通わない歯科矯正に希望者3万人 「怪しさ」を地道に払拭

通わない歯科矯正に希望者3万人 「怪しさ」を地道に払拭

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2022/11/26
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「通わないマウスピース歯科矯正」のOh my teeth(オーマイティース)が成長している。

これまでに約1万人がサービスを利用し、体験希望者は3万人(10月31日時点)を突破。歯型のスキャンやユーザーからのオンライン相談に対応するOh my teeth導入クリニックは、これまで表参道と大阪心斎橋だけだったが、6月に有楽町、7月に池袋、10月に新宿へと拡大した。

6月には、通院不要の、自宅でマウスピース矯正ができる仕組みで特許を取得。本田圭佑氏もOh my teethを利用し「歯並びがきれいになったら出資する」と約束をしているという。

実はサービスを開始した2019年当時は、世の中に多数出回るマウスピース矯正に対する業界からの厳しい意見もあった。日本矯正歯科学会も、同年に注意喚起文を公表していた。

ではOh my teethはどのように、市場からの信頼を醸成してきたのか。

「誤解が多かった」
Oh my teethでは、まず提携する歯科医院で3Dスキャンによる歯型の抽出をし、続いて口内のレントゲンを撮影する。利用者はその後、LINEに届いた矯正イメージを承認するとオーダーメードのマウスピースキットが直送される。

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提供=Oh my teeth

前歯(上下合わせ12本)の矯正に特化しており、治療期間は約3カ月。料金は、一般的なワイヤーを使った治療の相場が約100万円なのに対し、Oh my teethは33万円と割安だ。初診時にマウスピース治療が難しい場合は、提携医院に紹介する仕組みもある。

消費者からは「通わずできる」ことやサポート体制が評価されたが、業界からの反応は違ったと、同社のCEO西野誠(にしの・まこと)は振り返る。

「誤解が多かったです。『歯医者に行かず、検査項目が不十分な矯正』『(前歯矯正に特化しているが)奥歯から直さないと矯正じゃない』といった声が歯科医からありました」

そこで西野は、信頼を勝ち取るために情報発信を強化した。

自社の「歯科矯正ブログ」で、歯科医師の監修のもと294の記事を公開してきた。内容はマウスピース矯正や部分矯正のメリットやデメリット、歯科の選び方など多岐にわたる。Oh my teeth を使った100を超える症例のビフォーアフターも掲載し、本当に治るのか、という「怪しさ」払拭に努めた。

また、創業初期から、治療可否の判断方法や医療チーム体制など、矯正への姿勢を明文化した「メディカルポリシー」を公表している。

この取り組みは功を奏す。日本歯科新聞が発行する「アポロニア21」の2022年10月号で、8ページにわたる特集が組まれたのだ。

「雑誌の編集長も、マウスピース矯正には懐疑的だったそうです。ただ、症例の公開やメディカルポリシーをみて、取材を決めてくれました。広告記事ではないですよ(笑)。正しい治療を行っていることをきちんと伝えれば、業界からの理解も進むんだと自信を得ました」

その発信は、提携医院の拡大にも繋がった。さらに、Oh my teethが矯正利用ユーザーに提供している「24時間のLINE相談」に対応できる医師も獲得できた。

「サポート体制」は同社の強みで、LINEを使い、ユーザーに矯正器具装着のリマインドや進捗報告を送っている。

同社調べでは「通常の矯正では経験者の約3割が途中で治療を断念した」というが、Oh my teethのユーザーの継続率は97%を誇る。

権限委譲に悩んだ
業界からの信頼獲得、ユーザー数の拡大と着々と実績を積み上げているが、その裏では、急成長スタートアップで起こりがちな問題も起きていた。

「僕はエンジニア出身ですが、創業から2年ほどは営業やユーザーへのサービス説明などを自分でやっていました。 ユーザーが増えるなかで社員の採用もしたのですが、それでも一人で仕事を抱えてしまった。『自分で見ないと気が済まない』という思いが強くて、人に任せることができず、会議も全て出ていました」

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しかし、初診時間の短縮などシステムの改修にも挑んでいたため、キャパシティにはすぐに限界がきた。そして西野は権限委譲に踏み切る。

スタートアップ界隈で権限委譲といえば、SmartHRの名前が挙がるが、西野は同社元CEOの宮田昇始氏のやり方を参考にしたという。

「宮田さんは、僕が2020年に参加していたOpen Network Labというスタートアップのアクセラレータープログラムの先輩です。当時のラボのメンターに、権限移譲に悩んでいることを伝えると、宮田さんのブログ記事を渡されました。そこから得た学びは『会議に出ないこと』でした」

西野は、会議を抜けるために、一つの基準を設けた。企業文化でもある「スクラム」がチームに浸透するまでは現場に居続けるようにしたのだ。スクラムとは、少人数のチームを複数作り、1週間などの短期間で計画と実装を繰り返し、サービスの質を高めていく組織運営を指す。

2021年の夏には各チームから離れ、今は会社を俯瞰的に見られるようになったという。その後はCOOやエンジニアのリーダーなどが加入し、磐石な体制を構築した。

「会議に出ることをやめ、各チームに責任を持たせる。こうしなければ、店舗のオペレーションやサービスの品質向上はできなかったと思います」

2020年4月に行った取材で西野は、パーソナライズによるOh my teethの多様な展開を視野に入れて、「口腔内データを最も保有しているプレイヤーになっていく」と野望を語っていた。

実際、今年6月には医療機関と協力し、3Dスキャナーで虫歯有無や歯石の沈着具合を調べる無料検診を始め、7月からはカメラで撮影した歯並び写真をもとに、オススメの矯正方法や費用、期間などを返信するサービスを始めている。データを活用した次なる歯科体験の創出にも期待したい。

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