「日本の水際対策、3泊4日のホテル強制隔離生活」下川裕治【コロナ禍を旅する〈10〉】タイ(10)

「日本の水際対策、3泊4日のホテル強制隔離生活」下川裕治【コロナ禍を旅する〈10〉】タイ(10)

  • FutabaNetPortal:ふねぽ
  • 更新日:2021/10/19
No image

隔離ホテルでの食事

文と写真・下川裕治

関連:「コロナ禍を旅する」を最初から読む

■日本の水際対策で、空港近くのホテルに強制隔離

タイバンコクでの2週間の隔離。そしてバタバタとバンコクで仕事をすませて帰国した。

しかし日本には日本の水際対策がある。コロナ禍前のように、空港から自宅に帰るようなわけにはいかない。

帰国したとき、タイの新規感染者は日本よりはるかに少なかった。しかし日本は空港周辺ホテルでの4日間の強制隔離を課していた。

日本の隔離には2種類あった。自宅など自分で申請した場所で隔離する自主隔離。そして用意されたホテルなどで隔離を強いる強制隔離だった。タイからの入国の場合、隔離期間は14日間。その最初の3泊4日は強制隔離になっていた。

強制隔離の最終日にPCR検査があり、陰性なら自主隔離先に移動することができた。

No image

成田空港に到着。進むと、椅子が並べられた通路にでる。ここでまず説明をうける

No image

空港内でPCR検査。唾液をこうしてとって渡す。一応、半個室のようなスペースが用意されている

成田空港前で待っていると、検疫で運行するバスがやってきた。数人が乗り込んだ。車内は椅子やシート、荷だなまでビールシートで覆われ、かなり物々しい。行く先は成田空港に近い東横イン。この強制隔離は無料。すべての食事もついている。しかしホテルを選ぶことはできない。

ホテルのロビーには、テーブルが置かれ、そこでチェックインを行う。といっても、全員がこのホテルに一定期間宿泊するわけだから、ホテルに泊まるということについての大変さはあまりない。

むしろ新型コロナウイルス対応に細々としたことが多い。検温をしてそれを毎日報告する。3日目にPCR検査がある。……そういった説明である。ホテルの部屋から一歩も出ることができないことはバンコクの隔離ホテルと同じだ。

そういった対応をしていくためにいくつかのアプリを入れなくてはならない。僕のスマホには、接触確認アプリであるCOCOAをインストールすることができなかった。どうも僕のスマホのバージョンが低いらしい。

僕の担当は中国系の女性だった。日本語はかなりうまいが、COCOAの件は判断できないらしい。その場でコールセンターに電話をかけて、日本人の担当者と話すことになる。

COCOAは強制隔離中は必要ないアプリだった。むしろ自主隔離以降だろうか。自宅に帰れば、家族の誰かがCOCOAをインストールできるスマホをもっているかと聞かれた。すでに入れているはずというとOKになった。

いまはそういうわけにはいかないらしいが、この時点ではまだ甘さがあった。

No image

東横インのチェックイン風景。説明してくれるのは、ホテルではなく、厚生労働省のスタッフ

■再び隔離ホテルでの生活が始まる

テーブルの上に置かれていた弁当を受けとり、部屋に入った。これから3泊4日はここから出ることは難しい。これがはじめての隔離ホテル体験なら気分も落ち込むかもしれないが、タイで2週間の強制隔離を経験していた。それを思えば、3泊4日などどうってことはなかった。

しかし考えてみれば、旅というよりホテルの部屋に隔離されている日数のほうがはるかに長い。隔離旅というか、隔離が旅そのものだった。こんなに移動のない旅をしたのは、たぶんはじめてだろう。

荷物を部屋の隅に置き、ふーッと息をつく。部屋をぐるりと眺める。

「やはり狭いな」

東横インはツインの部屋だった。日本のビジネスホテルを考えれば、特別に狭いわけではない。しかしタイのホテルに比べると、部屋の広さは半分ほどのように思う。

これではラジオ体操もできない。

食事はビニール袋に入れられ、ドアノブに吊るされる。タイのホテルでは、スタッフがドアをノックする音でわかったが、東横インでは館内放送が流れた。

こんな館内放送が響き、夕食が届く。正面の明るいところが成田空港。発着便はまだまだ少ない

毎回、弁当だった。コンビニ弁当に比べると豪華なものだった。まともに買えば800円から1000円ぐらいはとる内容かもしれない。

なぜかアップルジュースやブドウジュースにお茶のパックがついた。

No image

これが毎日のお弁当。ボリュームはあるが、やはり弁当。温かい食事がほしくなる。部屋に電子レンジはなかった

はじめこそ、3週間ぶりの日本食に箸が進んだが、やはり弁当。1日3食が弁当となると、いくらおかずが違っても飽きがくる。

食事の内容からいえば、日本のほうがいいのかもしれない。しかしタイは、ホテルでつくったものが、温かいまま出された。ときに、「これだけ?」というときもあったが、それもご愛敬という気がしてくる。

やはり同じ隔離でも、タイと日本は違う。

こんなことに詳しくなっても仕方のないことなのだが。

No image

毎日、体温をはかって送信する。館内放送で案内がある。忘れると、スタッフから電話がかかってくる

日本入国時にPCR検査があり、強制隔離ホテルをチェックアウトする日に、さらにもう1回、PCR検査。2回陰性が続き、おそらく僕は感染していない気がした。

しかしさらに10日、自宅で隔離。人によっては大変だというが、これだけのチェックがあれば、ウイルスを日本にもち込む可能性はかなり低くなる。精神的には楽になせてくれる水際対策に映る。

「コロナ禍を旅する」を最初から読む

下川 裕治

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加