息子の新居に、老後資金800万円を使ったのちに「ATM扱い」をされた夫婦の悲劇

息子の新居に、老後資金800万円を使ったのちに「ATM扱い」をされた夫婦の悲劇

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/06/10
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孫の学費でいがみ合い

「『ありがとう』、ずっと続くと『これだけか』。我ながら、上手い一句だと思うんです」

牧康則さん(愛知県在住、79歳・仮名)はこう自嘲する。

牧さんが69歳のとき、30代の一人息子が珍しく電話をかけてきた。

「娘が3歳になるので、そろそろ家を買いたい。ついてはいくらか援助してもらえないか、という相談でした」

息子一家は勤め先に近い名古屋市内に住んでいたが、「将来を考えて、新居は実家の近所に建てようと思う」とも言われ、牧さんと妻は舞い上がった。孫娘の顔を毎日のように見られるのだ。

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Photo by iStock

夫妻は耳を揃えて頭金800万円を用意した。老後資金の3分の1にあたる額だ。1年後に開いた上棟式では、張り切って高価な今治バスタオルを買い、職人さんやご近所に配って回った。

「竣工の日、初めて面と向かって息子に『ありがとう』と言われ、妻は泣いていました」

それからは忙しく、何かと出費のかさむ日々が始まった。息子夫婦は共働きのため、週に2~3回は牧さん夫妻が夕食を準備する。食料品や日用品の買い物、車のガソリン代、外食費に加えて、年に一回の家族旅行の費用まで持つようになった。

確かにカネはかかる。でも、もう人生も終盤だ。家族を、孫を笑顔にできるなら安いもの。牧さんも妻もそう考えていた。

しかし、貯金が1000万円を切った一昨年末から、夫妻は不安に苛まれ始めた。最大のきっかけは孫の進学だ。

「去年の春、私立の中高一貫校に入ることになったんです。学費自体は年額70万円ほどですが、諸々の雑費を含めると100万円近くになる。これまで習い事の月謝や学用品の費用はほとんど私たちが負担していたので、いまさら援助できないなんて言えませんでした。

『入学金は全部そっちで出してもらえないかな』と恐る恐る持ちかけてみたものの、息子夫婦には『ウチだってそんなに余裕ないんだから』と取りあってもらえなかった。挙げ句、息子に『(孫が)ずっと憧れていた学校なのに、親父たちが協力しないせいで行けなくなったらどうするの』とまで言われて……」

いつしか息子夫婦は、牧さん夫妻の支援を「あって当然」と見なすようになっていたのである。先に限界を迎えたのは牧さんの妻だった。

「あるとき『私らのことをATMと思っとるんかね!』と、孫のいる前で息子夫婦に食ってかかったんです。それからというもの、もう前のように気軽に行き来するどころか、連絡するのも気まずくなってしまいました。

思えば、身の丈に合わない額を出し続けた私たちも悪かった。良かれと思ってしてきたことが、家族を壊してしまうなんて」

おカネの魔力は、与える側も、そして受け取る側も蝕む。気づいたときには、もう手遅れなのだ。

『週刊現代』5月1・8日号より

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