「意思決定への平等な参加阻害」 沖縄知事が国連で辺野古移設批判

「意思決定への平等な参加阻害」 沖縄知事が国連で辺野古移設批判

  • 朝日新聞デジタル
  • 更新日:2023/09/26
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"国連人権理事会での初日の予定を終えて報道陣の取材に応じる沖縄県の玉城デニー知事=2023年9月18日、ジュネーブ、宋光祐撮影"

沖縄県の玉城デニー知事は18日(日本時間19日)、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で開かれている国連人権理事会に出席し、在日米軍基地が沖縄に集中している現状や、日本周辺の緊張を高める軍事力増強への懸念について訴えた。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画についても、反対の民意が顧みられていないと批判した。

【画像】一目でわかる 辺野古の埋め立て工事の現状

玉城氏は22日まで滞在し、三つの本会議に出席する。沖縄県知事が同理事会で発言するのは2015年の故・翁長雄志前知事以来8年ぶり。

■「人権や民主主義という普遍的な問題」訴える狙い

辺野古移設計画をめぐる国との訴訟で沖縄県の敗訴が確定し、玉城氏は新たな区域の埋め立てに必要な防衛省の設計変更申請を承認するか否かの判断を迫られている。理事会での発言は、辺野古移設や米軍基地の問題は「沖縄だけでなく、人権や民主主義という普遍的な問題」として国際社会に訴える狙いがある。

玉城氏は18日、本会議場に並ぶ各国の代表団に「米軍基地が集中し、平和が脅かされ、意思決定への平等な参加が阻害されている沖縄の状況を世界中から関心を持って見てください」と発言。沖縄の現状について「日本全体の国土面積の0・6%しかない沖縄には、在日米軍基地の約7割が集中している」と説明した。

その上で、日本政府に対し、「貴重な海域を埋め立て、新基地建設を強行している」と批判。7割超が埋め立てに反対した19年の県民投票にも触れ、「民主主義の手続きにより明確に埋め立て反対という民意が示された」と指摘した。「軍事力の増強は日本の周辺地域の緊張を高めることが懸念されるため、沖縄県民の平和を希求する思いとは全く相いれない」とも述べた。

■日本政府代表部は「米軍駐留は重要」 玉城知事はPFAS検出問題に言及

一方、玉城氏の演説後には、ジュネーブ国際機関日本政府代表部の担当者が「沖縄における米軍の駐留は、日本の平和と安定を確保する観点から極めて重要だ」と答弁。「米軍の駐留は地政学的理由と安全保障上の必要性に基づいており、いかなる差別的な意図にも基づいていない。米軍の専用施設が集中することは沖縄に重大な影響を及ぼしており、沖縄の負担を軽減することは政府の重要な責任だ」と述べた。

玉城氏は今回、人権理事会で発言が認められている非政府組織(NGO)側の参加者として演説した。地方自治体の首長が発言するのは珍しく、演説後には理事会の出席者から称賛の言葉をかけられたという。

19日にあった講演で玉城氏は、米軍基地周辺で健康への影響が懸念されている高濃度の有機フッ素化合物(総称PFAS〈ピーファス〉)が検出されている問題に言及。同様の問題が起きたハワイの米軍施設では米軍が水質の監視結果を公表することになったのに、沖縄では対応されないままになっているとして、「国内外で対応に違いがあるのは明らかだ」と指摘した。

その上で、「沖縄県内の人権や生活を守るためにも、米軍に対する国内法の適用など日米地位協定の抜本的な見直しが必要だ」と訴えた。辺野古移設計画をめぐって県の敗訴が確定した最高裁判決にも触れ、「沖縄県の自主性や自立性、憲法に定める地方自治の本旨を形骸化させる極めて重大な問題だ」と訴えた。

■「各国・各機関に、無用の誤解」 自民県連は知事に事前申し入れ

一方、玉城氏のジュネーブ訪問に先立ち、自民党沖縄県連幹部らは「国内の政治問題を公的な立場で国際世論に訴えようとすることは、各国・各機関に無用の誤解を生じさせかねない。国内法秩序をないがしろにしかねない言動は厳に慎んでほしい」と申し入れた。

18日の日程を終えた玉城氏は報道陣に対して、「率直に言えば、日本政府が沖縄県民の様々な思いを受けて、米国側と協議して進めている現状であれば、私がここに来る必要はない。なぜ私がここに来たか。これが今の沖縄における最大の問題だ」と話した。(宋光祐=ジュネーブ、小野太郎)

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