自己肯定感を得るヒント「どんな痛みを避けてきたのか」を自覚する

自己肯定感を得るヒント「どんな痛みを避けてきたのか」を自覚する

  • WANI BOOKS NewsCrunch
  • 更新日:2020/11/22
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仕事における困難、将来に対する不安、漠然とした生きづらさ。そんな悩みを抱えている人は多いことでしょう。1000人を超える個人セッションから見出した、人間の内面世界を紐解く技術を体系化した由佐美加子氏と、慶應義塾大学大学院で無意識や幸福学の研究を重ねる前野隆司教授による、すべての人が持つ4つの「メンタルモデル」についての対話を通して、無意識のメカニズムから解放され、本物の自己肯定感を得るヒントを探ります。

※本記事は、前野隆司+由佐美加子:著『無意識がわかれば人生が変わる -「現実」は4つのメンタルモデルからつくり出される-』(ワニ・プラス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

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▲前野隆司教授と由佐美加子氏

人間を動かしている無意識のシステム「生存適合OS」

前野隆司(以下、前野) さっそくですけど「メンタルモデル」は、もともと認知心理学の概念ですよね。由佐さんはそれを4つに類型化したわけですが、ここを研究している人は他にいたんですか?

由佐美加子(以下、由佐) おそらくいないと思います。認知心理学でいうメンタルモデルは、簡単にいえば「人間は思い込み(認知)から世界を見ているよね」という話です。

前野 そうでしたね。

由佐 普通は、その定義はかなり広い。でも、わたしは「人間の根幹にある無自覚な信念」という、かなり狭い意味でメンタルモデルという言葉をつかっています。人間には、行動を突き動かしている無意識の自動化されたシステムがあって、わたしはそれを「生存適合OS」と呼んでいます。

このOS(オペレーションシステム)の目的は、自分の痛みを避けて生きること。この目的に沿って、この社会を生き抜けるよう最適化されたシステムがあって、わたしたちの脳ではデフォルトでこのシステムが勝手にまわっています。このシステムに無自覚につかわれているうちは、無自覚に規定された行動しかとれなくなるんです。

前野 はい。

由佐 わたしがやっているのは、その自動化されたシステムから人間を解放する作業です。誰もが生存適合OSに支配された仮想世界のなかで生きている。そこから人間を外に出すためには「自分はそうしたシステムのなかで知らないうちに自動的に駆動している」ことを各人が自覚するしかありません。

前野 「脳の働きによってつくられた現実」と「本当の世界」が分離していることに気づいてもらうわけですね。

4種類のメンタルモデル

由佐 わたしが、ある外資系企業の日本支社に勤務していた当時、全国で300人くらいの社員がいました。人事担当として毎日、彼らからいろいろな相談を受けます。ただ聞いていてもつまらないので、概念として知っていたメンタルモデルに注目して、話を聞きながらホワイトボードに構造的に整理する、ということを始めました。

その作業を続けていたあるとき、人々の奥底にある痛みからつくり出された信念(=メンタルモデル)が、4種類に集約できることが見えてきたんです。それぞれのモデルの「痛み・繰り返される不本意な現実」は下記のようなものです。

●価値なしモデル=(こんなにやっても)「やっぱり自分には価値がない」
何か価値を出さないと自分の価値は認めてもらえない。

●愛なしモデル=(こんなにやっても)「やっぱり自分は愛されない」
自分のありのままでは愛してもらえない。

●ひとりぼっちモデル=「しょせん自分はひとりぼっちだ」
人が去っていく、離れていく、つながりが絶たれる分離の痛み。

●欠陥欠損モデル=(こんなにやっても)「やっぱり自分はダメだ」
自分には決して埋まらない決定的な欠陥がある。

メンタルモデルから理想の組織構成がみえてくる

由佐 4つのメンタルモデルの特性を知ると、組織における適材適所がありそうだなと感じるんです。

前野 それは興味深いですね。どんなイメージですか?

由佐 ざっくりとしたイメージでいうと、ひとりぼっちモデルがビジョンを掲げて、太陽のような場所にいる。木の幹は愛なしモデルの人たちで、関係性をつくっています。その木が空に向かって伸びていく力は、価値なしモデルの人たちが強い。「こっちに行くぞ」と決まれば、そちらに向かっていくパワーになる。ただし彼らにベクトルは設定できないから、太陽(ひとりぼっち)が必要。そして、その土台となる土が欠陥欠損モデルの人たちです。

わたしは、これから価値なしモデルの人たちが淘汰されて、欠陥欠損モデルが台頭してくるんじゃないかと思っているんです。そういう兆候が出ていると感じています。

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▲メンタルモデルから理想の組織構成がみえてくる イメージ:PIXTA

前野 一昔前の企業では、価値なしモデルが主流だったのではないでしょうか?

由佐 そうですね。価値なしは「他の人に対して価値を生み出さなければ、自分がここにいる意味はない」と思い込んでいるメンタルモデルです。これまでの企業は、期待に応えたら評価し、必要な存在だと認める。応えられない人は外す、という人のつかい方をしてきました。

要は「自分をなくしてでも評価されるように期待に応える」という仕組みで、価値なしモデルの人たちはこのシステムに率先して応えてしまいます。すると、自分でも「やりたいのか」「やりたくないのか」が麻痺してわからなくなっていくんです。

前野 あー、なるほど。高度成長期やバブル時代の企業だと、そのタイプはバッチリハマりますね。出世しやすいと思います。

由佐 ええ。企業において上に行きやすかった。でも、このピラミッドを登るためには、常に誰かからゴールを与えられなくてはいけません。だから40〜50代くらいになって先が見えた瞬間、どうしたらいいか分からなくなる。そういう価値なしモデルの人たちが、大勢苦しんでいます。

大企業は全体の7割くらいが「価値なしモデル」

前野 時代が大きく変わったからですね。

由佐 個人の主体性が問われるようになると、価値なしモデルはつらい。このタイプの人は、多様性のマネジメントが苦手だからです。自分がやってきたのと同じように、他人に対しても「価値があるか」「価値がないか」で判別してしまう。当然のように「価値を出すこと」を強く求める。

前野 4つの類型の比率はどうなっているんでしょう。

由佐 世代や組織で大きく違いますね。たとえば大企業は全体の7割くらいが価値なしモデルで占められているというのが、わたしの実感です。イノベーター的な立ち位置にひとりぼっちモデルの人が数人いて、主戦力は価値なし、バックオフィスを支えているのが、愛なしと欠陥欠損という感じでしょうか。

前野 他の組織はどうですか。

由佐 福祉関連や病院のような組織になると、愛なしモデルと欠陥欠損モデルが圧倒的に多くなります。愛なしは他人に奉仕・貢献する人たちなので、医療とか教育とか人の癒しとか育成など、人に愛をかける仕事に向いていると思います。

前野 自己犠牲をいとわないからですね。その反面、ときに共依存に陥ることもありそう。

由佐 そうなることもありますね。自分はどんなに疲れ果てていても「人のためにがんばろう」となってしまうのが、愛なしモデルの衝動なので。

痛みの裏側には“美しいもの”が隠れている

由佐 わたしがメンタルモデルを本当におもしろいと感じ始めたのは「4つの類型の裏側はライフミッションだ」と思えるようになってからなんです。最初は、人間の悩みとなる、このなんともならない現実をつくり出す根っこにある「痛み」に注目していました。そこから「なぜこの4つのモデルが人にとって痛みなのか」を考えたんです。

なぜ人間は、無意識に精巧なOSをつくり出し、人生のすべてをつかってまで、この痛みを避けようとするのか。それは「この4つの欠乏感の奥には本当の世界があるはずだ、それをつくり出したい」という願いがあるからではないか、と思うようになったんです。

愛なしモデルは、無条件の愛を分かち合いたい。欠陥欠損モデルは、すべての多様性がそのまま受け入れられる安心・安全な世界をつくりたい。ひとりぼっちモデルは、大いなる生命につながって人間が生きるというワンネスを取り戻したい。価値なしモデルは、行動成果ではなく存在そのものに価値があるというところから生きていたい。

これは、わたしたち人間が「この地球にどんな世界を本当は見たいのか」をあらわすメッセージのようなものだ、と思うんです。痛みの裏側に、こんなに美しいものがあるなんて、すごく秀逸でしょう?

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▲痛みの裏側には“美しいもの”が隠れている イメージ:PIXTA

前野 4つのモデルの人たちがそれぞれ関門を経て、無意識のシステムを統合し、お互いに力を合わせれば、本当に世界は良くなる。

由佐 この社会で生きていると、どうでもいいことに費やされることも多い。痛みを感じること、つらいこともたくさんある。でも、この世界において本当にやりたいことは、その痛みの裏側にある。そう見定められたら、痛みへの向き合い方も、これからの生き方も変わるんじゃないでしょうか。

「ああ、だから、わたしはこれまで痛みを抱えて生きてきたんだ」と理解できれば、過去の記憶も癒やされますし、人生の捉え方が変わる。自分の代では終わらないスケールの大きなミッションを担っている感覚を持てれば、老いにも向き合えますよね。

前野 隆司

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