軍隊のないコスタリカに学ぶ「平和国家のつくり方」 長崎で映画上映

軍隊のないコスタリカに学ぶ「平和国家のつくり方」 長崎で映画上映

  • 毎日新聞
  • 更新日:2022/11/25
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コスタリカの首都サンホセで行われたパレードで練り歩く子どもたち。国連や世界各国の旗を持っており、国際主義を重んじる姿勢がにじむ=ユナイテッドピープル提供

サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会1次リーグで日本代表が27日に対戦するコスタリカ。軍隊の不保持を憲法に明記し、実際に軍隊をなくして平和を保ってきた歴史は、同様の平和憲法を持つ日本とは対照的だ。そんなコスタリカの歩みをたどるドキュメンタリー映画が同日、長崎県五島市で上映される。主催者や配給元は「戦争や平和を考える機会に」と願う。

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上映会は27日午後4時半から五島市の福江島にあるパブ「ザ・ポートベロー」で開かれ、上映後の午後7時からは日本とコスタリカの試合のパブリックビューイング(PV)に移る。

企画したのは、福江島に住む「コガントコシネマ」代表の藤田佳子さん(35)。映画館のない島で、住民が映画の楽しみを共有できる場を作ろうと2019年から定期上映会を開いてきた。今回はPVの前に上映するコスタリカ関連の映画を探したところ、「コスタリカの奇跡~積極的平和国家のつくり方」(90分)に行き着いた。

この作品は、16年に米国の2人の社会学者が監督を務めて製作された。元大統領や学者、市民らのインタビューに歴史的な映像を織り交ぜ、第二次世界大戦後のコスタリカの歩みを描く。

1948年に軍隊の廃止を宣言し、後に大統領になったホセ・フィゲレスは映画の中で「わが国は侵略を拒む武力を持ちませんが、道徳的な力は原子爆弾より強力です」と力説する。49年から憲法で常備軍を禁止。軍事予算をゼロにした分は、教育や医療に振り向けられた。

さらにコスタリカは冷戦下の83年に積極的永世非武装中立を宣言。近隣国の紛争終結を仲介して87年にノーベル平和賞を受賞したオスカル・アリアス元大統領も映画の中で「無防備こそ最大の防御です」と強調する。豊かな生物多様性を基盤にしたエコツーリズムが盛んで、脱炭素対策に力を入れる環境先進国でもある。

藤田さんは長崎県の本土側にある長与町出身で、大学進学で上京後、福江島に移り住んだ。長崎に原爆が落とされた8月9日に平和学習を受けたり、祖父母から戦争体験を聞いたりしてきた。福江島は、東シナ海に面する国境の島でもある。

藤田さんは「多くの人がいろんな面から戦争や平和について考える機会を増やすことが大事。気軽に見に来てもらえたらうれしいです」と語る。上映会は定員20人で、料金1000円に1オーダーが必要となる。

「コスタリカの奇跡」を配給する「ユナイテッドピープル」(福岡県糸島市)代表の関根健次さん(46)はコスタリカの平和のありようをこの目で確かめようと、16年から17年にかけて家族4人でコスタリカで暮らした。

さまざまな年代の人々に聞き取りをしたところ、誰からも「もう二度と軍隊はいらない」という答えが返ってきたという。

「コスタリカは、戦争をなくし、人が人を殺さない世界をつくるという人類の究極の理想の成功例。日本を含めた他の国々も続いてほしい」と願い、帰国後は「コスタリカの奇跡」の配給に取り組んできた。

一方の日本は敗戦後、コスタリカと同様に憲法9条で戦力の不保持をうたったものの、米軍基地が残り、54年に自衛隊が発足。現在、ロシアによるウクライナ侵攻、中国や北朝鮮の圧迫を受け、政府は防衛力の抜本的な強化を検討している。

こうした現状について、関根さんは「軍事費を増やすことで、逆に教育や社会保障のお金が失われてしまうのではないか。かつて際限なく戦争を拡大させる体験をした日本が、軍拡の方向に進んでいいのか国民全体が踏ん張って考える必要がある」と懸念を示す。

移民の受け入れや核兵器禁止などで国際貢献を続けるコスタリカを引き合いに、「日本は海外に平和を輸出する国になってほしい」と話している。

ユナイテッドピープルが運営するサイト「cinemo(シネモ)」では随時、「コスタリカの奇跡」などの作品の自主上映会の開き方や教材の活用法を紹介している。【木村健二】

毎日新聞

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