国内大手企業の「ジョブ型雇用」導入率は?

国内大手企業の「ジョブ型雇用」導入率は?

  • @DIME
  • 更新日:2021/04/08
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近年、「ジョブ型雇用」に対する注目が高まってきている。日本経済団体連合会からジョブ型シフトへの提言や、新型コロナウイルス対応でテレワークが普及したことも大きな理由だ。

とはいえ、まだ日本では「ジョブ型」の定義は曖昧なまま。本調査では、従来日本で採用されてきた人事制度である「職能資格制度」に代わり、「職務や職責を定義して基準を設ける制度」を「ジョブ型」と仮定した。

Works Human Intelligenceではこのほど、統合人事システム「COMPANY」のユーザー119法人を対象にジョブ型雇用に関するアンケート調査を実施。調査期間は2021年1月27日~2月19日。
日本の大手法人での検討状況や、「ジョブ型雇用」に関連する意見について、調査結果をお知らせする。

ジョブディスクリプション(職務記述書)を導入済の法人は12.6%、導入・検討予定は45.4%

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ジョブディスクリプション(職務記述書)を既に導入している法人は12.6%という結果に。導入理由には、「同一労働・同一賃金の実現のため有期雇用社員に対して導入した」や、「中途採用に関して、特定の業務の補充のため導入した」という回答があった。

<ジョブディスクリプション(職務記述書)の導入目的>(一部回答抜粋)

・医療・福祉事業であり特定の業務に特化した専門職が必要だったため。
・適材適所の配置を実施するため。
・正社員との職務の範囲・責任の重さを明確に差別化するため非正規社員を対象とし、日本型同一労働・同一賃金(パートタイム・有期雇用労働法)対策として導入。
・定期採用者については未実施。中途採用者を募集する場合、特定の業務の補充をしたいため。
・各部署の職務の棚卸、部門・グレードごとの職務の明示、従業員のキャリアパス検討の参考資料として活用するため。

役割等級制度を導入済の法人は44.5%、導入・検討予定を含めると68.8%

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役割等級制度を既に導入している法人は44.5%という結果に。導入済の法人において、役割等級制度の適用範囲は「全社員」という回答が約半数で、次に「一定の役職」、「特定の職種」という回答が続いた。

導入理由には、評価に関するもの(専門性の高い能力発揮を評価するため/評価の納得性向上/役割・職務と処遇の一致)や「脱年功序列のために、職能資格制度から変更した」という回答も見られた。

<役割等級制度の導入目的>(一部回答抜粋)

・脱年功序列のため。
・職能制度の評価・処遇に対する不満解消のため。
・専門性の高い能力発揮を評価するため。
・人材育成や評価の納得性向上のため。
・組織の活性化および若手の離職を抑制するため
・管理職について、会社への貢献度で報酬を決めるため。また、本人のモチベーションアップのため。

76.5%がジョブディスクリプションや役割等級制度を利用、職務や職責を定義する方向へ

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上記の結果より、ジョブディスクリプション(職務記述書)または役割等級制度を既に導入している法人は47.9%となった。いずれかを導入・検討予定の法人(28.6%)と合わせると、全体の76.5%が、職務や役割を定義する人事制度を導入済または導入・検討予定であることが判明。

日本で多く採用されている職能資格制度に代わって、職務や役割に基づく制度への注目が高まっている実態が浮き彫りとなった。

コロナ禍をきっかけに「ジョブ型雇用」導入に「積極的になった・やや積極的になった」と回答15.1%

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コロナ禍をきっかけに以前と比べ「ジョブ型雇用」導入に対して「積極的になった・やや積極的になった」と回答した法人は15.1%だった。

意識に変化があった法人も見られたが、大手法人においては新型コロナウイルスの感染拡大前から人事制度変更が検討されており、「ジョブ型」もその延長線上で実施・検討されていることが明らかとなった。

「ジョブ型雇用」に関連する具体的意見

「ジョブ型雇用」に関する意見や疑問を聞いたところ、メリットやデメリットの他、日本の人事制度との融合に関する回答等が見られた。

■「ジョブ型雇用」導入に前向きな意見

・求人者の特筆したスキルが目立つため、企業からすると即戦力で期待できる人材を採用でき、採用者も職務のミスマッチで退職しにくくなるというメリットがあると思う。
・旧来の職能での等級制度による運用が成り立たなくなっており、仕事を中心としたしくみへの変更が不可欠となってきている。
・まずはメンバーシップ型とのハイブリッド型の制度に移行していきたい。
・ジョブ型雇用への変化に伴い、年功序列型から成果型へ同時にシフトしていく必要があると考える。また、異動についても再検討する必要があり、他社の取り組みを伺いたい。
・労働生産人口が高齢化する中で年功的な運用は難しく、職務と処遇を一致させる必要がある。
・報酬のポリシーを明確にしたうえで、外部労働市場と連動した納得性の高いジョブ型雇用及び報酬制度を検討する時機が来ている。
・欧米型のジョブ型雇用はマッチしない部分もあると思うので、日本企業に適したジョブ型雇用の形について是非考えていきたい。

■「ジョブ型雇用」導入に慎重な意見・懸念点

・会社として、業務をジョブ型として捉えておらず、付随する対応についても検討予定はない。
・長年をかけて培われた日本人の気質上、一律でジョブ型雇用を行う状況にはまだ至っていないと考えるため現時点では検討していない。
・「ジョブ型に変えることで給与等も成果に応じて変えていく」という考え方自体には同意するが、ジョブ型ありきというのはいかがなものか。
・専門職として一定のジョブ型雇用を拡大する可能性はあるが、一方で当該業務のマンネリ化や業務内容がブラックボックス化しやすい傾向がある。
・新卒一括採用の状況では、マッチしないように思える。
・維持の労力を考えるとメリットは少ないのではないか。
・ジョブ型雇用は専門職のイメージが強く、部署異動や管理職昇格の判断に制限をかけてしまう可能性があることを懸念している。「与えられた仕事だけをこなせばよい」という捉え方をする従業員が出てきそう。

■その他の意見

・「ジョブ型雇用」と「ジョブ型人事制度」が社内でも混同されて使われているため、言葉の定義を明確にすべき。職務基準や役割基準の人財管理(ジョブ型の人事制度・人財管理)を行う目的と範囲を明確にして、導入の検討を行うべき。
・ジョブ型雇用のイメージが先行しており経営陣では過度に期待感が高まっている中、法令によるバックアップがないため人事部門としては非常に苦しい状況にある。

総括(解説:WHI総研※シニアマネージャー伊藤裕之氏)

■注目の背景

各企業はDX(デジタルトランスフォーメーション)に代表されるデジタル化やグローバル化、さらには昨年のコロナ禍といった、近年の企業環境の変化に対応する経営戦略が求められています。人事戦略についても、経営戦略と連動した多くの変化が求められており、「ジョブ型」はその解決策の一つとして注目を集めています。

■日本で話題になっている「ジョブ型雇用」とは

ただし、現在日本の多くの企業で検討されトレンドとなっている「ジョブ型」は、本来のジョブ型雇用とは異なるものです。

その特徴は、新卒採用や(特に非管理職の)ジョブローテーション・定期昇給/昇格といった日本型の人事制度(「メンバーシップ型雇用」)の要素はある程度そのままにしたうえで、ジョブ型雇用の「職務定義および評価、報酬の明確化」「職務に対する最適な配置と人材の自律的な育成」を可能とする人事制度、運用設計です。

これを便宜上「日本版ジョブ型」と位置付けます。

■各企業・法人の人事戦略と照らし合わせた検討が必要

現在、人事戦略においては、アンケートのコメントにも見られた通り、下記の3点が重視される傾向にあります。

①処遇や機会の公平性
・同じような職務を行っている社員の処遇や報酬への納得感
・職務やポジションに適したスキルや意欲のある従業員を登用しやすい環境

②適所適材の要員配置
・必要な職務やポジションに適切な人員が割り当てられている状態
・3年後、5年後等、将来を見据えた次世代の育成
・多様性を持った人材を活用することによる、イノベーションや組織活性化
・社内におけるローテーションや公募、または外部採用の実施判断の最適化

③従業員の自律的なキャリア形成
・自らキャリアを意識することによる、学びや経験へのモチベーション向上
・企業環境の変化に対応するための学び直しや専門性の向上
・人事のみにとどまらず、現場の管理職や上司のサポートによる成長の加速

「ジョブ型」がクローズアップされている背景には、実際に移行するかは別として、職務や職責(役割)を定義し採用や配置の基準として運用することが、実施の質を高め、結果的に企業や組織の生産性やパフォーマンス向上、従業員の成長促進につながるという認識があるからだと考えられます。

アンケート結果からは、実態としては、多くの人事部門が上記の背景を踏まえつつ、現実的な解を求めて、慎重に模索を行っている最中であると判断できます。

「ジョブ型」というと、「等級のランク付けをどのように行うのか」、「報酬や評価制度をどれだけ厳密に運用するのか」等といった点に議論が集中しがちですが、まずは「自社が何を目指すのか」、つまり、そもそも経営戦略と連動した人事戦略として、「ジョブ型」の制度運用が適切であるのか判断する必要があります。

その上で、「職務や職責をどこまで規定するのか(どこまで詳細化されていれば、求めるものが実現できるのか)」を明確にする必要があるでしょう。

■職務や役割の定義作成のポイントはステップを踏むこと、現場の管理職もカギに

一方で、「ジョブディスクリプション(職務記述書)」や「役割定義」の作成は、最初かつ最大の課題になると考えます。具体的には下記のような点の考慮が必要です。

・基準としてどの粒度まで詳細に記述するか
・企業環境や、業務・組織の変化に合わせて更新できるか
・内容に納得性を持たせられるか

はじめから無理に全社で詳細な定義を行うのではなく、下記のような段階を踏むこともひとつの方法です。

・定義を行いやすい職務や職種から実施して、実現性を測る
・詳細な職務内容を記載するのではなく、まず大まかな責任範囲や期待される役割を記載する
・管理職レベルから実施していく
・いきなり定義を行うのではなく、その職務や職責で代表例となりうる社員から特徴をピックアップする(ペルソナ)

そのためには人事部門だけではなく、全社の協力や理解がなければ継続的な実施は困難です。

まず自社の戦略や人事のありたい姿、従業員に求める人材像や成長プランを明確に打ち出したうえで、社内に発信し、浸透させる時間が必要となるでしょう。

特に、現場の管理職は、職務や役割の定義を行い、従業員の成長サポートの主体となる等、実施におけるキーパーソンです。現場管理職の理解を得ることが、必要不可欠になると考えます。

<解説者プロフィール>

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伊藤裕之(いとうひろゆき)氏
株式会社Works Human Intelligence WHI総研シニアマネージャー

プロフィール
2002年にワークスアプリケーションズ入社後、九州エリアのコンサルタントとして人事システム導入および保守を担当。その後、関西エリアのユーザー担当責任者として複数の大手企業でBPRを実施。現在は、17年に渡り大手企業の人事業務設計・運用に携わった経験と、約1,200のユーザーから得られた事例・ノウハウを分析し、人事トピックに関する情報を発信している。

※WHI総研:当社製品「COMPANY」の約1,200法人グループの利用実績を通して、大手法人人事部の人事制度設計や業務改善ノウハウの集約・分析・提言を行う組織。

※Works Human Intelligence調べ

<調査概要>
調査名:「ジョブ型雇用」に関する意識調査
期間:2021年1月27日~2月19日
対象:当社ユーザーである国内大手法人119法人
調査方法:インターネットを利用したアンケート調査

出典元:株式会社Works Human Intelligence
https://www.works-hi.co.jp/

構成/こじへい

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