人生で初めて失恋した男。彼がやってしまった恋愛初心者の大失敗とは?

人生で初めて失恋した男。彼がやってしまった恋愛初心者の大失敗とは?

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  • 更新日:2020/05/18

運命の相手と出会いたい。誰もが思っていることではないだろうか。

では、運命の相手はどこにいるのだろう。

まだ出会っていないだけ、どこかにいるのだ。

そう思い続けてきた曽根進太郎、29歳。恋愛経験はゼロに近い。

彼の人生をかけた、“運命の相手”探しが今、始まる。

◆これまでのあらすじ

出会った瞬間に運命の人だと思った女性から、フラれた進太郎。完全に自分のペースを失った彼は、婚活にもやる気を失うが…?

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2019年4月のある休日。

「く、臭い…!」

キッチンからの異様な臭いを嗅ぎ取った進太郎がガスコンロに急ぐと、そこには無残にも焦げたシチューがフツフツと音を立てていた。

−こんなミス、普段ならしないのに…。

進太郎は、大きくため息をついた。

優美子に振られた衝撃は大きく、今なお引きずっている。気分転換に料理でもと思ったが、煮込んでいる間にぼーっとしてしまい、シチューを焦がしてしまったのだ。

かき混ぜてみると、焦げた部分が浮き出てきてシチュー全体が茶色になった。味も苦くて、食べられそうもない。せっかく夕方から煮込んだというのに最悪だ。

優美子に振られてからというもの、完全に自分らしさを失っている。気づけば、自分の何が悪かったのだろうか、どうにかもう一度彼女にアプローチ出来ないか、そんなことばかり考えている。

カウンセラーの室井には、気を取り直して次のマッチングを頑張りましょうと言われたが、全くそんな気にはなれない。

オファーがいくつか来ているのも知っているが、返信もせずに放置している。

進太郎は、さっきまでチビチビ飲んでいた白ワインを一気に飲み干し、ソファに倒れ込んだ。

自分を見失った進太郎。彼の行動は思わぬ方向へ…?

妄想で言い訳する男

−うわっ、寝ちゃってた…。

進太郎は、ハッと目を覚ました。ワインが回っていたのか、ゴロゴロしているうちに眠ってしまっていたらしい。

ぐぅ…。

お腹が空いた。起き上がった進太郎は、ヨロヨロとキッチンへと向かう。

冷凍庫には、オーブンで焼けばすぐに食べられる冷凍のバゲットがある。本来ならば、シチューと一緒に食べるはずだったが、シチューを失敗してしまった今、とりあえずバゲットだけ食べることにした。

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焼き上がったバゲットをちぎって、おつまみ用に買ってあった生ハムやオリーブと一緒に食べる。

シーンとした部屋に物寂しさを感じた進太郎は、パソコンをつけて適当な動画を見ることに。

何を見ようかなと動画を探していたところで、1つの動画に釘付けになった。

それは、ウルウルの瞳で尻尾を振る、愛嬌たっぷりのゴールデンレトリバー“モモちゃん”の動画だった。

飼い主に怒られて拗ねたり、散歩だと分かってはしゃぐ、モモちゃん。アップされている動画を次から次へと見ていく進太郎。

気づけば、「んー、可愛いぃ」などと、1人動画に向かって声を発していた。

2時間ほど動画を見た進太郎は、そろそろ寝る準備に取り掛かろうと、お風呂に入ることに。

ラベンダーの香りの入浴剤を入れたぬるいお湯に肩までしっかりと浸かると、副交感神経が優位になり、ストレスや緊張から一気に解き放たれた。

−やっぱり、自分のペースと価値観は大事にしたいよな。

進太郎は、優美子について妄想を繰り広げ始めた。

仮に付き合うことになったとしても、超わがままで振り回されていたかもしれないし、ブランド好きで給料を搾取されたかもしれない。

実は束縛するタイプで、常にGPSで位置を監視されたり、飲み会は誰と飲んでいるか、証拠写真を送らないといけなかったかもしれない。

進太郎は、完全なる妄想で、優美子と付き合わなくて良かった理由を探す。

「俺を振るなんて、見る目がなかったんだ!」

最後は、負け惜しみを堂々と声に出してみた。浴室ではエコーがきいていて声がよく響く。心の底からスッキリした。

“ピコーン”

翌日、昼食を取っていると、新着メッセージを知らせる音が鳴った。

画面を見た進太郎は、思わず「やべっ」と声に出してしまった。

“お世話になっております。最近の活動状況はいかがでしょうか?

フィードバックもございますので、一度お電話出来たら幸いです”

カウンセラーの室井からだった。

−フィードバック…!?優美子さんからの…?

とはいえ、フラれた相手からのフィードバックなんて聞きたくもない。

そう思った進太郎は、強気にスマホを裏返して無視を決め込み、食べかけだったハンバーガーを力強く頬張る。

室井からのメールを忘れるように無心でハンバーガーにかじり付くが、やはり落ち着かない。

意味もなくスマホの画面を戻しては裏返す。ソワソワと、挙動不審な行動を繰り返すこと15分。

無駄な15分を過ごした進太郎は、結局フィードバックが気になってしまって電話で相談したい旨を返信したのだった。

カウンセラー・室井からの強烈なダメ出し。進太郎は…?

ダメ出し

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その夜。

「お世話になっております。室井です」

電話に出た進太郎は、彼女の声が聞こえた瞬間に激しい後悔に襲われた。怖いもの見たさで応じてしまったが、やはり、フィードバックを聞くのは怖い。

優美子にはフラれている。そのことから考えれば、フィードバックはネガティブなものだろう。

これまで優等生として生きてきた進太郎は、実はちょっと打たれ弱い。プライドが高いことも影響しているのだが、自分にネガティブなことを言われると、必要以上に“否定されている”と感じてしまうのだ。

だが、しかし。運命の相手だと思った優美子からフラれた今、自分に何が足らなかったのか、知りたいという気持ちもある。

進太郎は、心を決めて室井に応答した。

「ご連絡ありがとうございます。では、フィードバックをお願いします」

「では早速。花房さんからのフィードバックですが…」

緊張で心臓が飛び出そうになるのを必死に堪えて、次の言葉を待つ。

「曽根さんとは、とても楽しい時間を過ごすことが出来ましたと、仰っていました」

「へっ…?」

予想外な言葉に、思わず間抜けな声を出してしまった。だが、フラれているのだからこれだけで終わるはずがない。進太郎は改めて聞く耳を集中させる。

「花房さんのお仕事、覚えていらっしゃいますか」

「確か、日本橋にある専門商社で秘書をされていましたよね」

悔しいが、優美子の話したことは必死で頭に叩き込んだから覚えている。進太郎が答えると、室井が「そうです」と言ってから続けた。

「その専門商社は、花房さんのお父様が営んでおり、彼女は、その会社を継ぐ予定だそうです」

これには面食らった。まさか、彼女が次期社長とは。こんなことを言っては悪いが、深窓のお嬢様が腰掛け程度に働いているものだと思っていた。

進太郎が言葉を失っていると、室井はズバリ進太郎の胸の内を指摘した。

「花房さんのこと、腰掛OLくらいに思ってませんでした?

曽根さんの発言から、そういう風に受け止められていると感じたと。曽根さんからはたくさんの質問がありましたが、仕事や今後については一切質問がなくて残念だったそうです」

「そ、それは…」

ズバリと言い当てられ、モジモジしてしまう。そんな進太郎に、室井はトドメを刺すように言った。

「曽根さん、勝手な思い込みで相手を判断するのはやめてください。まずは、相手を知る努力をしてください。

仕事と同じです。ファクトベースを心がけてください!」

普段、コンサルタントとして働いている進太郎は、顔から火が出るほど恥ずかしかった。

仕事では、「ファクト、ファクト」と連発しているのに、いざ自分の恋愛になると、突然思い込みと偏見で判断しているなんて。

「す、すいません…。分かりました」

進太郎は、電話越しの室井に何度も頭を下げた。

▶︎Next:5月19日 火曜更新予定
室井からのアドバイスをもとにデートに臨む進太郎。ついに変化が訪れる…?

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