酷暑とも闘うJFL、炎天下のクリアソン新宿vs東京武蔵野戦で見えた気候変動ならぬチーム変動

酷暑とも闘うJFL、炎天下のクリアソン新宿vs東京武蔵野戦で見えた気候変動ならぬチーム変動

  • 日刊スポーツ(サッカー)
  • 更新日:2022/08/06
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JFL第18節クリアソン新宿対東京武蔵野ユナイテッドFC ハットトリックを達成した東京武蔵野ユナイテッドFCのMF川戸大樹(右)(撮影・佐藤成)

太陽の季節、真っ盛り-。今年は連日のように酷暑のニュースが届いてくる。史上初めて6月に関東甲信が梅雨明けしたように、気候変動の波は止まらない。

■気温35・7度「厳重注意」

暑さが厳しい7月31日、炎天下で日本フットボールリーグ(JFL)第18節・クリアソン新宿-東京武蔵野ユナイテッドFC戦を取材した。午後4時キックオフとはいえ、東京・調布市のAGFフィールドの気温は35度を超えている。燦々(さんさん)と降り注ぐ日差しを浴びながらのスタンド観戦はきつかった。むろん、やっている選手たちの方がもっと大変だ。大粒の汗を流しながら、ピッチを縦横無尽に駆け回るのだから。

試合は東京武蔵野が4-2でクリアソン新宿に勝った。合計6点が飛び交う派手な展開となった。一瞬を突くゴールの応酬と表現すれば聞こえはいいが、実際は守る側が集中力を欠き、足が止まる場面が散見された。暑さの影響は多分にあった。

公式記録に記された気温は35・7度。暑さ指数「WBGT」はハーフタイム時に29・1度(28~31度は「厳重警戒」、31度以上で「危険」)だった。

試合後、チーム関係者からこんな声が聞かれた。「夜しか練習していないチームには夏場のデーゲームはきついですよ。夜やっているのは武蔵野、クリアソン、ホンダロックの3チーム。みんな夏場になってから勝てていない」。

JFL各チームの練習時間を調べてみると、確かにほかのチームは基本的に朝もしくは午後に練習を行っている。

実際に直近の戦績を見れば、一目瞭然だった。東京武蔵野の勝利は6月18日の第12節以来。梅雨明けに歩調を合わせるかのように、6月25日の第13節以降は●●△●●(1分け4敗)と白星がなかった。この日のクリアソン新宿戦でようやく○が付いた。

また、クリアソン新宿も6月25日以降は△△●●●●(2分け4敗)、ホンダロックSCも●●※●●※(4敗、※=中止)という結果だった。

■首位から一気に転落

梅雨明け前、第12節(6月18、19日)終了時の暫定順位(未消化試合あり、数字は勝ち点)はこうだ。

1位東京武蔵野23

2位マルヤス岡崎20

3位FC大阪20

4位奈良20

5位V大分20

6位三重19

7位ホンダ19

8位ホンダロック18

9位青森18

10位鈴鹿16

11位高知14

12位びわこ滋賀14

13位枚方12

14位ソニー仙台10

15位新宿10

16位しまね8

前半戦は好調だった東京武蔵野は首位にいた。ホンダロックも8位と中位。序盤にコロナ禍で出遅れた新宿も、白星が付くようになり最下位から脱出していた。

それが第18節終了時、現在の暫定順位(未消化試合あり)はこうなっている。

1位FC大阪33

2位ホンダ32

3位奈良クラブ31

4位三重28

5位青森27

6位東京武蔵野27

7位マルヤス岡崎27

8位V大分25

9位高知24

10位鈴鹿24

11位枚方19

12位ソニー仙台19

13位しまね19

14位ホンダロック18

15位びわこ滋賀15

16位新宿12

第13節(6月25日)以降の1カ月で「夜練習組」3チームは、大きく順位を落とした。

JFLはシーズンを通してデーゲームが大半だ。7月以降、ここまでの35試合でナイター開催は2試合(7月23日・ホンダ-奈良=都田18時、同24日・鈴鹿-マルヤス岡崎=三交鈴鹿18時)だけ。

東京武蔵野Uとクリアソン新宿が7月にホーム開催した東京・西が丘の計4試合は、照明工事が入ったため、当初の予定を変更してデーゲームとなっている。この2チームにとっては不運というしかない。

■相手も同じ、理由にできない

東京武蔵野の依田博樹監督にたずねると「ナイター開催のための西が丘でしたけど、それができなくて苦しかった。でも、やっていることは相手も一緒だし、それを理由にはできない」。また、夜練習についても「20年以上ずっと(JFL)でやっていることなので、このシーズンに限ったことではありませんから」と言い訳しなかった。

もっと夏場のナイター開催ができないものだろうか? Jリーグならナイター開催が当たり前だが。JFLに問い合わせると、「照明がない競技場が多く、ナイター開催ができない試合もあります」。さらに踏み込んでこう説明してくれた。

JFLは夏季対策として内規を設けている。

・照明のないスタジアムではキックオフは遅くとも15時

・200~300ルクスの照明があるスタジアムでは16時キックオフ可

・500ルクス以上の照明があるスタジアムでは18時以降のキックオフ可

つまり、7月や9月に15時キックオフが多いのは会場の照明設備によるところが大きい。加えて「夏は学生の大会が多く、競技場の確保が困難であることも挙げられます」。

また、仕事を掛け持ちする社会人選手ゆえ、翌日にかかればスケジュールの問題がある。さらに試合の後泊が必要となれば経費の負担も大きくなってくる。一筋縄ではいかない諸事情が絡み合うからこそのデーゲームのようだ。

JFLは現在、8月の酷暑を避けるように、約1カ月間に及ぶ中断期(第19節=8月27、28日に再開)に突入している(※未消化試合は中断中にも実施)。避暑という意味合いもあるが、他方で、企業チームであれば社員に一定時期に休みを取らせるなど厚労省が推し進める「働き方改革」の面や、国体など選抜チームに選手を派遣する部外活動も出てくる。

■きつい中でどれだけ走れるか

プロリーグとは大きく異なる社会人サッカーのJFL。Jリーグからみれば環境面は恵まれたものではない。それでも仕事との両立を掲げる男たちには矜持(きょうじ)がある。横河電機の営業マンで、30歳になる今も誰よりも走る東京武蔵野FW石原幸治が言う。

「暑さに対し、夜練習をしているので確かに難しい部分はある。でもやっている以上はやり切るしかない。きつい中でどれだけ走りきれるか。こうやって仕事とサッカーを続けられているのは幸せなことです。今も本気になってサッカーに取り組めるんですから」

千葉・市船橋高、明大を経て入社。スピードを生かしたプレーで相手を翻弄(ほんろう)する看板選手だ。かつてJリーグからも声がかかるほどの選手だったが、仕事との両立を選んだ。その選択に悔いはない。

混戦模様の今季リーグ。中断明けも厳しい暑さが予想されるが、そこを走りきり、どれだけ勝ち点を積み上げられるかが優勝への大事なポイントとなりそうだ。日焼けした精悍(せいかん)な男たちがプライドをかけて戦う。夏の太陽にも負けない、熱きプレーに注目していきたい。【佐藤隆志】

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