朝ドラ『おちょやん』、原作NGになった「ヤバすぎる」ストーリーとは!? NHKヒロインの「ドス黒い」人生

  • サイゾーウーマン
  • 更新日:2020/11/21

国民的ドラマといわれるNHKの連続テレビ小説、通称「朝ドラ」。ヒロインがさまざまざな苦難にめげず成長していく物語が根幹にあるドラマが大半だが、どうやら次期朝ドラはきな臭いようで……? 『本当は怖い世界史』(三笠書房)『あたらしい「源氏物語」の教科書』(イースト・プレス)などの著作を持つ歴史エッセイストの堀江宏樹氏が、朝ドラ『おちょやん』の本当のヒロイン像をひもとく!

11月30日からの放送開始が決定したNHK連続テレビ小説『おちょやん』。昭和の名脇役女優・浪花千栄子さん(1907―73)の人生をモデルにした作品になるとのこと。

しかし、浪花千栄子さんには自伝『水のように』(六芸書房、1965/現在は朝日新聞出版刊)という著作があるにもかかわらず、原作どころか原案としてすらクレジットされていません。NHKの公式サイトには「このドラマは実在の人物をモデルとしますが、物語を大胆に再構成し、フィクションとして描きます」の断り書き。

これは怪しい。怪しいニオイがプンプンや。ということで『水のように』を入手、その内容を確認したところ、実に「あかん」事実が判明したのでした。おなかの子どもを流産するべく、凍える川に飛び込むシーンも描かれた『おしん(1983―84)』の時代なら大丈夫でしょうけど、最近の朝ドラでは“映像化不可”なヤバいシーンが頻発なのです。

内容はすごく面白いのです。しかし、これはたとえ困難が訪れようとも「ハートウォーミング」であるべき昨今の「朝ドラ」には向かない。心が削られる。「ハートブレーキング」でしかないのでした――。

「私の記憶はドス黒い汚点」。

浪花千栄子さんは、自らの若き日々をそう言い切ります。まず、父親がものすごいダメ男なんですね。「鶏のヒナを売り歩く行商人」というニッチな職種なんですけど、浪花さんが9歳の時に、おそらくは芸者あがりの、だらしない後妻にメロメロになってしまいます。

後妻が浪花さんと弟につらく当たるので、「こんな家にはいられない!」となった二人は家から逃げ出し、山で迷います。夜も更け、おなかも空いてきます。

すると何処からか、嗅いだこともない甘い良い匂いが漂ってくるではありませんか……。

二人はフラフラと匂いに惹かれて小屋に忍び込み、そこにあった「何か」を手当り次第に頬張ります。それは人生で未経験どころか、まるで異次元のおいしさで、もう手が止まらない。しかし、そこに小屋の持ち主のおじいさんが異変に気づいてやってきて、二人は見つかってしまいます。

二人が頬張っていたのは、豚のエサでした。正確にはおじいさんが、町のパン屋で廃棄される食パンの耳を、豚のエサとするために買ってきて、豚用に準備していたのに、空腹の二人が豚小屋に乱入、豚からエサを奪って食べてしまっていた、という。まぁ、朝ドラにはできないですよね……。

おじいさんは二人に同情してくれましたが、ダメな父親の心根が変わることなどありません。

小学校に通えたのはたった2カ月のみ。再婚した継母に嫌われ、父親は実の娘を後妻の言うがまま、わずか9歳で大阪・道頓堀の芝居茶屋に売り飛ばしました。どんな貧乏な家でも12歳までは家に置いておくのが普通だったそうですが……。

こうして、浪花さんの「おちょやん」時代の開幕です。

そして、この「おちょやん」自体が激ヤバなんですわ。

NHKの公式サイトでは「“おちょぼさん”がなまった大阪ことばで、茶屋や料亭などで働く、小さい女中さんを意味」するとごまかされていますが、実情は、店の労働者カースト最下層の児童労働者です。児童福祉法なんて存在すらしなかった時代の産物ですね。

「トメ」とか「ウメ」とか、そういう名前で呼ばれさえせず、そもそも名前を覚えてもらえることが期待できない。一律、「おちょやん」として呼ばれ、こき使われ、布団で寝させてもらうわずかな時間以外に、まともな休憩時間がない。それこそ、「私が死んでも代わりはいるもの」(『エヴァンゲリオン』 綾波レイ)的な存在でしかない。

取替可能、存在価値が低いので、大事になどされません。休憩しようと思ったら、便所で仮眠するしかない。いうまでもなく、当時のトイレは汲み取り式。悲惨すぎます。「おちょやん」は、「名前を失った少女」と考えてもらって結構かと思います。

自分を押し殺し、奉公し続けるしか生きる術のない、それは苦しい日々だったようです。しかし、芝居に興味を持ちはじめた浪花さんは、文字さえ読めない自分から脱却するべく、独学で漢字を勉強しはじめます。それも汲み取り式の便所の個室で、でした。

『水のように』には何回も自殺未遂のシーンが出てくるのですが、やっぱり「おちょやん」時代にもそういう気持ちになってしまうことがありました。

原因はわずか2銭のことです。店の人から買い物を頼まれ、オツリの2銭を不注意で失ってしまいます。2銭を自分のフトコロに入れたと疑われることがイヤだったので、自殺しようと浪花さんは心を決めたのでした。

首吊の場所として選ばれたのは、やっぱり便所……。しかし猫が何かを察したらしく、便所に乱入、まとわりついてきたので自殺しなくて済んだらしいのです。それ以来、浪花さんは猫を大事にしたそうです……。

このような「ドス黒い汚点」ばかりの記憶が惜しげもなく披露されていくわけです。

その後も続くわ続くわ、苦労の日々。「おちょやん」時代を抜け出し、あるご家庭の女中になったときも、給料はすべて先払いで、例のダメな父親が持って逃げた後だったりしたのです。悩んだ浪花さんは、

「そうだ、京都へ行こう」(原文ママ)

と思い立ったのでした。

ーー後編に続きます!

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