男の僕が実感した“女性の見た目”を維持することの大変さ

男の僕が実感した“女性の見た目”を維持することの大変さ

  • 日刊SPA!
  • 更新日:2021/02/23

―[カリスマ男の娘・大島薫]―

見た目は美女で心は男。カリスマ男の娘・大島薫。男女の色恋、社会の矛盾、LGBTの無理解――男心と女心の双方を併せ持つ“彼”の目から見た、世の中のフシギとは?

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大島薫

◆メイク用品の減りは明らかに減った

日本で初のコロナ感染者が出てから、約1年1ヶ月が経過した。一時のマスク不足も収束し、街中ですれ違うだけの人々の素顔を見る機会はほとんどなくなった。

そんなコロナ渦で大打撃を被っている企業の一つが化粧品大手メーカー「資生堂」だ。

資生堂は今月9日、去年1年間のグループ全体の売り上げが、前の年より18.6%減少して9208億円となっており、最終損益として116億円の赤字だと発表した。赤字は2013年期以来だそうだ。

しかし、これは普段メイクをすることの多い女性からすると、特に驚くべき出来事でもないと思う。というのも、明らかにメイク用品の減りが遅くなっているのを実感しているだろうからだ。まず家から出ない、やったところでマスクで隠れるので意味がない。1日中すっぴんでいる日も増えただろう。筆者は男性でありながら、女性の格好をして暮らしているため、そういう実感がある。だが、まだ男性の見た目で生活をしていたとすれば、おそらくそういう想像もあまりできなかっただろう。つい先日、女友だちがこんなことをいったのだ。

「最近彼氏にいわれて、メイクを薄くしようとしてるんだけど、まだ『濃い』っていわれる」

見ると、たしかに。普段彼女はゴシックっぽい、ダークなアイシャドウで目を囲うようなメイクをしているのだが、今日はかなり薄付きだ。そこで僕はこういった。

「まあ、男性はメイクの色味くらいしか見てないからね。濃く塗ってもベージュとかなら薄いメイクだと勘違いするし、青とか黒ならサッと塗っても濃いメイクに感じるんだよ」

と、いいながら、こんなこと、たぶん自分がメイクしなければ言えなかっただろうなと思った。結局彼女はカラーまでは変えたくなかったようで、元のメイクに戻すことにしたみたいだ。とはいえ、そんな僕はもちろん初めからメイクのやり方を知っていたわけじゃないし、思い立った瞬間女性の見た目になれたわけでもない。今日はそんな、見た目の性別を変えていくうちにやってきたことをいくつか書いていこうと思う。

◆髪の毛がサラサラなのは「女性だから」?

・髪の毛

メイクよりまず始めに書きたいのは、やはり髪の毛のことだ。なんたって年季が違う。メイクは技術と知識量なので、その気になれば自分の努力次第でいくらでも上達速度は上がる。だが、髪の毛はそうはいかない。

物理的に時間がかかるのだ。髪は1日で0.3~0.4mm伸びるといわれているが、筆者は大体胸の位置まである。セミロングというには長いくらいだが、この長さになるまで男性の髪型から2年の時間がかかっている。また、手入れしながら伸ばさなければ、綺麗な髪にはならないので、毎日のケアーも大変だった。たまに男性の中には「女性のサラサラの髪は女性特有! 女の子が良い匂いがするのは、女の子だから!」なんて思っている人がいるが、女性だって手入れを怠れば髪はギシギシになるし、良い匂いもしない。

美しい髪にはそれなりの時間と労力がかかっているのだ。そのくせ、綺麗にするには長い年月が必要なのに、放置すると荒れるのは一瞬だから割に合わない。

・メイク

メイクに関しても、それなりになるには結構時間がかかった。最初の頃は見様見真似でやってるから、アイラインを2cmくらい太く引いたり、チークをこれでもかと塗り込んでおてもやんみたいになったりしたものだ。これは、女性も始めのほうは同じような経緯を辿るらしい。中学くらいで化粧に興味を持ち始めた子なんかは、同じような経験があると思う。

ただ僕は当時23歳だ。女性が中学くらいから徐々に学んだりしてきたことを、何足飛びかで学ばないといけなかった。雑誌やネットを駆使して、なんとか覚えたものだ。こういうときいつも思うのが、女性というのは生まれながらにして世間がイメージする『女性』ではないのだなと感じる。幼少期から髪を伸ばしたり、メイクを覚えたりして、ゆっくりといわゆる『女性』になっていくのだ。ただ、この世間がイメージする『女性』を維持することは、とんでもない労力がかかるので、やりたくないのにやらされてる感を覚えている人もたくさんいるだろうなと思う。

◆女装で知った「女性がバッグを持ち歩くワケ」

・服装

服選びは楽しくもあり、毎日悩まされるものだ。もともと女性の格好がしたかったのは、ファッションの幅がたくさんあるからという理由もあった。しかし、幅があるということは、色んな着こなしもあるわけで、男性ファッションにしか馴染みがなかった当初は、なにを着ていいかわからなかった。

また筆者は身体が男性なので、服の選び方も体型を考慮してチョイスすることが多い。例えば肩幅はやはり目立つので、襟の詰まった服は避けている。意外に思うかもしれないが、肩幅があるほど肩を出した服のほうが、視線が散って目立たない。

くびれのないところや、女性と男性は腰の位置が違うのも大変だ。ワンピースはAラインのものを選んだり、ウエストを高くマークして腰の位置を誤魔化したりもしている。大変だ大変だといいながら、男性の生活では知り得なかった事実を知ることは楽しい。女性の服にはポケットがない、もしくはあっても狭いものが多く、着てみて初めて女性がなんで常に「バッグ」を持ち歩くのかを知ったりもした。オールインワンで背中までチャックで覆うような服は、トイレのときに非常に困る。

利便性や機能性だけ重視したら、いまでも男性の服のほうが生活はしやすいだろうなと思うので、とっとと全国の学校で制服は男女共にズボンも選択できるようになって欲しい。

・体毛

スカートやショートパンツを穿くなら、やはり体毛は処理したいだろう。結局振り返ってみれば、全身の脱毛になんだかんだ100万円くらい使ってしまった。

実は最初の頃は、毛が薄いほうなのでカミソリでなんとかなると思っていた。ところが、ある日足の皮膚に黒い斑点ができ始め、皮膚科を受診したところ原因はカミソリだと。どうやら毎日毛を剃るのが良くないらしい。

でも、剃らなきゃ生えてくる……というわけで、脱毛を決意したのだが、これはやっておいて損はないと思えた。本当に毎日の処理が楽になるし、副産物として毛穴が締まり肌がキメ細かくなる。化粧乗りも違ってくる。男性でも毎日ヒゲを剃るという方は、肌のことも考えて検討してみてはどうだろうか。

◆女性っぽい“自然な仕草”とは?

・仕草

見た目と関係ないのが出たが、まあ、仕草も見た目に影響する部分だろう。なんせ男児として幼少期を過ごし、大人になってもしばらくは男性だったのだ。まあ、いま思えば仕草は相当ガサツだっただろう。

テレビのオネェタレント並みにクネクネしたら、逆に女性っぽくはなくなるが、それでも多少は学ばなければいけないところがあった。例えばガニ股で肩をゆっさゆっさ揺らしながら歩く女性を見ることはあまりないが、そういう男性はよく見るだろう。

平成元年生まれとはいえ、まだまだ足を閉じて座ったり、所作が丁寧だったりすると男社会で「ナヨナヨするな!」とかいわれてきた世代だ。それを日常的に出ないレベルまで直すのには、時間もかかった。

だが、最近よく「電車で足をガバッと開いて座るオジサン」とか、そういうのが問題になるのを見るに、そろそろ男性全体がもはや旧時代的な『肩で風切る男らしさ』が、無用の長物になってきてることに気づくときが来たのではないかと思う。

女性として暮らすわけでなくとも、女性から学べることは多い。

・ネイル

これは女性でもやる人、やらない人がいるし、自分も最近までやってなかったので「女装初期にやってたこと」ではないが、一応書いておこう。いままでネイルをしなかった理由は趣味でギターを弾くからなのだが、ちょっと最近諸事情でやらなくなったので、ふとセルフでジェルネイルでもやってみようと思い立った。

ネイルには大まかにマニキュアとジェルネイルがあり、マニキュアは昔からあるので年配の人でもピンと来るだろうが、ジェルネイルはいってしまえば紫外線で乾く速乾性のネイルのことだ。紫外線で乾く際に硬化するので、マニキュアより持ちが良い。

サロンに行く人が多いので、セルフでやるのは女性でも多くないらしいのだが、個人的にマツエクや美容室など、これ以上サロン通いの出費を増やしたくなかったので、そこは努力でカバーをしようという結論を出した。

やってみて、初メイクのときにも思ったが、女性の美容は手先が不器用な人に対して優しくなさすぎる。一回目は爪どころか指の先が真っピンクに染まって、即落とすハメになった。

それでも三日ほど練習すれば、簡単なものならできるようになった。爪が綺麗なのは嬉しいものだ。美容は大変さと楽しさの表裏一体だなと改めて感じた。

◆美容にはお金も時間もかかる

さて、ここまで書いてきての結論だが、一番実感するのは「美容にはお金がかかる」ということ。もちろん時間もかかるが、時間=お金とすると、ダブルでかかる。女性にとってメイクは社会人のマナーなんて風潮があるが、仕事するのにメイクまで会社規定なんかで定められたら、お金がいくらあっても足りない。

男性ならヒゲを剃るカミソリに、ヘアワックスくらいのものだろうが、女性のメイク用品は毎日使うのであればたぶん毎月何かしらかがなくなる。デパコスなら4~5千円、プチプラでも2千円程度。

何より、メイクやヘアセットの時間さえなければ、もっと仕事に関する勉強に充てたりすることもできるのに……なんて悩みを持つ女性も少なくないだろう。

コロナは洒落にならないが、メイクの面では一時の安息を女性たちに与えているのかもしれない。

あ、でも、マスクで口元が荒れるので、やっぱりプラマイゼロで。コロナ許すまじ。

―[カリスマ男の娘・大島薫]―

【大島薫】

1989年6月7日生まれ。男性でありながらAV女優として、大手AVメーカーKMPにて初の専属女優契約を結ぶ2015年にAV女優を引退し、現在は作家活動を行っている。ツイッター@OshimaKaoru

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