
アニメ『ちびまる子ちゃん』2023年1月15日放送の「お年玉付き年賀はがき」の回で描かれる、まる子と友蔵(画像:日本アニメーション)
引くに引けなくなった友蔵じいちゃん さらに追い詰められる?
ありふれた家族のちょっとおかしな日常を描く『ちびまる子ちゃん』は、長く親しまれている作品だけに、実は知らない話も多いのではないでしょうか。今回はディープなファンに愛されている、原作マンガで楽しめる傑作エピソードを紹介します。
【画像】アニメでまる子と「共演」した、お笑い芸人たち(8枚)
最初に紹介したいのは、『まる子、お寿司やさんに行く』です。ある日、まる子の誕生日が近いことを思い出した祖父の友蔵。ちょうど年金の8万円が手に入ったため、まる子とふたりでおもちゃ屋さんへ向かいました。
欲しいものを選ぶように言う友蔵でしたが、変に大人びているまる子は友蔵の懐具合を気づかって高いおもちゃを選びません。「なぜもっと本気で欲しいものを言わんのじゃ」と涙を見せる友蔵に戸惑うまる子でしたが、彼の顔を見て覚悟を決めます。
「全力を出すよ。いいんだね?」と話すまる子。「おうともさ。年寄りの年金の底力をとくと見せてやるっ」と意気込んだ友蔵にまる子がお願いしたのは、「ローラースルーゴーゴー」でした。1975年当時には爆発的な人気を誇った、キックボードの元祖ともいうべき乗り物です。当時にしてはかなり高い買い物でしたが、友蔵は「わしも男だ」と買ってあげることに。
勢いがついた友蔵は、続けて「まる子は何が食べたい? とんかつでもうなぎでもなんでもいいぞ」と男らしさをアピール。そこでまる子が選んだのは、カウンターで食べる高級な寿司屋でした。さすがの友蔵も内心では動揺しますが、こうなったら後には引けません。店に入ってから安めの光モノを勧めますが、まる子は「キライなの」と遠慮なくウニを注文してしまいます。
友蔵がハラハラしながら食事を続けていると、花輪くんが来店。お金持ちの花輪くんは提供される皿も華やかで、なかにはキャビアが入っている豪華なネタが勢ぞろいです。驚く友蔵でしたが、「まる子も花輪くんとおんなじやつが食べたい」と、まる子から追撃が。
友蔵は腹を決めて大将に「同じものをくれ」とキメ顔で注文したものの、さらにキャビアをおかわりしたがるまる子に「わしがバカだった…」と後悔。家族へのお土産まで要求するまる子のおかげで、告げられたお会計は7万5000円。「ローラースルーゴーゴー」と合わせると、予算オーバーの金額です。
真っ青になった友蔵は、「ローラースルーゴーゴーは今回なかったことにしてくれ」とおもちゃ屋さんへ猛ダッシュ。ナレーションの「ああ友蔵よ いっそそれに乗って家まで金を取りに行ったらどうだ?」というツッコミが非常にシュールです。

映画『ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌』通常版Blu-ray(ポニーキャニオン)
笑いを必至でこらえる姉に、とどめを刺したまる子の一筆(?)
続いて紹介するエピソードは「かきぞめの宿題」です。新学期目前なのに、まだかきぞめの宿題が終わっていなかったまる子。お姉ちゃんに手伝ってもらいながら「おとし玉」という文字を書くことになりましたが、まる子が書きあげたのは「玉」の字の点を書き忘れた「おとし王」でした。
宿題を手伝っていたお姉ちゃんはその文字を見て、ものを落とす王様「おとし王」が頭の中に出現。「笑っちゃダメ… ダメダメ」とこらえるお姉ちゃんに、まる子がダメ押しします。ちょうど2滴だけ筆先から垂れた墨汁のせいで、「おとし王」が「おどし王」に進化。その瞬間、お姉ちゃんの頭の中で「ガオ?」とうなる王様の姿が浮かび上がってきます。
ついにたえきれず笑い転げるお姉ちゃんを尻目に、習字のお手本を探しはじめるまる子。探してきたのは、「お年玉」と書いてあるポチ袋です。なんとか完成したまる子の書き初めでしたが、クラスメイトから「どうして『おとーむ』なんて書いちゃったんだい」と笑われてしまいます。
それもそのはず、まる子がお手本にしたポチ袋に書かれていたのは崩し文字の草書体。見えている通りに「おとーむ」と書いたまる子は、笑われてからその間違いに気づくのでした。
ちなみにこの話のラストは、「花輪くんが銀賞を受賞した」というナレーションでしめくくられます。ただし字が汚いというコンプレックスを抱える花輪くんが「使用人の坪井さんに代筆を頼んでいた」という衝撃の事実を残して。
国民的作品であり、毎週日曜日夕方になるとテレビで出会える『ちびまる子ちゃん』ですが、原作マンガを読んでみると、アニメとはひと味違う味わい深いエピソードに出会えるかも知れませんね。
(LUIS FIELD)