
45歳で外資系コンサルに勤務するAさんは、15歳年下の妻に押し切られ、高級住宅街「成城」に一戸建てを新築しました。その後、事態は悪夢のような展開に……。一体なにが起きたのでしょうか? 本記事では、Aさんの事例とともに、住宅ローンの返済計画についてFP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
妻の強い願望で、高級住宅街「成城」に一戸建てを新築したAさん
こちらは海外移住での資産運用相談において、お話を伺ったAさんの経験談が壮絶だったのでご紹介します。
現在45歳で外資系コンサル(総合系コンサルティングファーム勤務)のAさんは、7年前に15歳年下の女性と結婚しました。結婚当初はAさんがもともと住んでいた都心の賃貸マンションに同居していたのですが、子供が産まれたときのことも考えて一戸建てを新築することを考えました。
Aさんの奥さんは、富裕層が住む高級住宅街である「成城」生まれ・成城育ち、大企業の管理職のお嬢さんで短大卒業後は社会人経験がない箱入り娘でしたが、明るく無邪気なところをAさんが気に入って結婚しました。
しかし、結婚してみると気が強いところも見えてきて、特に住まいに関しては「家を建てるなら私の実家と同じ成城にしましょうよ。絶対に成城がいいわ。私、成城以外に住む気ないから」といったそうで、奥さんに押し切られる形で成城に家を建てることを決めたそうです。

(※写真はイメージです/PIXTA)
成城エリアは、豪邸が建ち並ぶことでも有名ですが、都内でありながら自然も多く、整備された街路樹の街並みも美しい地域です。高収入のAさんもさすがに迷ったそうですが、成城は治安も良く、公園や学校も多いので子育てしやすい環境と聞いたので、「かわいい奥さんのため」と、この大きな買い物に一大決心をした、ということです。
Aさんの住宅ローンと返済計画
さて、成城は高級住宅街ですから、当然土地代も高いです。Aさん夫婦にはまだお子さんはできていませんでしたが、住宅ローンを老後まで抱えたくない、との考えもあり結婚の翌年早々に購入を決めました。Aさんは購入した土地代だけでも約1億2,000万円となりました。ですが、成城ブランドで資産価値は今後も上がるかもしれない、との目論見もあります。
高収入でまとまった資産もあるAさんは、住宅ローンは1億円に収め、変動金利型で60代のうちに完済できるように25年ローンとしました。毎月の返済額は約36万円、年間の返済額は約430万円です。それでも、年収2,400万円(月収200万円)である外資系コンサルのエリートのAさんですから、無理のない住宅ローンであった、と考えられます。
高収入の裏には激務が…外資系コンサルの厳しい現実

(※写真はイメージです/PIXTA)
終身雇用制度が崩壊した、といわれる日本ですが、大企業でも年功序列や派閥主義はまだまだ残っています。ですが、外資系企業は厳しく、Aさんのような外資系の総合系コンサルは、経営問題の解決策、戦略方法の策定や業務改革からIT戦略まで、幅広い知識や経験が求められる仕事で、「結果を出して当たり前」という世界です。
特にここ数年はDX(デジタルトランスフォーメーション)推進への取り組みに積極的な企業が増えてきて、残業だけでは足りずに土日も仕事をすることもありました。せっかく成城に建てた住居でもゆっくりすることはできず、たまの休みも妻が友達を集めてパーティーなどをして自宅の自慢をしています。
さすがに若い奥さんに優しかったAさんも疲れとストレスがたまってきて、小言が出るようになります。当然、気の強い奥さんも言い返してきますので、2人の仲はだんだんと悪くなっていきました。
新型コロナの後遺症で、住宅ローン破産の危機に…
さて、そんななか、Aさんは新型コロナに感染してしまいます。感染が拡大していたころですから、自宅で過ごす療養期間もかなり苦労をしたのですが、一番大変だったのは、「後遺症」です。時間の経過とともに改善する人が多いようですが、Aさんは疲労感や倦怠感のほかに経験したことのない関節痛や睡眠障害まで出てきました。
「40代も半ばになりましたので、年のせいとも思いましたがわかりませんので、病院にかかっているところです。なんだか自信までなくなってきました」
集中力もなくなった感じがあるとのことで、当然仕事にも影響してきます。外資系コンサルは結果が出せなかったら解雇もあり得る実力主義社会です。Aさんは退職も考えるようになりましたが、それは同時に2,400万円の収入がなくなることを意味し、8,000万円以上も残る住宅ローンが気持ちをさらに重くします。
「このままじゃあ、住宅ローン破産だなぁ」
突然妻に離婚を切り出され…Aさんのその後

(※写真はイメージです/PIXTA)
年は離れていても、高い収入があり、クールでエネルギッシュに働くAさんに魅力を感じていた奥さんでしたが、病気で弱った姿を見たり「退職するかもしれない」と言い出したりしたことで、ある日突然、Aさんに離婚を切り出してきました。心身ともに疲れ切ってしまったAさんは申し出を受け入れ、現在は1人で成城の一軒家に住んでいます。
「しばらく休んで心機一転、海外で独立しようかとも考えて準備中です。家は売るつもりですが、場所もいいのでオーバーローン(住宅ローン残高が不動産価値を上回ること)にはなりませんし、独り身ですから年収が下がってもやっていく自信があります」
40代半ばとなったAさんですが、目の輝きは若さを取り戻したように感じました。
※ご本人の了解を得て公開・脚色しています。
川淵 ゆかり
川淵ゆかり事務所
代表