中国で取材中に拘束も経験の水野梓氏 現役報道記者が小説書く理由/連載2

中国で取材中に拘束も経験の水野梓氏 現役報道記者が小説書く理由/連載2

  • 日刊スポーツ
  • 更新日:2021/05/03
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ペンネーム水野梓で小説「蝶の眠る場所」を執筆し作家デビューした日本テレビ鈴木あづさキャスター(撮影・江口和貴)

BS日本テレ「深層NEWS」(月~金曜午後10時)の隔週金曜を担当する鈴木あづさキャスター(46)が、水野梓の筆名で社会派ミステリー小説「蝶の眠る場所」で小説家デビューした。日本テレビ報道局経済部のデスクとして財務省と内閣府を担当する現役の報道記者が、なぜ小説という手法をとったのかを聞いてみた。

「蝶の-」は、テレビ局のドキュメンタリー番組の女性ディレクターが、すでに犯人に死刑が執行されている殺人事件を、冤罪(えんざい)だと証明していく物語。いじめ、犯罪者の家族の苦悩、LGBT等も描かれている。

テレビ局の報道記者・榊美貴は、ひとり息子の2歳の誕生日を祝う最中に、呼び出され10歳の少年の転落事件を取材に行く。「いじめによる自殺」を疑い向かった病院で出会った少年の母・結子は「殺された」とつぶやく。結子の養父は約20年前に起きた母子殺害事件の犯人として逮捕され、無実を訴え続けたもの死刑になっていた。部下のミスの責任を負う形で報道局デスクから、低視聴率の深夜ドキュメント番組に異動した美貴は、冤罪に向き合い真相を明らかにすることを決意する。

水野さんは、報道の現場で真実を追い求める中で、小説でこそ表現できるものがあると思った。

「作中にも書いたんですが、真実というのは実は人が見たくないものだったり、直視するの避けてきた不都合なものだったりする。だからこそフィクション、物語が必要だと思う。事実だけではあぶり出せない、目に見えない人の無意識の中にある真実、それを書くのが物語なのかなと思っています」

07~09年に中国特派員を務めた。

「衝撃を受けたのが08年の四川大地震です。地方政府の役人がお金を抜くために校舎を“おから工事”で立てていた。コンクリートに砂を混ぜていて倒壊した。その現場に行ったら、下に百数十人の子供が生き埋めになっているのに、中国当局がそこに消毒液を散布しちゃうんですよ。疫病がはやらないように。子供たちの遺族を取材しようとして拘束されてしまったんですけど、そういう不条理、世の中のゆがみみたいなものに対する怒りが書く原動力になっているのかなという気がしています。2年間で7回拘束されました」

中国の武装警察に拘束されたこともある。

「四川大地震の時はホテルに軟禁でしたけど、武装警察に捕まった時は、鉄格子の部屋に入れられて通訳が来るまで待てと3、4時間。その時は天安門広場でデジカメを回していて、羽交い締めにされてカメラをガシャンと壊されました。だからこそ、今、『深層NEWS』のキャスターをやっていて、どうしても取り上げたくなるのがウイグル問題だったり、香港の問題だったり、ミャンマーだったりします」

コロナ禍の1年間。感じるのは弱い立場にあるものへの思いだ。

「私は就職氷河期、ロスジェネ世代だったので正社員になれなかった人がたくさんいた。今、非正規とか、ひとり親とか、社会の弱いところにコロナ禍が襲い掛かっている。そういう不条理だったり、声なき声を伝えるっていうことをしなきゃと思ってやっています。経済的に困窮している学生、コロナ禍によって夢を奪われたり、生活が苦しくなっている人たちが、私の今のテーマです。報道をやっていると怒りを感じる場面がたくさんあるんです。ルッキズムという外見による差別など。財務省で森友事件を取材した時は、日本は同調圧力が強い国だと実感しました。コロナ禍においても自粛警察が出てきたり、同調圧力が強い。もっと多様性が担保されないと社会はいけないんじゃないか。小説は99匹の白い羊よりも、1匹の黒い羊に向けて書きたい。孤独や、世界に対して違和感を感じている人に届くメッセージを送り続けたいなと思っています」

(終わり)

◆水野梓(みずの・あづさ)1974年(昭49)8月15日、東京都出身。本名鈴木あづさ。早大在学中に米国オレゴン大ジャーナリズム学部に留学して卒業。帰国後、99年に早大文学部卒、日本テレビ入社。社会部、中国総局特派員、国際部デスク、ドキュメンタリー番組のディレクター、プロデューサーなどを経て、現在は経済部デスク。

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