コロナかで挙式が延期になっていた 1組のカップルが 1年越しの披露宴を行いました。その会場には月日が経つごとに美しさが増すという ある花が使われていました。
■結婚式を彩る装花「Kezuriフラワー」って何?
「6月に結婚する花嫁は幸せになれる」といわれるジューンブライド。この6月、1組の結婚式が行われました。

まさにジューンブライド
新郎 新婦 吉岡大輝さん 優華さん
「今年こそは何としても挙げるぞという 気合をいれて臨んだ式でした」
本来は1年前に式を挙げるはずだった 2人。しかし、新型コロナの影響で延期になっていました。
1年越しということもあって思いが溢れます。そんなお祝いの空間を演出する淡い色をした装花(そうか)。実はこの花も 1年間待ち続けていました。

結婚式の1週間前、新郎新婦は熊本県益城町(ましきまち)のフラワースクールを訪れました。受け取ったのは、注文していた装花です。

happy flower フラワーデザイナー 松下恵美子さん
「この商品は『Kezuri(けずり)フラワー』というお花です」
「Kezuriフラワー」と名付けられた淡い色の花、一体どういうものなのでしょうか?
■薄さ0.025ミリ 日本トップクラスの技が生み出す〇〇が材料
後日、フラワーデザイナーの松下さんが材料の仕入れ先に向かうというので同行することに。向かった先は大正5年創業の村田工務店の作業所。松下さんを待っていたのは、大工歴25年の 飯干(いいぼし)棟梁です。

棟梁(とうりょう)=現場を束ねる偉い人です
松下さん
「さっそく始めましょうか!」
棟梁の手には大工道具の鉋(カンナ)が!そして、おもむろに材木を削り始めました。

松下さん
「こちらが私たちのKezuriフラワーの材料になります」
Kezuriフラワーとはカンナで削った、いわゆる「鉋屑(かんなくず)」から作った花のこと。ただ、使う材木は国産ヒノキの中から選び抜いた最高級の木曽ヒノキ。単なる「鉋屑」ではないんです。
さらにすごいのがこちら。とても薄いと思いませんか?

これが鉋屑とは思えない
飯干棟梁は、極限まで薄い鉋屑を出すことを追求する「削ろう会」に所属。およそ300人が出場した全国大会で3位という腕前の持ち主です。
村田工務店 村田 英樹 社長
「削りの名人ですよね、間違いなく日本トップクラスです」

「削りの名人」はどのくらいすごいのか。特殊な機械で測ってみました。
まずは参考のため身近なティッシュの厚さを計測。

0.088ミリ、88ミクロン。だいたい90ミクロンぐらいです。
続いて、飯干 棟梁が削った鉋屑の厚さをはかってみると…

ティッシュよりも薄いとは!
0.007ミリ、7ミクロンです。これはティッシュのおよそ10分の1以下。まさに日本トップレベルの匠の技です。ところが…
飯干 絢介 棟梁
「これだと花が作れないので、ある程度扱える厚みに調整してから削ります」
Kezuriフラワー専用の材料は、あえてちょっと厚めに。匠はミクロン単位で調整が可能。厚さ0.025ミリに削りました。

■棟梁の静かなる熱意が Kezuriフラワーを生んだ
このカンナで仕上げられた材木。木が持つ本来の油分が浮き立ち、艶が出て長持ちします。そんな技術の素晴らしさを花で表現したい。そう考えた飯干さんは、その思いを具現化してくれると期待し松下さんに依頼しました。
飯干 棟梁
「仕事をしているだけでは どうしても手刻みとか鉋仕上げとか伝わりにくいが、木を削ってできた花だといろんな人に興味を持っていただけるかなと思って」
飯干 棟梁の静かなる熱意に応えた松下さんは、2021年にヒノキの鉋屑を使った花づくりを始めました。
松下さん
「むかし美容師をやっていて、成人式の着付け時とかにバラの帯を作ったことがあった。それを思い出して試行錯誤してやってみたらできた感じ」

棟梁が削ったヒノキの長さは2メートル。破れないように丁寧に折り曲げて立体的な花に仕上げます。
松下さん
「年数がたっていくと飴色になっていく。それも楽しめるポイントです」
2人がコラボして生み出したKezuriフラワーはバラだけでなくひまわりなど、さまざまな花があります。

1年越しの結婚式を行った吉岡さん夫婦。2人とも建築の仕事に縁があったことで、式場を彩る装花にKezuriフラワーを選びました。
参列者
「最初木とは思わなくて すごいと思いました」
「めっちゃかわいかったです」
「まさかカンナ削りとは思いませんでした」
新婦 優華さん
「紹介して頂いた時にもうこれを使うしかないと思ったので、使えてとても幸せです」

末永くお幸せに!