高市早苗は総裁になれるのか? 女性政治家が走る三つの「出世道」

高市早苗は総裁になれるのか? 女性政治家が走る三つの「出世道」

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  • 更新日:2021/09/15
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出馬表明の会見をする高市氏 (c)朝日新聞社

自民党総裁選に名乗りを上げた高市早苗氏。女性の候補者が出たのは10年以上前の小池百合子氏以来だ。地方議会で高まる女性に期待するという機運が、高市氏の出馬の背景にあるのではと、超党派の「政治分野における女性の参画と活躍を推進する議員連盟」会長の中川正春元文部科学相は指摘する。

【写真】安倍前首相のお気に入りから外れた女性議員は?とはいえ、現状、政党の意識が変わっているとはいいがたい。

候補者の一定割合を女性に割り当てる「クオータ制」推進を訴える稲田朋美元防衛相はこう話す。

「日本の衆院議員のうち女性は約1割。自民党所属の衆院議員に限ると7%ほどとさらに下がります。自民党内には『政治は男性がやるもの』という意識がなお強い」

事実、クオータ制はなかなか実現しない。その理由について、中川氏は嘆息する。

「特に自民党の中に強力に反対する核になるグループがあって、女性議員にもクオータ制反対が少なからずいる。これまで男性と張り合い、自分の力で当選してきたのに、特別枠を設けたら自身の格が下がる、というような不平等感を感じるようです。そういう人たちを説得していくのはなかなか大変なんです」

国際的な議員交流団体「列国議会同盟」が3月にまとめた報告書によれば、日本の国会(衆院)で女性議員が占める割合は、データのある190カ国中、166位。主要7カ国(G7)で最下位だ。地方もいまだ例外ではなく、女性議員の割合は低い。

「女性が政治家として活躍していける環境が十分でない。さらに、女性が『政治家になりたい』と思えるようなロールモデルが見当たらないことも割合が増えない一因だと考えています」(稲田氏)

では、高市氏がそのロールモデルになれるのだろうか。三重大学の岩本美砂子教授(政治学)が解説する。

「高市さんはクオータ制について、女性に特別枠を与えて、げたをはかせるのは逆差別じゃないか、と反対していますし、夫婦別姓にも同性婚にも反対している。根本がアンチフェミニズム。旧来の保守的で男性支配の自民党に対して、操正しい。自身の信条に確信が強い“確信保守”なのです」

ジャーナリストの田原総一朗氏は自民党の特性についてこう指摘する。

「自民党の女性国会議員が偉くなろうとすると、ジェンダーギャップを認めないとなれない。ギャップがあることが大前提で、反対だと言えば基本的に党の役員とか大臣にはなれない。だから、自民党の女性議員には保守的な発言をする人が多くなりがち」

むしろそうした女性議員が、特に安倍前政権下では重用された。

「高市さん始め、山谷えり子議員、有村治子議員、最近は少し変わったが稲田議員ら、自民党のセンターよりも“右側”の女性を重用しました。そうした人物に男女共同参画担当大臣を任せるなど、いびつな構造でした。本来、適しているはずの野田聖子さんは、リベラルでフェミニストであるせいで党内で浮いてしまっている」(岩本教授)

後ろ盾ないとき真価が問われる

岩本教授は著書『百合子とたか子 女性政治リーダーの運命』のなかで、ノルウェーの心理学者トリルド・スカアードの調査をもとに、女性が国のトップになるためには三つの道があると指摘している。

(1)権力の座にある家族から世襲する「家族代替型」

(2)政党を通じて権力の地位に就く「政党インサイダー型」

(3)非政府組織や草の根の職業、活動を基礎として権力の地位を手に入れる「アウトサイダー型」

現役の女性議員で言えば、(1)は野田氏や小渕優子氏ら、小池氏は(3)に該当する。高市氏も(3)だ。

そして、女性トップは三つにカテゴライズできると記す。

[1]男性支配政治の規範や価値に合致し、男性と同じように振る舞う。女性の問題にはあまり関わらない。

[2]女性と男性の利益に妥協点を見いだし、現実問題として解決を図る。「女性」でなく「政治家」であることを強調する。

[3]男性中心の政治に挑み、女性政策を推進しようとする。

ここでは高市氏は[1]に該当するのだろう。このカテゴリーは女性同士の連帯を望めず、ライバルである男性議員とも親しくできないというもろ刃の剣だ。

元自民党国会議員で閣僚経験のある男性は高市氏について、

「私が見ていた限りでは、彼女は党内での友人、仲間というのは少ない。安倍さんが支持したとはいえ、細田派内をまとめるなんてことなどできないよ。彼の本命は岸田氏だろうし。彼女への支持は党内全体でも20~30%いけばいいくらいだろう」

と話す。「高市首相」が実現する可能性について聞くと、

「ゼロでしょ。まず本当に総裁になろうとしたら、何年もかけて準備していくもの。結局はそうやって、いわゆる党内基盤を固めて、支持をとりつけていかないと難しい」と語った。

つまり、高市氏はまだスタートラインに立っただけで、真価が問われるのはここからという見方だ。高市氏は憧れの人物、目標とする政治家として、マーガレット・サッチャー元英首相を挙げているが、「彼女のような真の権力者にはなれないだろう」と岩本教授は手厳しい。

「サッチャーもフェミニストではないが、権力者だった。高市さんは安倍さんに引っ張ってもらうことが前提という時点で決定的に違います。仮に安倍さんが失脚して後ろ盾がなくなったときに化けられるのかどうか。派閥の領袖(りょうしゅう)でもない高市さんは、実力者の傀儡(かいらい)になる可能性が高く、権力を握るものとしては危うい」

真の意味での女性首相誕生までの道のりは長いのか、どうか。(本誌・秦正理、池田正史)

※週刊朝日  2021年9月24日号より抜粋

秦正理,池田正史

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