隣の中学と相乗りだった? 修学旅行列車のウラ事情 行先もダイヤもルールあり

隣の中学と相乗りだった? 修学旅行列車のウラ事情 行先もダイヤもルールあり

  • 乗りものニュース
  • 更新日:2020/10/17

複数の学校が「集約臨」に「相乗り」

2020年は新型コロナの影響で修学旅行の中止も相次ぎ、行先表示に「修学旅行」と掲げた団体専用列車を見る機会も少なくなっています。こうした修学旅行、実は行先などにもルールがあり、鉄道会社はその輸送に応えるノウハウを蓄積してきました。

具体的な目的地は学校ごとに決定しますが、教育委員会訓令によると、小学校は「全行程500km程度で夜行移動を伴わない1泊2日」、中学校は「全行程1200km程度かつ車中泊は1泊までの3泊4日」と、移動距離および日程が決められています。

この範囲内で「教育的な目的地」となると、首都圏発であれば日光や京都など、ある程度場所が絞られていきます。

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神奈川県の児童や生徒を乗せて日光に向かう集約臨。現在は185系やE257系500番台などで運行される(2006年7月、児山 計撮影)。

複数の学校で目的地がある程度重複するのであれば、移動の際に修学旅行専用の列車を仕立て、一度に児童や生徒を輸送すると効率がよくなります。そこで学校側は、修学旅行の日程を近隣の学校どうしで調整し、鉄道会社は「集約臨」と呼ばれる臨時列車を設定、複数の学校の児童生徒を「相乗り」させて修学旅行の輸送にあたります。

修学旅行は年中行事なので、毎年だいたい同じ時期、同じ区間に需要が生まれます。そのため、著名な観光地であれば集約臨のダイヤはあらかじめ設定されているか、繁忙期に運転される臨時列車のダイヤを集約臨に流用するといったことが行われます。

新幹線の場合も基本的には同じです。たとえば関東エリアの中学校であれば、「関東地区公立中学校修学旅行委員会」が複数の学校と日程を調整し、1列車あたり1000名以上になるようします。

東海道新幹線「こだま」の13・14号車は指定席にもなる

2021年度の中学校を例に挙げると、5月7日から7月9日にかけて741校、計10万9040人の児童や生徒が、東京駅7時48分頃発の「のぞみ287号」および10時24分頃発の「のぞみ321号」のダイヤを専用臨時列車とし、関西方面の修学旅行に出かける予定です。

一方、日程や人数の関係から1000名以下の催行となってしまう場合もあります。この場合は、定期列車の一部を団体用に貸し切る「混乗」という形をとります。

前述の関東にある公立中学校の例でいえば、春と秋に修学旅行を実施する学校は、東京駅7時00分頃発の「のぞみ203号」に混乗するとしています。また関東地区の場合、東北・北陸方面への修学旅行を実施する学校は21校で2986名と少ないため、東北・北陸新幹線においては修学旅行専用列車の設定はなく、すべて定期列車に混乗する形となっています。

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東海道新幹線を走る修学旅行専用列車。車体側面の案内表示器には「修学旅行」の4文字が表示される(2018年6月、草町義和撮影)。

首都圏以外のケースでは、たとえば東海道新幹線「こだま」の停車駅などから修学旅行で利用する場合、「こだま」自由席の一部を指定席に変更し、修学旅行輸送にあてるケースもあります。季節によって「こだま」の13・14号車が自由席だったり指定席だったりする理由のひとつが修学旅行にあるわけです。

ところで、これら修学旅行専用列車の運賃は団体割引が適用され、JRの場合は中学生以上が普通運賃から5割引、小学生以下は小児運賃から3割引、教職員や付添人は普通運賃から3割引となります。なお、割引対象は運賃のみで、新幹線を利用する場合の特急料金は割り引かれません。

国鉄には修学旅行に特化した車両があった

修学旅行は原則として、鉄道の繁忙期を避け、ダイヤも車両も比較的余裕がある時期に催行されるため、在来線を利用する場合は一般的に、普段の定期運用に入っていない「波動用」と呼ばれる車両が使われます。ただし、かつての国鉄には明確に、修学旅行の輸送を目的とした155系や159系、167系といった車両がありました。

特に155系は1両当たり100名を着席させるという目的から、座席は通路を挟み2+3、横5列のボックスシート。1人当たりの座席幅はたいへん窮屈なものでしたが、夜行でも眠りやすいよう座席にヘッドレストが設けられたり、ボックス長は急行形と同じ1460mmとして奥行きが確保されたりするなど、最大限の配慮がなされていました。

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近畿日本鉄道の15200系「あおぞらII」。沿線に歴史的な観光地を多く持つ近鉄は、団体用車両の需要は高い(画像:写真AC)。

国鉄のこれらの車両は、新幹線による修学旅行が一般化したことで役目を終えていますが、京都、奈良、伊勢といった歴史的な観光地を沿線に持つ近畿日本鉄道は、古くから修学旅行用を想定した車両を所有し、現在も団体用として修学旅行に運用しています。

一方、関東の私鉄では、東武鉄道が日光や鬼怒川方面へ修学旅行専用列車を運転したことがありますが、こちらは定期列車にも使われる300型や350型が使われました。

修学旅行は学生生活の思い出の中でも大きなウェイトを占めるイベントです。学校の先生や鉄道会社、旅行エージェンシーは学生たちの素敵な思い出になるよう、車両や座席の手配に尽力しています。

児山 計(鉄道ライター)

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