控除を利用できる
通常不動産投資のための物件購入には不動産投資ローンや事業用のプロパーローンなどを利用しなければなりません。
しかし「住んでから投資」の場合、始めは自己居住用として物件を購入し実際に自分が住むことになるので、問題なく住宅ローンを利用することができます。
そのため住宅ローン控除を適用することも可能で、大きなオトク感があるでしょう。
3.2 「住んでから投資」のオトク度シミュレーション
実際にどのくらいのオトク度があるのか、6000万円を35年ローンで組むことを条件としてシミュレーションします。
【住宅ローン控除額】
6000万円/35年ローンの場合
……364万円
【不動産投資ローンと住宅ローンの金利負担の違い】
6000万円/35年ローン
住宅ローン金利0.475%/不動産投資ローン金利2.675%の場合
……住宅ローン控除を受けられる13年間で見た金利差約1015万円
13年間住宅ローンを使って自分が住んでから投資に回すのと、最初から収益物件として不動産投資ローンを組むのとでは、両方で約1,379万円の負担差が出ることが分かりました。
「住んでから投資」のオトク度が非常に大きいことが見て取れるのではないでしょうか。
「住んでから投資」のシミュレーションについて、詳しくはパワーカップルにも多い!?住宅ローン控除を投資に最大限生かす 20代で買って10年住んだら貸す 「住んでから投資」のおトク度の記事に載っています。ぜひ参考にしてください。
3.3 「住んでから投資」が可能な方法
実はこの「住んでから投資」のパターンを使うには注意点があります。
通常住宅ローンを借り続けたまま自宅を賃貸に出すのは、転勤などのやむを得ない場合で金融機関が認めたケースに限られます。
そのため「住んでから投資」をするには、
繰り上げ返済などでローンを完済してから賃貸に出す
不動産投資ローンに借り替える
などが必要なことに注意しなければなりません。
原則として、住宅ローンを使って不動産投資をすることはできませんので注意しましょう。
住宅ローンと不動産投資ローンの関係については以下の記事を参考にしてください。
不動産投資ローンと住宅ローンは併用できる? どっちを先に組むのが正解?
【要注意】住宅ローンを使って不動産投資をしていると、こんな時にバレる!
不動産投資ローンと住宅ローンの違いは? 融資を受けるならどちらが先?
まとめ
不動産投資は融資を受けて始めることができる点で、他の投資手法とは違う大きなメリットがあります。
少ない自己資金ですぐに始めることができレバレッジ効果もあるため、不動産投資に取り組む多くの人がアパートローンなどを利用しています。
しかし現金をためてから一括購入する手法ならではのメリットもあり、一概にどちらがいいとは言えません。
各投資家の投資スタンスや属性、自己資金額、今後の展望などに合わせて適した方を選ぶとよいでしょう。
ここで解説した「住んでから投資」も選択肢の一つとして、ぜひ検討してみてくださいね。
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※この記事はLIFULL HOME'S 不動産投資コラムより提供を受けたものです。
参照記事
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LIFULL HOME'S 不動産投資編集部