「仕事を辞めたい」と思う人が持つべき7つの視点

「仕事を辞めたい」と思う人が持つべき7つの視点

  • 東洋経済オンライン
  • 更新日:2023/05/26
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仕事を辞めたいと思ったとき、立ち止まって考えてほしいことがあります(写真:Fast&Slow/PIXTA)

「最近仕事がまわらなくてつらい」「悲しくもないのに涙が止まらない」「なぜかずっと不安が消えない」。こういった悩みのほとんどは、実は「疲労」から始まっています。だからこそ生きづらさを感じたときに必要なのは、「心を強くする方法」でも「自己肯定感を上げる方法」でもなく、とにかく「何もしない」こと、つまり休むことだと心理カウンセラーでNPO法人メンタルレスキュー協会理事長の下園壮太氏は言います。

ただ、忙しい現代人にとって休むのはとてもハードルの高いことです。本記事では、下園氏の新刊『全部うまくいかないのはわたしが頑張りすぎるから』より一部抜粋・編集のうえ、心や身体の不調を感じたらどうしたらよいのか、詳しく解説していきます。

上司のせいで仕事が嫌になる

Cさん:年の離れた上司から毎日のように嫌味を言われもう耐えられそうにありません。今の時代に、「客先に足繁く通って対面で会う回数を増やせ」と、オンラインでの商談を軽視しているんです。「まめに連絡を取りフォローしています」と言うと、「うちの会社は昔から対面でのコミュニケーション重視。これで俺も数十億の商談をまとめてきた」と……。

先生:価値観が合わないのですね。

Cさん:はい。今の仕事は好きなのですが……。体育会系で昔ながらの泥臭い営業しかできない、ITに疎い上司の下では、私は成長できない気がしています。「今度の異動でどこかに行ってくれないだろうか」と期待していましたが、それも叶わず。このまま毎日否定され、嫌味を言われながら働くのかと思うとつらすぎます。休みたい気持ちはあるんですが、そうすると上司にさらに嫌味を言われそうで……。

先生:なるほど、わかりました。先ほど体調や睡眠には大きな問題はないとおっしゃいましたよね。それなら今回の悩みですが、本当に上司のことだけが問題なのか、一度試しに俯瞰して見てみましょうか。

「もう耐えられない!」「つらい!」という気持ちにぶつかったとき、何はさておき休むのが効果的なのはお伝えしてきた通り。

しかし、いきなり休むという選択ができない人の場合、まずは一度状況を俯瞰してみましょう。ただこの俯瞰の作業ができるのは、1段階の元気なときだけです。Cさんはまだ基本的に1段階にあり、一時的に2段階に落ちているだけのようです。

その状態であれば、一人でもできる「7つの視点」で物事を客観的に見直す対処法を試してみるといいでしょう。

思考の偏りの逆方向から物を見てみる

7つの視点は以下の通りです。

①自分視点:なぜ自分は納得がいかないのか、なぜ自分は怒ったのか、自分は何がつらいのか
②相手視点:相手はなぜそんなことを言ったのか、相手はなぜそんなことをしたのか
③第三者視点:同僚、友人、家族など周囲の人にはどう見えたか
④時間視点:この問題は、過去、現在、未来とどうかかわっているか
⑤宇宙視点:宇宙人から見たら、神様から見たら、どう見えるか
⑥感謝視点:この問題や出来事に感謝できるところはないか
⑦ユーモア視点:ユーモアで笑いに変えられるところはないか

疲労がたまり、一時的にでも2段階に陥ると、イライラや悲しみなど感情があふれ、どうしても偏った思考に陥ってしまいます。7つの視点は、あえて、思考の偏りの逆方向から物を見てみるための視点なのです。

あらゆる視点を持つことが大切

先生:ではまず、「自分」という視点で考えてみましょう。今回、Cさんは具体的にどんなところが嫌なのでしょうか。何がつらいのでしょうか?

Cさん:もちろん上司の態度が一番です。でも自分の気持ちをよく感じてみたら……。実は同期が先に役職をもらっているのですが、そのわりに働いていなくて結構ストレスなんです。それも全部上司のせいにしていたかも。

先生:では、相手視点、上司は何を考えていると思いますか?

Cさん:んー何も考えていないというか、昔ながらの方法しかわからないんでしょうね。それに従わない私が気に入らないんだと思います。

先生:あなたを気に入らない、そんな素振りですか。

Cさん:いやぁ、むしろ上司はやたら私にかまいたがるんです。……気に入らないのは、私のほうですね。

先生:視点が広がっていますね。この調子でほかの角度からも考えてみましょう。

このように、改めて特定の視点から見直してみると、今までとは違う見方に気づくことがあります。

では7つのうち、そのほかの視点からも見てみましょう。

まずは③第三者視点。第三者は誰でもよいですが、例えば同僚の視点。ほかの人たちはどう指導されているでしょうか。同じような態度を取られているのか、もっと厳しいのか、もしくは放置されているのか……それによって上司の本質も見えてきます。

④時間視点では過去と未来を想像してみます。例えば、このまま1カ月、1年、3年経ったらどうなっているでしょう? 1年経てば上司か自分が異動するだろう、自分はそれまで耐えられるのか、それによって今の行動も変わるはずです。

⑤宇宙視点。これは妄想でかまいません。会社の上空にドローンで飛び出し、街の上のほうから眺めてみます。人々が「ありんこ」のように見えます。必要とあれば宇宙まで上っても。すると自分の悩みなんて、とても小さなことのように感じるでしょう。

⑥感謝視点。今回の一連の出来事の中で、どこか感謝できる点はないか考えてみましょう。「まったく異なる価値観を知ることができた」「友人の上司よりはマシだ」など、何でもかまいません。

最後に⑦ユーモア視点。例えば上司が言うことを、『半沢直樹』のどれかのキャラクターに当てはめてみたら少し笑えませんか?

少しずつ「大したことないこと」に変えられる

こうしてさまざまな視点で見ると「人生史上、ものすごく悲惨なこと」を、少しずつ「大したことないこと」に変えられるのです。

繰り返しますが、これはあくまで1段階用の対処法。2段階でやると、逆に相手に腹が立ってくることも多いので注意です。

Iさん:会社を辞めたいんですが、辞めた後のことが不安で。残業も多くて上司も嫌でもう限界なのに、どうしても辞める勇気がなくて……。

先生:辞めるとしたとき、Iさんの一番の不安は?

Iさん:次の就職先がないことです。新卒で入社してまだ2年なんです。内定が出たのも今の会社だけで。経理の仕事をしていますが、経験が浅い私を雇ってくれる会社なんてないです。

先生:そうですか、経理の専門知識を持っているなら転職先は見つかりそうな気もしますが。

Iさん:知らないこともいっぱいで仕事も遅いし、ミスも多くて、向いていない気がします。実は、経理も希望ではなく配属されただけで。

先生:経理ではミスも多いし、上司も苦手。退職も怖い。ほかの部署への異動希望を出してみるのは、どうでしょう?

Iさん:無理です! 与えられた経理という場所でも役立たずなのに、ほかでうまくいくわけがない。会社に迷惑をかけるくらいなら辞めたほうがいいんです。でも辞めるのも不安で……。

0か10よりも折衷案で行動する

疲労がたまって2段階、3段階と落ちてしまうと、極端な選択肢しか浮かばなくなります。Iさんも最初から社内異動の案はなく、「会社を辞めるか、辞めないか」で悩んでいるようです。

こんなときは、0(会社を辞めない)か10(会社を辞める)ではなく「7〜3バランス」で考えるといいでしょう。

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(出所:『全部うまくいかないのはわたしが頑張りすぎるから』)

「会社を辞めない」から「会社を辞める」までの間を10で区切ってみます。例えば3のところには「他部署の同期に話を聞く」、5には「他部署異動を希望する」、7には「転職サイトに登録する」といったふうに各段階の行動を考えてみます。

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転職サイトに登録したところで、それほどデメリットはありませんし、エネルギーもあまり消費しません。その辺りを狙うのがポイントです。すると「意外と自分にもオファーがある」「自分はこの仕事がしたいのかも」など、新しい情報が入ってきます。そうして、辞める、辞めないといった0か10以外の選択肢が考えられるようになるのです。

0か10で「ただ悩んでいる状態」から、とにかく行動することで、前に進んでいる感覚も持つことができます。

(下園 壮太:メンタルレスキュー協会理事長、元・陸上自衛隊衛生学校心理教官)

下園 壮太

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