野口聡一宇宙飛行士らが地球に帰還、半年間の宇宙滞在ミッションを振り返る

野口聡一宇宙飛行士らが地球に帰還、半年間の宇宙滞在ミッションを振り返る

  • マイナビニュース
  • 更新日:2021/05/05
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日本の野口聡一宇宙飛行士ら4人を乗せた、米宇宙企業スペースXの宇宙船「クルー・ドラゴン」運用1号機(Crew-1)が、2021年5月2日、地球への帰還に成功した。

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野口氏ら搭乗していた4人の健康状態は正常だという。4人は昨年10月から国際宇宙ステーション(ISS)に約半年間滞在し、さまざまな実験や研究、ISSのメンテナンス活動に従事した。

クルー・ドラゴンCrew-1の帰還

クルー・ドラゴンCrew-1は、日本時間2020年11月16日9時27分(米東部標準時15日19時27分)、米フロリダ州にあるNASAケネディ宇宙センターから打ち上げられた。

宇宙船には、米国航空宇宙局(NASA)宇宙飛行士のマイケル・ホプキンス氏、ヴィクター・グローヴァー氏、シャノン・ウォーカー氏、そして日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙飛行士の野口聡一宇宙飛行士の4人が搭乗。ホプキンス氏は船長を、グローヴァー氏はパイロットを、そしてウォーカー氏と野口氏はミッション・スペシャリストを務めた。

この4人により、宇宙船のカプセルには「レジリエンス(Resilience)」という愛称が与えられた。命名の理由について、野口氏は「レジリエンスとは、困難な状況から立ち直ること、形が変わってしまったものを元通りにすることといった意味。世界中がコロナ禍で困難な中、協力して社会を元に戻そう、元の生活を取り戻そうという願いを込めた」と語る。

打ち上げ後、レジリエンスには細かなトラブルがいくつか発生したものの、すぐに解決。ミッションに大きな影響はなく、翌17日13時1分、ISSへのドッキングに成功した。

その後、4人は先に滞在していた3人の宇宙飛行士と合流し、第64/65次長期滞在クルーとして約半年間滞在。さまざまな研究や実験、ISSのメンテナンス活動に従事した。

そして5月2日、いよいよ帰還のときが迫った。4人はレジリエンスに乗り込み、7時20分にハッチを閉鎖。9時35分にはISSから出帆した。

レジリエンスは単独飛行に移り、14時58分には機体後部にあるトランクを分離。15時03分には軌道離脱噴射を開始し、16分間の噴射を無事に完了した。

そして15時40分ごろ、大気圏への再突入を開始。やがて濃密な大気の中に入り、高度約5500mでドローグ・シュートを展開。続いて高度約2000mでメイン・パラシュートを展開し、ゆっくりと降下。そして15時56分(米東部夏時間2時56分)、フロリダ・パナマシティ沖のメキシコ湾に着水した。

その後、レジリエンスのカプセルと宇宙飛行士は、スペースXの船で回収。宇宙飛行士は全員元気だという。このあと4人は、陸地に戻り、飛行機でテキサス州ヒューストンのジョンソン宇宙センターに戻る予定となっている。

米国の有人宇宙船が夜間に着水したのは、1968年12月27日の「アポロ8」が、夜明け前に太平洋上に帰還して以来のこととなった。

さらに、民間企業が開発した宇宙船が運用段階に入ったのは史上初。今後もISSへの宇宙飛行士の輸送で活用されることになる。

NASAの次期長官に任命されているビル・ネルソン上院議員は「ヴィクター、マイケル、シャノン、ソウイチの帰還を歓迎するとともに、安全な着水を成功させたNASAとスペースXに祝意を表します。私たちは、米国と商業、そして国際パートナーのために、素晴らしい宇宙飛行を成し遂げました。ISSへの安全で信頼性の高い輸送手段の実現は、NASAが商業クルー計画に着手したときのヴィジョンそのものです」とコメントした。

第64/65次長期滞在のミッション

4人の宇宙滞在日数は168日間(うち167日間はISSに滞在)となり、地球を2688周した。これは米国の宇宙船としては史上最長のミッションとなった。

ISS滞在中、4人の宇宙飛行士は科学研究や技術実証のほか、船外活動や広報イベントなどに従事。たとえば先進的な植物栽培施設「アドヴァンスト・プラント・ハビタット(Advanced Plant Habitat)」と「ヴェジー(Veggie)」で作物を育てたり、半導体結晶の新しい製造方法の実験を行ったりといった実験を行った。

また、ISSから多数の写真を撮影し、関係機関へ提供したりSNSに投稿したりし、自然災害や地球の変化の追跡に貢献。米国の高校生が設計、製作したテープ・ディスペンサーの試験も行った。

さらに今年はじめには、グローヴァー氏、ホプキンス氏、そして野口氏が船外活動を実施。最近設置されたばかりの科学プラットフォーム「バルトロメオ」のケーブル接続や、今後予定されている新しい太陽電池アレイの設置に向けた準備、ISSの冷却システムの点検など、ISSのメンテナンス作業を行った。

日本実験棟「きぼう」では、宇宙ステーションでの火災発生時の安全性向上に向けた燃焼実験「FLARE」や、微小重力環境を活用した立体培養技術の開発「Space Organogenesis」、新たな創薬需要創出に向けた膜タンパク質結晶化技術実証と高品質タンパク質結晶生成実験、超小型衛星の放出ミッションなどの実験、研究、利用が行われた。

またウォーカー宇宙飛行士は、2021年4月17日から始まった第65次長期滞在において、船長(コマンダー)に就任。女性としては3人目のISS船長となり、そして今回の帰還直前までのわずか11日間という、史上最短の船長となった。

さらに4月24日には、星出彰彦宇宙飛行士ら4人が搭乗したクルー・ドラゴンの運用2号機ミッション「Crew-2」がISSに到着し、野口氏らと合流。一時的に11人が同時に滞在することとなった。

そして28日には、ウォーカー氏から星出氏へISS船長が引き継がれた。Crew-2の宇宙飛行士は、約半年後の地球帰還まで、Crew-1と、これまでのISSクルーの成果を受け継いで、ISSで生活や作業を行うことになっている。

○参考文献

・Crew-1 Astronauts Safely Splash Down After Space Station Mission | NASA
・Commercial Crew Program
・JAXA | 野口宇宙飛行士 ISS長期滞在ミッション特設サイト
・JAXA野口宇宙飛行士ISS長期滞在ミッションプレスキット

鳥嶋真也 とりしましんや

著者プロフィール 宇宙開発評論家、宇宙開発史家。宇宙作家クラブ会員。 宇宙開発や天文学における最新ニュースから歴史まで、宇宙にまつわる様々な物事を対象に、取材や研究、記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。 この著者の記事一覧はこちら

鳥嶋真也

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