人間関係で「燃え尽きた人」に足りなかった視点

人間関係で「燃え尽きた人」に足りなかった視点

  • 東洋経済オンライン
  • 更新日:2022/09/23
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パートナーや友人、家族、同僚など…他者とのあいだに境界線を引ける人と引けない人の違いとは?(写真:Ushico/PIXTA)

充実したワークライフ・バランスや良好な人間関係を維持するために、パートナーや友人、家族、同僚とのあいだに適度な距離を保つことは必要です。

けれども現実は、心に土足で踏み込んでくる人がいて、断ることもできないまま、心は乱されてストレスは溜まるばかり。どうすればいいのでしょうか?

ニューヨーク・タイムズ紙、ガーディアン紙、サイコロジートゥデイ誌ほかに登場し、インスタグラムで150万フォロワーを獲得しているリレーションシップセラピスト、ネドラ・グローバー・タワブ氏によるメンタルヘルス指南書『心の境界線 穏やかな自己主張で自分らしく生きるトレーニング』より一部抜粋・再構成してお届けします。(前回の記事はこちら

「プレッシャーに押しつぶされそうなんです」 。そう言って、キムは両手で頭を抱えました。

キムは、ハネムーンを終えて2週間後に私の元に通い始めました。新婚の彼女は、仕事では優秀なキャリアを持ち、何でもそつなく完璧にこなせる自分を誇りに思っていましたが、すべてをうまくやり遂げられるだろうかという不安に取りつかれていました。憔悴しきって、朝、ベッドから起き出すのも怖くて仕方がなくなっていたのです。

キムは、自分に対してだけではなく、周囲に対してもいつも「最高の自分」でいようとしていました。誰にとっても、最高の友人、最高の娘、最高のきょうだい、最高の同僚であり続けてきました。そこに加えて、 「最高の妻」にもなろうと思ったのです。そして、いつかは最高の母にも、と。

キムにとって、 「最高」とは「いつでも応じること」でした。断ることは不親切で自分勝手だと考えていたからです。そんなキムが相談に来た理由は、こんなにも心を疲弊させずに理想の自分を目指し続ける方法を求めていたからでした。

でも、これくらいでは別に驚きません。これまでたくさんの人に会ってきましたが、特に女性には、見返りを求めず与え続けた結果、ただただ自分が疲れ果てて気力を失ってしまう人が多いのです。私たちは、まさに燃え尽き症候群の世界に生きているのです。

境界線を設けた時の他者の反応と、それに執着しないでもいい理由

相手がどう反応するか考えるのは大事ですが、想定される反応にあまり執着しすぎないようにしましょう。

【境界線へのよくある反応】
1.反発する
2.限界を試す
3.無視する
4.正当化と疑問視
5.自己保身
6.音信不通になる
7.そっけなくなる
8.受け入れる

反発する

反発とは、あなたとの関係に変化が生じたとき、人が抵抗の手段として示す典型的な反応です。最初は混乱するかもしれません。でも、相手があなたを尊重してくれさえすれば、こうした変化も受け入れてもらえるようになります。私たちは誰もが成長し、進化するのですから、人との関係だってそうでなければいけません。

反発はいつでもあり得ます。あなたが線引きをしたときでも、あるいは時間が経ってからでも、あなたの境界線を認められないと思う人は反発するのです。

反発は恐れの表れ

反発は、変化と、快適な環境から押し出されることに対する恐れの表れです。「変化」とは悪い意味の言葉ではありませんが、人によっては人間関係が新たなあり方へ変わることを難しいと感じてしまうものです。

キムの例で言うと、もしキムが友達に、「引っ越しの手伝いはできない」と言ったとしたら、友達は理解を示すように一旦は「分かったよ」と答えるでしょう。そして翌日になって「本当に力を貸してくれないの? いつも手伝ってくれるじゃない」と言うのです。

他にもこんな反応が返ってくる可能性があるでしょう。

・「うーん、1人でやれるか分からないんだけどな」
・「それって不公平じゃない?」
・「こっちにも事情はあるんだけど、まあ、あなたを変えようとは思わないよ」

そうした反発に対応するにはどうすればよいでしょうか。

まず、他者が抱く不安について耳を傾けることです。あなたの設けた境界線について、もう一度説明しましょう。

たとえば……

・「知らせてくれてありがとう。でもお願い(境界線)を変える気はないんだ」
・「私の境界線が気に入らないのは分かったよ。でも、私が人付き合いの中で安心感を得るためには必要なんだ。線引きをすると、安心できるんだよ」

限界を試す

幼いうちは自立するためのプロセスの一環としておこなうため、子どもに多い行動ですが、大人も同じ振る舞いをします。一旦はあなたの話を聞き入れますが、どのくらい譲歩してくれるかを試すのです。キムの例で、「引っ越しの手伝いはできないよ」と言ったとすると、友達は「じゃあ来週ならどう?」と返してくる、といった具合です。キムがどのくらい柔軟に考えてくれるか推し量ろうとしているのです。もしもキムが「来週ならいいよ」と返事をしたら、それは彼女の境界線がまだまだ柔軟であることを示す明確なメッセージになります。

そしてさらに、こんなふうに言われるかもしれません。

・「あなたの言い分を聞く必要はないな」
・「あなたが助けてくれるか、もう一度確認させてもらうね」

そのように限界を試された場合、どうしたらよいのでしょうか。気づいた言動について、はっきり言いましょう。たとえば「私の限界を試してるでしょ」というように。試されるとどんな気持ちになるかを伝えるのです。そして「私の境界線を尊重してもらえないと、……と感じるんだ」と、改めて説明します。

境界線について説明すると、反対される可能性も考えられます。相手に満足してもらおうとすると、心地よい境界線を引くことをやめさせられてしまうかもしれません。それでもどうか人に丸め込まれず、譲歩せず、全力であなたの境界線を主張してください。

無視する

あなたの話を聞かなかったふりをして、受動的攻撃の1つとして境界線を無視する人もいます。しかし本来、境界線とは尊重されるべきものです。境界線の要求を無視されると、恨みが募ります。時間が経つにつれ、人間関係は悪化していくでしょう。

たとえば、キムが友達に「引っ越しは手伝えないよ」と言ったのに、2日後に「今週末はいつなら来てくれる?」と言われてしまう、といった具合です。

ここでキムには選択肢がいくつかあります。境界線について「もう一度説明する」か、「流されるままに手伝う」か、「手伝いに行かない」か、です。

きっぱりと伝えるのも手

きっぱりと「一昨日、手伝えないって言ったよね」、と伝える手もあります。もしキムが、自分が引いた境界線について説明し直すのにあまりに臆病だったら、結局手伝ってしまうかもしれませんし、友達もキムの次なる境界線を無視しようとするでしょう。

こんな反応をされる可能性もあります。

・境界線を引かれているにもかかわらず、自分がやりたいように仕かけてくる
・あなたの境界線の意味を誤解したふりをする

そのように無視された場合、どのように対応したらよいでしょうか。まずはもう一度、説明しましょう。境界線の内容を相手の口から復唱してもらうなどして、あなたの意図が伝わっているか確認するのです。そして変化を維持する重要性も訴えます。「これからもこういう線引きをしていきたいの」と。無視されていると気づいたら、すぐに対応してください。でないと、あなたの境界線は消えてしまうでしょう。

正当化と疑問視

あなたが過去に相手の振る舞いを受け入れてしまった経験があると、あなたに詰め寄って自分のおこないを正当化しようとする人もいます。

この場合、キムを例にとると、友達は探るような質問をしてくるわけです。「どうして引っ越しを手伝ってくれないの? 私なら、いつものようにあなたの引っ越しを手伝うのに」と。この手の質問には、思わず言い訳や謝罪をしてしまいそうになり、答えにくいものです。でも、線引きについて謝っても何のメリットもありません。他者にとっては、あなたに線引きを「されない」方が都合がいいのを忘れないでください。

あなた自身に目を向けるのです。言い訳なんて必要ありません。あなたがもうやりたくないことをこなしたとき、なぜ主義に反する行動をしたのかと訊ねられるかもしれません。そんなときは、「ただ気が変わったの」と答えるか、「今は当時の線引きとは違う価値観を持っているの」と答えておけばいいのです。

他に、次のような反応も考えられます。

・「なぜ、あなたのように私にも変わってほしいと求めるの?」
・「今までとやり方を変える意味ってあるの?」

では、あなたのそうした返答に対して、相手が自分を正当化したり、その意見を疑問に思ったりしたら、どうすればよいでしょうか。

簡潔な答えを心がける

まずは、自分の意見を熱心に伝えるのは避けて、簡潔な答えを心がけるのです。たとえば「これが私にとって心地よいやり方なの」とだけ言えば、それで充分でしょう。くどくどと説明しても、議論が堂々巡りになるだけです。

自己保身

これは攻撃されたと感じる人の反応です。

言葉ではっきりと伝えるのを心がければ、相手が自己保身に走る可能性は低くなるでしょう。とはいえ、中にはあなたがどんなに言葉を尽くして自分の期待や欲求について話しても、身構えてしまう人もいます。自己保身的な思考から、自分が責任をとりたくないのであなたに押し付けるのです。
キムの例であれば、友達はこう言うでしょう。

「そんなにしょっちゅう引っ越してるわけじゃないのに。でも、手伝ってくれないならもういいよ」

保身に走りがちな人は、あなたの話を聞きません。あなたの言葉を自己流に解釈して、答えをこしらえます。その答えは、あなたではなく、彼らの側に立ったものです。こういう人は、自分の要求を満たしたいとしか考えていないので、あなたの変化に反発します。しかし、心地よい人間関係とは一方だけが得をする関係ではありません。両者の望みは、等しく尊重されるべきなのです。

自己保身的な反応は、次のようなときにも見られます。

・頼みごとをして、あなたの要求をひるがえす
・自分の行為について説明する
・攻撃された、とあなたを非難する
・過去の振る舞いを引き合いに出して、あなたの要求について口出しする

【自己保身的な人と話すときのコツ】
・相手ではなく、自分の話をする。主語を「私」に
・話し合うときは1つの問題に絞る
・あなたの境界線を話すときに、相手の過去の問題を持ち出さない
・どう「感じる」かを伝える。「あなたが……と、私は……と感じる」というように
・言いたいことは、思った直後か、できるだけ時間を空けずに伝える。数日や数週間、数カ月も問題をくすぶらせない
・相手に合った伝え方を考える。直接話しづらいなら、メールで。もちろん、内容によっては直接話す方がいい場合もある。でも、相手と顔を合わせて一線を引くのが難しそうなら、必要に応じてどんな方法でも伝えるべき

音信不通になる

何の断りもなく交流を断ち切ったり、姿を消してしまったりするのは「ゴースティング(音信不通)」と呼ばれる行為で、境界線に対する不健全な反応です。これも、受動的攻撃の1つと言えます。反対意見を言葉で表明するのではなく、行動でどう感じているかを示しているわけです。あなたの要求を聞いた直後か数日後に起きがちで、たいていはあなたに罰を与えたい意図があります。

メールを読んでいるのに返事をしない

たとえばキムが「今週末は手伝えない」と言ったとします。その後、いくらキムがいつも通りメールをしても、返事が来ない、という具合です。既読がついているので、メールを読んでいるのはキムには分かっています。

ゴースティングはこんな反応で表れがちです。

・メールや電話に応えない
・約束をキャンセルする
・共通の友人とは連絡を取り合っていながら、あなたをのけ者にする

こうしたゴースティングに対応するには、どうしたらよいでしょうか。そんなときには、相手の振る舞いについてあなたが気づいたことを、詳細につづったメールを送りましょう。向こうは動揺していると思われたくありませんから、返信してくる可能性が高いでしょう。

突然連絡を断たれてあなたがどう感じたか、また今後の関係についてどう考えているかを伝えます。もしも返事が来るまで数日かかったら、あなたがどう感じているかをもう一度はっきりと伝えます。返事が来なかったら、それはあなたに対する意思表示ではなかったのだと思いましょう。その状況に対して、彼らなりに解釈した結果なのだと受け止めるのです。

そっけなくなる

これも辛い反応です。受動的攻撃の1つであり、境界線を引こうとするあなたへの報復を意味しています。このタイプの人は、あなたが要求を伝えたあと、あからさまに距離をとってきます。話しかけても、「はい」とか「いいえ」などとそっけない返事しかしません。冷淡な態度をとられるのは寂しいですし、混乱します。そしてまた、存在感が希薄になった気さえします。

キムの友達がこのタイプだとしたら、次のようにされるのではないでしょうか。その週、キムは元々約束していたランチで友達と会いますが、様子がいつもと違います。口数が少なく、上の空という感じです。何とか会話を続けようとしますが、一言程度しか返事をしてくれない、といった調子です。

こんな反応が例に挙げられます。

・何時間も、あるいは何日も話さない
・受動的攻撃の形をとった動揺の表れとして、質問に簡単な返事しかしない

そっけなくされたときの対応は?

では、そんなふうにそっけなくされたら、どのように対応すべきでしょうか。まずはあなたが相手について、気づいた様子を言葉にしましょう。

「動揺しているみたいだね。この間の私の話について、ちょっと話せるかな?」と、今あなたが問題視している内容をはっきりさせてください。なぜそんな態度をとるのか、問いただしましょう。なぜ線引きをするに至ったか、理由を話してもいいかもしれません。たとえば「私はプレッシャーに押しつぶされそうで、これ以上何かを抱え込むのは無理だと思ったの」などと話してみてください。

受け入れる

あなたの境界線の話を聞いて受け入れてくれることが、問題に対してもっともふさわしい反応であり、それは円滑で互いを尊重し合う人間関係を築けている証拠です。こういった間柄なら、キムの友達は「伝えてくれてありがとう」と言うでしょう。そして、キムも友達の手伝いから逃れられます。誰も傷つかず、不当な思いもしません。

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他者との間に境界線を引くことには多くの不安が伴いますが、私の経験上、ほとんどの人が快く受け入れてくれています。もしも相手の反応が気分を害するものだったら、そもそももっと早くに線引きをするべきだったのでしょうし、今からでもその人との関係を見直すべきでしょう。あなたの望みを充分に満たしてもらえる関係だったのかを考え直すときなのです。

これまで、問題をあまりにも長く先延ばしにしてきた人は多いのではないでしょうか。もしかしたら、あなたにとっての問題は、頼みを引き受けておきながら、「なぜ自分に頼むんだ」などと他人を恨んでいることかもしれません。あるいは、あなたが聞きたくない話を人がしてくることかもしれません。

境界線はトラブルの解決策になる

境界線は、人間関係における大半のトラブルの解決策になります。けれども、両者がそれぞれの立場からその設定に関わり、尊重する必要があります。

【不健全な人間関係のサイン】
・話を聞いてくれないので、あなたの要求を伝えられない
・もっともな頼みをしても、応じてもらえない
・精神的、肉体的、あるいは性的な虐待がある
・やり取りをしたあとは、たいてい悲しくなるか、怒りを覚えるか、疲弊するか、失望する
・一方的な関係で、あなたは与え、相手は受け取るだけ
・互いを信頼していない
・不適切な言動を改めるように言っても拒否される
・何らかの依存症を抱えており、あなたにも害が及んでいる

一般的に境界線が必要とされる場面

境界線の問題を認識し、要求を正しく伝え、行動で示す方法を学んだら、次は人生のさまざまな場面において実行に移していきましょう。

(ネドラ・グローバー・タワブ:セラピスト)

ネドラ・グローバー・タワブ

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