異形の大国・中国「一帯一路」の現実に迫る NHKスペシャル「広がる“中国化”一帯一路の光と影」

異形の大国・中国「一帯一路」の現実に迫る NHKスペシャル「広がる“中国化”一帯一路の光と影」

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  • 更新日:2021/11/25
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NHKスペシャル「広がる“中国化”一帯一路の光と影」(11月21日午後9時50分放送)は、21世紀にあらゆる分野で、世界のトップに立つ「中国の夢」を実現するための最大の戦略である「一帯一路」について、カンボジアを中心としながらも、タイ、マレーシアなどの東南アジア諸国連合(ASEAN)、そして欧州連合(EU)諸国にもカメラを入れた、ドキュメンタリーの傑作である。

(Oleg Elkov/gettyimages)

「一帯一路」は、中国と欧州を陸と海で結んで、巨大な経済圏をつくる構想である。その存在は知っていても、そのために中国が巨額の投資をしている国々でいったい何が起きているのか。ドキュメンタリーは「異形の大国は目的に向かって突き進もうとしている」現実を観るものに突きつける。

99年借款で軍用機も発着できる空港建設

カンボジアの南部の海岸沿いで、中国企業による巨大なリゾート施設づくりが進んでいる。その地名を頭にとった「ダラサコー・ロングベイ・プロジェクト」である。

中国企業は、カンボジア政府から延長90㌔メートルに及ぶ海岸線を99年間借り受ける契約を結んでいる。「99年」という年月は、帝国主義時代に列強が、植民地化のために押しつけた年数である。香港とマカオをみるまでもない。カンボジアの海岸線の20%にも及ぶ。国防の生命線である、海岸線が中国によって押さえられたのである。

「一帯一路」のなかでは、最大級のリゾートになるこのプロジェクトは、中国人の富裕層をターゲットにして、年内のオープンを目指し、年間1200万人の観光客を見込む。

このプロジェクトについて、米国が疑惑の念を抱いて警戒しているのは、リゾート客を受け入れるために建設中の空港にある。首都・プノンペン空港の滑走路をはるかにしのぐ、3200㍍もある。民間機ばかりではなく、軍用機の離発着も可能な長さに相当する。

駐カンボジアの米国大使である、パトリック・マーフィー氏は、中国が国内法で制定した「国防動員法」についてまずふれた。この法律は、有事に際して軍が民間の施設や物資を利用できるという内容である。そのうえで、同氏は次のような危機感を表明する。

「(建設が進んでいる滑走路は)軍民融合つまり、軍事活動の疑念を持っている」と。

米国政府は、このリゾート開発を行っている中国企業「正恒集団」に対して、資産凍結などの経済制裁をしている。

「正恒集団」の代表は、反論する。

「カンボジアは独立国であり、第三国は基地を持てない」

しかし、カンボジアと中国は5年前から「共同軍事訓練」をしているのも事実なのである。

債務が台湾関係に影響も?

カメラは、マレー半島に飛ぶ。ここでは、パナマ運河をしのぐ130㌔メートルの新運河を建設する計画が進んでいる。マレー半島を貫いて、マラッカ海峡を経由しなくとも、インド洋に出ることが可能になる。政府との交渉や資金集めに奔走しているのは、中国政府と利害が一致している華僑である。

世界開発機構の上級研究員である、スコット・モリス氏によると、中国からの融資を受けている23カ国中、モンゴルなど8カ国が債務の支払いができない状況に追い込まれているという。モリス氏が問題視しているのは、こうした借款契約のひとつの条項である。「なんらかの違反があれば、一括返還しなければならない」という。モリス氏は次のように指摘する。

「プロジェクトと関係がなくとも、例えば、借り入れ国が台湾との関係を改善すれば、この条項が発動される可能性がある。政治的な内容が契約に盛り込まれているのである」と。

中国からの借り入れを支払えない状況にある、バルカン半島の先端に位置する、モンテネグロ。人口60万人の国が、日本円で1000億円相当を借り入れた。アバゾビッチ副首相は、次のように語る。

「中国からの借款は、前政権が決めたことです。いったい、どうしてこのような借り入れを決めたのか。金額は、我が国の国内総生産(GDP)の3割にも相当します。日本が、GDPの3割を外国から借りるでしょうか?」

借り入れたカネによって、2年前に高速道路が完成する予定だった。難工事などが重なって、いまだに開通していない。しかし、借款の返済は7月から始まっている。

「バナナ界のファーウェイ」習近平思想学ぶ

舞台は、カンボジアに戻る。中国の「食糧基地」化を狙って、進出した中国企業は、バナナの栽培農場300㌶を経営している。この土地も「99年間」の借地である。生産量は、年間2万㌧。3年後には、栽培面積を2倍に、カンボジア人の雇用も1000人増やす予定だという。

この企業の幹部で、カンボジア人労働者の教育・訓練を担当している人物は毎日、中国政府が配信している「習近平」思想をスマートフォンで学んでいる。

従業員に対して「我々は、バナナ業界のファーウェイになろう」と、檄を飛ばす。

取材班に対して、次のように語る。

「従業員の思想教育には、共産主義の教育が役立つ」

カメラは、この企業が建設した従業員宿舎に向かう。簡素な宿舎のなかに暮らす従業員の声を拾いながら。

「一番欲しいのは、トイレです」「もっと便利にして欲しい」

従業員の要望に対して、会社側の対応は遅れているという。

田部康喜

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