
仕送りなしで別居中の親を扶養に入れるのは不可能
「親を扶養に入れると節税になる」と聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。両親を税法上の扶養に入れることができれば、扶養控除が適用され税金を抑えることができます。69歳までの親を扶養に入れた場合は38万円、70歳以上の別居している親を扶養に入れると48万円の所得控除を受けることが可能です。所得税率が10%の人が親を扶養に入れると、3万8000円以上の節税効果が得られることになります。会社員のAさんは、「なかなか給料が上がらないため、所得を増やすための一環として、別居中の両親を扶養にしたい」と考えています。Aさんは「できれば、仕送りなしで扶養に入れたい」と考えていますが、仕送りをすることなく別居中の両親を扶養に入れることはできるのでしょうか?結論からいうと、基本的に仕送りなしで別居中の両親を扶養に入れることはできません。扶養控除を受けるためには、扶養に入れようとしている家族と「生計を一にする」という条件が設けられているからです。国税庁のホームページ上でも、別居している者を扶養控除の対象とするためには、常に生活費、療養費等の送金が行われているなど「生計を一」にしていることを求めています。つまり、仕送りなしだと「生計を一にしていない」と扱われ、別居中の両親を扶養に入れることは認められません。
別居中の親を税法上の扶養にできるケース
そもそも、扶養控除を受けるためには扶養に入れようとしている人が、一定の収入以下である必要があります。具体的には、扶養に入れる人は「年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)である」必要があります。別居中の親を税法上の扶養に入れるためには、下記の条件をクリアしなければなりません。
【親が65歳未満】
●親と「生計を一」にしている●収入金額が108万円以下(収入が公的年金のみの場合)●働いており、年金を受給していない場合は所得金額が48万円以下(給与収入が103万円以下)
【親が65歳以上】
●親と「生計を一」にしている●収入金額が158万円以下(収入が公的年金のみの場合)●働いており、年金を受給していない場合は所得金額が48万円以下(給与収入が103万円以下)
一般的に、「扶養」とは経済的援助を受けないと生活ができない人を援助するニュアンスがあります。仕送りなし、つまり経済的援助を行わずに扶養に入れることはできません。国税庁のホームページに、具体的に「〇円以上の経済的援助が必要」などの記載はありません。しかし、「毎月1000円」など、社会通念上仕送り額が低すぎる場合は、税務署から扶養を否認されるでしょう。今回のAさんのケースであれば、Aさんが両親に対して「常に生活費、療養費等の送金が行われている」状態で、さらに両親が上記の所得要件をクリアしていれば扶養に入れることができます。また、配偶者の両親も上記の条件を満たせば税法上の扶養に入れることができます。Aさんが結婚しており、配偶者の親が一定の収入以下で、Aさんから生活費や療養費などの送金を行えば、扶養に入れることが可能です。扶養の手続きを進めるためには、年末調整の時期に勤務先から渡される「扶養控除等申告書」に、扶養に入れる人の氏名や生年月日を記入します。別居中の親を扶養に入れる際には、勤務先から仕送りなどを行っている証明書(通帳のコピーなど)を求められるため、求められた書類を提出しましょう。
まとめ
給料がなかなか上がらずに、税金の負担が重くなっている昨今において、節税に関する意識を高めることは重要です。別居中の親を扶養に入れるためには、親の収入要件だけでなく「常に生活費、療養費等の送金が行われている」という要件をクリアしなければなりません。別居している親を扶養に入れたい場合は、扶養に入れることで得られる節税メリットと、仕送りする金額のバランスを計算することが大切です。節税額よりも仕送り額が大きいと、経済的に損になってしまうため気を付けましょう。
出典
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.1180 扶養控除国税庁 No.1180 扶養控除執筆者:FINANCIAL FIELD編集部ファイナンシャルプランナー
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部