「私のごみです」空き缶、残飯、マスク・・・ 葉山の海岸にごみ散乱 住民VS犯人 3カ月の“記録”

「私のごみです」空き缶、残飯、マスク・・・ 葉山の海岸にごみ散乱 住民VS犯人 3カ月の“記録”

  • FNNプライムオンライン
  • 更新日:2022/05/14
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静かな海岸に野菜くずやマスクが・・・

その朝、近所の人の通報でやってきた町の職員2人は、放置されたゴミ袋を見てため息をついた。「やれやれ、またですね」すぐにゴム手袋をつけると、袋から中身を取り出して路上に並べた。

【画像】御用邸のある葉山でごみ問題。海岸には目を覆いたくなる光景が(画像14枚)

男物の白いワイシャツが出てきた。キャベツなどの野菜クズもある。食器洗い用のスポンジ、飲料のペットボトル、使い古しの不織布マスク、卵の殻、食品用の白色トレー。こういったものが分別もされずにゴミ袋にたくさん詰め込まれていた。

近所のスーパーのレシートも出てきた。この日から1週間ほど前に、殻つきホタテ貝、インスタント・ラーメン、魚介のトマト煮などを買って、合わせて1249円を現金で支払っている。ファミリー・レストランの宅配弁当のパッケージもあった。

ゴミの中身を確認し終わった職員は「今回も身元を特定できるものはありませんでした」と諦め顔だった。

御用邸のある葉山で勃発 海岸のごみ問題

神奈川県・葉山町の海岸で、今年初めから断続的にゴミの不法投棄があり、大きな問題になっている。最初にあったのは2月8日。朝、海岸を訪れた人たちはその光景に驚いた。砂浜に数十メートルにわたって延々とゴミが散らばっていたからだ。

何者かが大量のゴミが詰まった大型のビニール袋を海岸の一角に放置した。それをカラスやトンビが来て、くちばしでつつく。なかに入っている食べ物を漁るためだ。破れたビニール袋からゴミが周囲に散らばる。それをまたカラスがつついて拡散する。一部は風で飛ばされる。十メートルほど先の海の中に沈むゴミもある。こうして、砂浜に大量のゴミが散乱する。

2回目にゴミ袋が放置されたのは1週間後の2月14日。ゴミの内容物はほとんどいつも同じで、この日は洗剤の空のボトル、ビールの空き缶、キャベツやニンジン、ピーマン、割り箸、プラスチック製のスプーンやフォークなどもあった。現場の砂浜は目を覆いたくなるような惨状だった。この日から私はゴミの不法投棄を写真に記録することにした。

カラスが食い散らかし 数十メートル散乱も

3月は3回。私の目の前でカラスがビニール袋をつついている光景を目にして、カラスを追い払ったこともある。こうして、いつも忘れたころに砂浜がゴミで覆われた。付近の住民から町に連絡が入り、町はその都度、清掃員を派遣して散らばったゴミを回収する作業を強いられた。

時には付近の住民が見るに見かねて清掃することもある。この日は小雨のなか、レインコートを着た男性が一人で散乱したゴミを集めていた。この男性は「町には連絡しました。清掃員を送るので、そのままにしておいてくれと言われましたが、私たちの海をこの惨状のまま放置できませんから」と悲しそうに話した。

「あなたの行為は犯罪です」立て看板が設置されるが

事態を重視した神奈川県と葉山町は3月中旬、連名で放置現場に立て看板を設置した。看板には「あなたの行為は犯罪です」とあり、私が提供した写真を日付別に貼り付けて警告している。

ここにあるように、産業廃棄物だけでなく家庭ゴミであっても、不法投棄はれっきとした犯罪である。違反すれば5年以下の懲役もしくは千万円以下の罰金、またはその両方を科される(廃棄物の処理及び清掃に関する法律・第25条)。さらに葉山町の美化条例では2万円以下の罰金となっている(第20条)。

町の対応としては看板を設置しただけではなく、現場周辺の民泊を個別訪問したり、地区会長を通じて付近の民家にゴミ捨てルールの徹底を図ったりしていた。しかし、ゴミを不法投棄している人間にはこうした取り組みは通用しなかったようだ。

この写真は4月2日に撮影したものだ。それ以前よりゴミ自体が多かったことと、この日は風が強かったこともあって、散乱エリアはいつもより広がっていた。歯ブラシ、ティッシュペーパーの空き箱、紙袋、小包の発泡スチロール材などもあった。

ごみの中から手がかり 警察が”犯人”特定

連休が始まった5月2日朝にも、またゴミ袋が置かれた。通報を受けた町の職員がいつものようにゴミの内容をチェックしたところ、初めて個人情報が印刷された明細書が見つかった。油断したのか、捕まらないとタカをくくっていたのか。

この手がかりをもとに町はすぐに動いた。葉山署の生活安全課と連携して、本人の居所を突き止めた。「動かぬ証拠」を見せられて、本人は「私のゴミです」と認めた。葉山署は上申書を取り、二度と不法投棄をしないことを誓約させている。

ただし、過去の不法投棄については確証がなく、うやむやになったままだ。今回のケースでは、夜間にこっそり捨てに来ていたのでは? と言われている。夜の現場を見に行ってみた。

いつもゴミ袋が置かれたのは、この街灯のポールと石垣の間だ。正面すぐ向こうは波打ち際である。街灯の下だけは明るいが、周囲は真っ暗で人通りはまったくない。夜間にゴミを捨てようと思えば簡単にできる場所だ。町が設置した警告板が街灯の明かりに浮き上がっていた。

ごみ投棄は去年も 別の”犯人”が?

今回の不法投棄は2月上旬から5月上旬までの3ヶ月間で全部で8回。付近の住民に話を聞くと、昨年は近くの別の場所でゴミの放置が問題になっていたという。ほとんどのケースで、鳥につつかれたゴミ袋の中身が周囲に散乱した。

今回の人物が場所を変えてやっていたかどうかはわからないが、住民たちからは「こんなことをやる人間は信じられない」「もう、うんざりです」と怒りの声があがっている。やっている本人はゴミ袋をぽんと置いて立ち去るだけだ。そのことで、クリーンな砂浜が一夜にしてゴミに覆われる。

町の職員が後始末に追われる。清掃員が出動する。いったんは綺麗になっても、いつまたゴミが散乱するかわからない付近住民のストレスは高じる。今回はたまたま手がかりが見つかったことで、本人を特定することができた。単にラッキーだったとしか言いようがない。そうした手がかりがないまま、放置され続けているゴミが全国各地にはたくさんあると思われる。

葉山町環境課は「悪質な事案には継続して対処します。今回の件も再び起きないかどうかウォッチしていきます」と話している。

(元フジテレビ報道局記者・熱田充克)

社会部

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