「自民党一強」状態から抜け出せない日本の政治 最大労組「連合」の怠慢も要因か

「自民党一強」状態から抜け出せない日本の政治 最大労組「連合」の怠慢も要因か

  • マネーポストWEB
  • 更新日:2022/06/23
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日本最大の労働組合「連合」はサイレント・マジョリティの受け皿になれるか(イラスト/井川泰年)

自民党有利と予想されている7月の参院選。その対立軸が出てこないのはなぜか。経営コンサルタントの大前研一氏が考察する。

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7月の参議院議員選挙は「自民党の圧勝」という見方が大勢になっている。報道各社の世論調査で岸田文雄内閣と自民党の支持率が上昇し、野党の支持率が軒並み低下しているからだ。

野党の存在感がどんどん薄くなっている現状のままなら、おそらくそうなるだろう。一見、自民党が選挙に強いようにも思えるが、実際には野党陣営が離合集散して“自滅”していると見るほうが正しい。自民党の政党支持率は30%台から40%前後にとどまっており、残りの6割以上は野党支持に転じてもおかしくはないからだ。

そもそも自民党の支持母体は、農業協同組合、漁業協同組合、医師会、歯科医師会、経団連、商工会議所、中小企業、商店街など従来の法制度や規制に守られてきた“既得権者”が中心であり、それらに政策の共通項はない。つまり、自民党支持層の主体は「ノイジー・マイノリティ」の寄せ集め集団なのである。だから自民党の政策は、各々の支持母体の要望に配慮したバラ撒きになってしまうのだ。

それに対抗する残り6割は「サイレント・マジョリティ」である。いわゆるサラリーマンなどの給与所得者やパート、アルバイト、フリーランスの人たちだ。しかし、今の野党はその層を取り込めていない。

では、サイレント・マジョリティのための政策立案はどこがやるべきなのか? 私は、日本最大の労働組合「連合(日本労働組合総連合会)」以外にないと思う。

イギリスは保守党と労働党、アメリカは共和党と民主党の二大政党制となっている。富裕層や既得権者を支持層とする保守政党と、都市部の労働者・生活者を支持層とする革新政党という構図だ。本来、日本にもイギリスの労働党やアメリカの民主党のような、サイレント・マジョリティを代表する政党が必要だ。

しかし、旧民主党の消滅後、離合集散を繰り返すばかりの日本の野党は、政策よりも人物本位で選挙を戦うだけで、自民党への対抗勢力にはなっていない。

となれば、労働者の代弁者である連合こそが政策集団をつくるか、政策立案ができる人材をアドバイザーに招いて、“対立軸”を打ち出すしかないと思う。

もし私が連合のトップだったら

ところが、連合はその受け皿になっていない。

もともと連合は労働界の再編を目指して1987年に「同盟」と「中立労連」が統合して発足。さらに、1989年に「新産別」「総評」「日教組」も加盟してナショナル・センター(中央労働団体)となったが、そこで力尽きた感がある。組合員数は頭打ちで、2021年は約700万人だ。

現在の8代目会長・芳野友子氏は女性初のトップとしてメディアに注目されたものの、2022年度の重点政策は「コロナ禍における雇用・生活対策」「マイナンバー制度の一層の活用」「ジェンダー平等で多様性を認め合う社会の実現」といった総花的かつ抽象的なものであり、まるで政府の政策を羅列したかのような印象を受ける。これはナショナル・センターとしての怠慢にほかならない。

しかも、芳野会長は自民党の「人生100年時代戦略本部」で講演したり、麻生太郎副総裁や小渕優子組織運動本部長と会食したりして、自民党にすり寄っている。参院選における立憲民主党、国民民主党との政策協定締結も断念した。

これは、イソップ寓話の「卑怯なコウモリ(*)」のような振る舞いであり、そもそも対峙すべき自民党に媚びを売るとは何事か。

【*注/鳥と獣との戦争を見ていたコウモリは、双方の間で寝返りを繰り返したため、結局、居場所がなくなって暗い洞窟の中へ身を潜めるようになったという寓話】

もし私が連合のトップなら、16.9%でしかない労働組合組織率(雇用者数に占める労働組合員数の割合/2021年)の大幅な引き上げを目指す。具体的には、組織率引き上げのための法整備や、中堅・中小企業における労働組合の拡大、さらに非正規(パートやアルバイト)、フリーランスの労働組合の結成促進などだ。

そうやって日本全体の6割を占めるサイレント・マジョリティをカバーし、彼らの意見を代弁する政策を明確に打ち出していけば、流れは変わっていくはずだ。

この国の政治を公平・公正なものにするためには、連合が本来の責務を果たさねばならない。その意思が見えないから、自民党一強状態になっているのだ。

【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『大前研一 世界の潮流2022-23スペシャル』(プレジデント社刊)など著書多数。

※週刊ポスト2022年7月1日号

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