「差別や分断って実はこんなにバカバカしいんだ」GACKT×二階堂ふみ×杏が『翔んで埼玉』続編で感じた“いまの時代に必要な映画”とは

「差別や分断って実はこんなにバカバカしいんだ」GACKT×二階堂ふみ×杏が『翔んで埼玉』続編で感じた“いまの時代に必要な映画”とは

  • MOVIE WALKER PRESS
  • 更新日:2023/11/21
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『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』のGACKT、二階堂ふみ、杏にインタビュー! 撮影/興梠真穂

鬼才、魔夜峰央が1982年に発表した原作コミックを実写化し、当初の予想をはるかに超える大ヒットを記録した映画『翔んで埼玉』(19)から4年。続編を待望するファンの声に応え、武内英樹監督をはじめとする前作のスタッフとキャストが再集結して作り上げた禁断の第Ⅱ章『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』が11月23日(木・祝)より、いよいよ公開!

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本作は、東京都知事の息子で名門私立高校・白鵬堂学院生徒会長の壇ノ浦百美が、埼玉解放戦線を率いる帰国子女の転校生、麻実麗と出会い、奮闘の末に東京への通行手形制度を撤廃させた前作の後日談。埼玉県人の悲願である、「埼玉に海を作る」ため、仲間と和歌山の白浜に向かった麗が、全国を巻き込む東西対決に身を投じていく。

麻実麗役のGACKT、壇ノ浦百美役の二階堂ふみという二本柱の続投に加え、今回は滋賀解放戦線のリーダーで“滋賀のオスカル”こと桔梗魁役で杏が参戦。物語、スケール、あらゆる面でパワーアップした本作に挑んだ3人が、撮影中のエピソードや本作への思いを語り合ってくれた。

「これ以上はやめましょうとお断りしました。でも、しつこかったんです(笑)」(GACKT)

――続編の話を知ったのは、いつごろだったのでしょうか?

二階堂「2020年1月の日本アカデミー賞発表時期(『翔んで埼玉』は第43回日本アカデミー賞で作品賞をはじめ、最多12部門で優秀賞を受賞)には、監督やプロデューサー、東映さんが『ぜひ続編を!』とおっしゃっていましたよね」

GACKT「実際に2作目を作るという話でオファーが来た時は『これ以上はやめましょうよ』って、お断りしました。でも、しつこかったんです(笑)」

――杏さんがオファーの話を聞いた時の気持ちはいかがでしたか?

杏「武内監督とは以前、月9のドラマ『デート~恋とはどんなものかしら~』でご一緒しており、また一緒にやらせていただきたいなぁと思っていたところだったので、うれしかったです。でも、まさか『翔んで埼玉』とは想像していなくて、すごくびっくりしました。今回演じた桔梗は滋賀解放戦線のリーダーという役どころですが、私は滋賀県出身ではなく、あまり関わりがなかったので、私でいいのかな、大丈夫かな?という思いはありましたね」

――杏さんは『キングダム 運命の炎』にも出演されていますが、すでに世界観が構築されている続編作品に参加する時は、どのようにアプローチされるのでしょうか?

杏「原作のビジュアルがある作品だったら、まずそれを最大限再現したいなと思います。今回みたいに、原作にはないキャラクターだった場合は、設定をちゃんと意識して、その作品の世界にいかになじむかということをすごく心がけています。『翔んで埼玉』も『キングダム』も前作は普通にお客さんとして観ていたので、プレッシャーはもちろんあるんですけど、『この作品に出られるんだ!』という喜びが大きかったですね。今回も最初にGACKTさん演じる麻実麗に会った時、心の中で『あ、麗だ!』って。

「あの顔のくずれ方はなにかで加工したのかな?と思ったくらい」(杏)

――GACKTさんは本作で再び二階堂さんと共演、杏さんとは初共演になりますね。

GACKT「撮影時期は前半に杏ちゃん、後半にふみちゃんという感じでした。ボクは病気から復帰してすぐの撮影で、声の調子が100%戻っていない状態からスタートしたので、前半では、自分はどれくらいできているのかなと不安でした。杏ちゃんとは初めての共演だったこともあって、どんなふうに一緒にやったらいいのかわからなくて。でも後半になるにつれて、調子も戻り撮影にも慣れてきて。ふみちゃんが来た時には安心感もありました。やっと会えたなっていう(笑)」

二階堂「GACKTさんは相変わらず麗しかったです」

GACKT「途中、けっこう顔がくずれてますけど」

――大阪府知事・嘉祥寺晃(片岡愛之助)の陰謀による、特殊な粉を使ったお好み焼きやたこ焼きなどを食べたことで、麗が徐々に大阪人化してしまうシーンですね。

杏「ほんとすごかった。あの顔のくずれ方は…なにかで加工したのかな?と思ったくらい。顔の筋肉だけであんなに変わるなんて…」

二階堂「顔の造形が変わってましたもんね(笑)。もとがかっこいいと、余計におもしろいですよね。GACKTさん、こんなことまでしてくださっていたんだ…っていう」

GACKT「最初はもっと普通にやる予定だったんですけど。それで前日、武内監督に『こういうイメージがあるんだけど、どうですか?』って聞いたら、『現場でやってみましょう!』って言われて。これ、リハーサルするのかぁ…みたいな(苦笑)」

二階堂「やだ、すごい恥ずかしいですね(笑)」

GACKT「実際にやってみたら、武内監督も現場のスタッフも『いや、こっちの方がいいんじゃないですか?』って。冷静な口調で言われるのが、また恥ずかしかった」

杏「台本には書かれていなかったから、完成した作品を観た時にびっくりしました」

二階堂「笑いすぎて、大変でした(笑)。新しいGACKTさんと、新しい麗を見られたなっていう感じですね」

GACKT「ありがとう。光栄です…」

杏「あと、片岡愛之助さん演じる嘉祥寺に、口元についたソースを舐められたりして(笑)」

GACKT「あれも現場でリハーサルをした時に『愛さん、ここはもっとエロくやりましょう。もうちょっとソースつけるんで、舐めてください』って、ボクから提案して。愛さんにも『いいんですか?舐めまくりますけど』とか言われて」

杏「あのシーン、カット尻までずっと舐めていましたもんね。1回じゃ済まないんだと思いながら見ていました」

GACKT「愛さん、すっごい真面目な人で。舐める前に『失礼します』って」

杏「わぁ、紳士なんですね(笑)」

――キャストの皆さんのきらびやかな衣装やヘアメイクも、本シリーズの魅力のひとつです。衣装に関する撮影時のエピソードを教えてください。

杏「私が演じた桔梗は、原作にないキャラクターだったので、ビジュアルはゼロから作っていきました。衣装デザインの柘植伊佐夫さんが、桔梗の衣装には南蛮人のような襟やケープをつけるとおっしゃっていて。私はそこで家紋を入れたいと言ったんです。かつて近江の地を奪おうと、争い合った武将たちの名だたる家紋を入れることで、桔梗が過去の栄光を大事にしていることを出せるかなと思って。そういう話し合いを経てデザインができあがっていきました」

二階堂「百美の衣装は、とても着心地が悪いんですよ(笑)。伸縮性の少ないカーテンみたいな生地だから、ちょっと太ったかも?とかもすぐにわかるし。今回は、1作目の時にGACKTさんが着ていたマントがかっこよかったので、『私もあれが着たい!』とお願いしたんです。それでさらに動きづらくなっちゃって大変でした(苦笑)。でも、マント姿の百美を見せることができてよかったです」

GACKT「ボクは撮影中にパンツが破けることがけっこう多くて。走ったり、動いたりするシーンでは、内股の部分がブワーッと裂ける。これと同じこと、前回もあったよな…なんとかならないものなのかな…って思いながら、最後まで、破けたパンツを縫って、履いて、破いて、というのを何回も繰り返していました」

「差別や分断って実はこんなにバカバカしいんだ」(二階堂)

――本作はいろいろな地域をディスりながらも、その奥には深い“郷土愛”があふれています。GACKTさんと二階堂さんは沖縄出身、杏さんは東京出身ですが、ご自身の出身地にどのような想いがありますか?

GACKT「ボクの故郷はやばい田舎なんですよ。それこそ人の数より山羊の数のほうが多いくらい。うちのスタッフに福岡出身の人が多かった時期があったんですけど、彼らに『出身が福岡で、田舎なんですよー』って言われたんですけど、実際に行った時に、全然都会じゃん!と思って。本物の田舎を見せてやろうか!?と、その後、彼らにボクの育ったところを見せたら、『ヤバいっすね!』って言われて。たまに沖縄出身の人間同士でも、それぞれの地元の話になった時、ボクは鼻で笑われることもあるんですよ、田舎すぎて。

でも、ボクは好きなんですよ、その田舎が。本当に家を出たら、目の前がすぐ海なので。いまの日本に、こんな風景が残っている場所あるか?と思うところもあって。ボクの誇りというか。確かに台風はきついですけど。ちなみに東京と沖縄では、イメージする台風のレベルは全然違います。沖縄は直撃なんで。朝起きると、木の上にボートが引っかかっているという光景が普通なんで。雨戸を突き破って、家の中に木が入ってくるとか。それも含めて沖縄なので。ボクの中では全部良き思い出として残っています」

二階堂「私も沖縄出身ですが、地元が全然違いますもんね。この映画でも、埼玉の大宮と浦和の戦いが描かれていますけど。沖縄も昔はひとつの国だったので、そういうことなのかもしれないなって、ちょっと思ったりしましたね」

GACKT「沖縄って、場所としてはめちゃめちゃ小さいじゃないですか。でも、その小さい中に、たくさん城があって、みんな戦っていたんですよ。こんな小さいところで、なにを取り合っていたんだろうっていうレベルの戦いをやってた。いまだに、その地域ごとでまったく言葉が違ったりして。それこそ宮古島とか石垣島の言葉なんて、なに言っているか全然わからないし」

二階堂「沖縄といっても、北と南で全然違うというのはあるかもしれないですね」

――前作でも、麗と百美が通う高校では、同じ東京であっても赤坂や青山に住む生徒はA組など、“都会指数”のレベルごとにクラスが分かれているという描写がありました。

杏「あと、車のナンバーはどこがいいとか、そういうこだわりも若干聞きますよね」

二階堂「私はいま、代車で大宮ナンバーなんですよ。なんか埼玉を背負っている気持ちになります(笑)」

杏「東京は都会だとか、東京の人は冷たいって言われることもあると思うんですけど、実は意外と人情深かったり、昔ながらの懐かしい暮らしが息づく場所も残っていたりして。緑豊かな公園もありますよね。文化面では、海外アートの展覧会が多かったり、いろんなごはんが食べられたり…そういうところは、東京っていいなと思いますね」

――みなさんは個人的に『翔んで埼玉』シリーズのどんなところに魅力を感じますか?

GACKT「他県の人が観ても、その県に住む人が観ても、こんなのあったんだ…!という発見があるところ。地理の勉強をしても、なかなか頭に入ってこないような知識を、エンタメを通して知ることができる、いいきっかけになるんじゃないのかなって。笑いながら、ディスりながら観ているうちに、自然に覚えていきますから」

杏「ユニークなローカルネタも多くて、『こんなこと、本当にあるんですか?』って、その出身地の人に聞いて、いろいろ教えてもらったりしたのもすごくおもしろかったです。あとは、名だたる人たちが大勢、思わぬところで出演している驚きもありますね。現場では、エキストラさんの衣装すべてが丁寧に作り込まれていたり、のぼり旗ひとつひとつにちゃんとメッセージが書いてあったりするディテールの細やかさにも感激しました。劇中のいろんな仕掛けや小ネタについて、観た人と話して、答え合わせしたくなる。1回観たあと、すぐにまた観たくなる作品だなって思いました」

二階堂「観ているうちに、おおらかな気持ちになれる作品ですね。前作の時にGACKTさんがおっしゃっていた『いまの時代に必要な映画』だという話、本当にそうだなと感じていて。この映画って、差別とか分断とか、そういったものが実はこんなにバカバカしいんだっていうことを、振り切ったディスを使って描いている作品だと思うんです。と同時に、やっぱり純粋に笑える作品でもあって。私もおなかがよじれるくらい笑って、観たあとにちょっと横隔膜が痛くなりました(笑)」

GACKT「映画館に観に行くことの意味、みたいなものを強く感じてもらえる作品なんじゃないかな。自分が笑うところで、隣の人も同じように笑っていて、そのこと自体が映画の印象まで変えてしまう。笑いや感動って、たくさんの人と共有することで、不思議と重層的に増えていくんですよ。多くの方に観ていただいて、たくさん笑ってほしいです。その笑いが入ってこの作品は完成するので」

取材・文/石塚圭子

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