長野県中野市で起きた発砲立てこもり事件は、発生から12時間後の26日午前4時半頃、県警が自宅から出てきた青木政憲容疑者(31)を確保し、警察官1人に対する殺人容疑で逮捕したことで大きく動いた。4人の命が奪われた今回の事件。現場周辺は避難区域が設けられ、住民は学校に避難して不安な一夜を過ごした。

中野署に入る青木政憲容疑者(26日午前4時54分、長野県中野市で)=青木瞭撮影
空が明るくなり始めた26日午前3時半頃、上空を夜通し飛んでいた県警ヘリとみられる機体が高度を下げると、地上との無線交信をするスピーカーから「男を確認」との声が聞こえた。
午前4時過ぎ、自宅周辺の捜査車両の数が増え、緊迫感が高まった。ヘルメットや防弾チョッキを身につけた捜査員が、車両のドアに身を隠しながら様子をうかがう。午前4時37分、青木容疑者の身柄が確保された。銃声や大きな物音はなく、捜査員が自宅周辺を慌ただしく動き回っていた。
事件が起きたのは25日午後4時25分頃。近くの畑で村上幸枝さん(66)がサバイバルナイフとみられる刃物で刺殺され、中野署地域課の警部補・玉井良樹さん(46)と巡査部長・池内卓夫さん(61)も発砲を受けて死亡した。26日朝に青木容疑者が確保された直後に自宅周辺で竹内靖子さん(70)が倒れているのが見つかり、その場で死亡が確認された。
近くに住む男性(60)は、猟銃を持って自宅を何度も出入りする青木容疑者を見た。警察官が「銃を下ろして」と呼びかけても応じなかった。男性は青木容疑者について「大人になるにつれて話さなくなった印象。会ってもあいさつせず、地区の行事に参加もしなかった」と話した。
中野市立中野平中学校の体育館には、事件現場の近くに住む39世帯88人が避難。住民らは容疑者確保を受け、26日午前7時頃から疲れた様子で帰途に就いた。
妻と父親と避難した男性会社員(63)は「やっと家に帰れる」と安堵(あんど)の表情を見せた。別の男性会社員(49)は夜勤を終えて帰宅しようとしたら自宅に帰れなくなり、避難所で朝を待った。「中学生の子どももいるので事件にぞっとしたが、とりあえず安心だ」と話した。
現場近くの市立平野小学校では26日朝、児童が保護者に付き添われて登校した。同校によると、校長が全校集会で事件について話し、不安があれば大人に相談するよう呼びかけた。下校時は、地区ごとに教職員が見守り集団下校させるという。
2年生の娘を送ってきた女性(30)は、25日夜は隣町の実家に避難したという。「娘が怖いと言って泣いていた。早く捕まってほしいと思っていたのでよかった」と話した。2年生男児の父親(47)は「一日でも早く落ち着いた普通の生活に戻れれば」と願っていた。