河瀬直美監督なら国際映画祭が進化...学生が語るSDGsに直結する企画全貌

河瀬直美監督なら国際映画祭が進化...学生が語るSDGsに直結する企画全貌

  • 日刊スポーツ
  • 更新日:2021/09/15
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「なら国際映画祭 for Youth 2021」で20日に上映される、ユースシネマインターンが制作した映画「いつか、どこかで」のポスター

東京オリンピック(五輪)公式記録映画の監督を務める、河瀬直美監督(52)がエグゼクティブディレクターを務める「なら国際映画祭」が、18日から20日まで奈良市内で開催される。2010年(平22)にスタートした同映画祭は2年に1回、偶数年に開催し、奇数年はプレイベントが行われてきたが、11年目となる今回からプレイベントの名称を「なら国際映画祭 for Youth 2021」と変更し、さらなる進化への一歩を踏み出す。

10年目、6回目の開催となった20年に立ち上げた、高校生と大学生が映画を一般の観客に届ける配給・宣伝に挑戦する「ユースシネマインターン」が今年、2年目を迎える。先だって行われてきた、一線で活躍する映画監督を講師に招き、中高生が主体となって構想、撮影、編集、上映までを行う「ユース映画制作ワークショップ」と、長編や短編の映画を10代のユース年代が審査員となって審査する「ユース審査員」も、それぞれ4回目となり<1>映画を作り<2>見て審査し<3>届けるという、映画の仕組み全てをユース年代が自分たちで出来る基盤が完成した。そのことを受けて今後、新たに主柱となる「ユースシネマプロジェクト」を強化すべく名称を変更した。

ユースシネマインターンの活動として、セルビア、クロアチア、モンテネグロ、マカオ、日本・マレーシア合作映画「いつか、どこかで」を上映する。上映の宣伝、広報企画をユース年代6人で展開しているが、5月にインターナショナルスクールを卒業し、初めて参加した神戸市在住の瀬戸紫英さん(18)は、予告編とポスターの制作を担当するのと並行し、関西圏のメディアへの取材や記事掲載の交渉も行っている。「すごく良い経験をしていますし、勉強になっています」と目を輝かせた。

「いつか、どこかで」は、大阪を拠点に世界を漂流しながら映画を作ることから“シネマ・ドリフター”と呼ばれる、マレーシア出身のリム・カーワイ監督による、バルカン半島3部作の2作目で、アジア人女性バックパッカーがクロアチアやセルビア、モンテネグロを旅するロードムービーだ。同監督と撮影技師1人、録音技師1人で準備から撮影まで1カ月半で行った上、脚本なし、偶然にまかせて現地の一般人にプロの俳優を交え、即興で作ったという意欲作だ。

ただ、日本の著名な俳優が出演しておらず、宣伝においてはインパクトに欠ける。瀬戸さんは「予告を見て、お客さまを捕まえないといけない」という観点から、主人公のアデラが事故で亡くした恋人の携帯電話を寄贈した、クロアチアの「別れの博物館」を訪問する中、インスタグラムで知り合った、顔を見せない謎のセルビア人男性アレックスに会うためセルビアの首都ベオグラードに向かうといミステリー調の物語に着目。ラストがどうなる? という安易な落としどころではなく、アデラが旅先での出会いから新しい視点を得て成長していく姿を盛り込む流れで、1分40秒で予告編をまとめ上げた。

コロナ禍の中、約2カ月行った会議はリモートが中心となった。その中、河瀬監督や予告編制作会社の担当者、そしてリム・カーワイ監督本人にも意見を聞いた。同監督からは「(予告で本編を)少し、見せすぎかな?」という声もあり、最終的にOKをもらうまで試行錯誤した。瀬戸さんは「河瀬監督や第一線のプロと直接かかわり、人生のロールモデルになる大人と1対1で話が出来た。映画人の世界を知ることが出来たのは特別な体験で、将来のビジョンを明るく出来る道が開けた」と手応えを口にした。

予告編やポスターの制作より、ある意味、瀬戸さんにとって大きなハードルだったのがメディアへの取材や記事掲載の交渉だった。瀬戸さんはインターナショナルスクールに13年通い英語が堪能だが、逆に「日本語の方が、しんどい」のが本音だ。だから「知らない人に電話をかけるのも怖いし、不安だったけれど、今しか体験できない」と心を決め、各メディアがどの時間帯が忙しいか、いつ電話をかけたらいいかなどをリサーチして交渉。ある新聞社とは、ユースシネマインターンの紹介原稿を掲載する方向で話がまとまり、他の新聞社3社も掲載を前向きに検討するところまでこぎ着けたという。

コロナ禍の中、高校生や学生といった若者も、難しい時間を過ごしている。瀬戸さんも「高校2年の時、授業の半分がリモートになり、すごく焦りました。希望していた海外留学も出来ないし、難しいです」と口にする。一方で「(昨春)日本も体験したことがない外出の自粛があり、人に囲まれていることが普通ではないと思えた。人と会いたい…会うことで刺激を受けることが出来ていたと分かった」という。

中学時代からカメラに取り組み、映像制作や表現にも興味があった瀬戸さんは将来、映画業界で働きたいという思いがある。それだけに、なら国際映画祭の運営に関わっていた知人の紹介で参加した、ユースシネマインターンは大きな出会いと学びの機会となった。瀬戸さんはユースシネマインターンが、15年9月の国連サミットで採択された、国際目標であるSDGs(持続可能な開発目標)が掲げた17の目標のうちの4番目「質の高い教育をみんなに」そのものの企画だと強調。「もっと広い層の若者たちに、この機会が平等に与えられたらいいし、なら国際映画祭を、もっと、たくさんの人に知って欲しい」と訴えた。

「いつか、どこかで」は、20日午後3時から奈良市内の東大寺総合文化センター金鐘ホールで上映が行われる。チケット販売は現在、Yahoo! JAPANが運営するデジタルチケット「PassMarket」によるウェブ申し込みで行っている。観客をどれだけ集客できるかが、ユースシネマインターンの勝負どころとなるが、河瀬監督は「ユースシネマインターンは映画の宣伝活動を通して、決まりきった宣伝の枠を超え、丁寧にその作品の素晴らしさを自分たちの『まなざし』を信じて伝えてゆくことを目指します。彼らの『まなざし』は、ここから世界に繫がる『タカラモノ』として未来を創ってゆくことでしょう」と期待を寄せている。【村上幸将】

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