オンライン告白、バーチャル同棲、会った当日プロポーズ!?  コロナで変わった「婚活」現場のリアル

オンライン告白、バーチャル同棲、会った当日プロポーズ!? コロナで変わった「婚活」現場のリアル

  • 文春オンライン
  • 更新日:2021/04/07

「『欠陥人間』と否定されるような気持ち」「傷つかないで済む」 “結婚相手”を“親”に任せる女性の本音とはから続く

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生涯未婚率が増加の一途をたどる日本社会。直近の国政調査では18~34歳で交際相手がいない男性は約7割、女性は約6割という結果が出ている。現代は簡単に結婚することができない「婚難」の時代といっても過言ではないだろう。さらに、新型コロナウイルスの影響もあり、新たな出会いに期待するのも難しいのが現状だ。そんな中、オンラインに婚活の活路を求める男女も少なくない。

ここでは、共同通信社に所属する筋野茜氏、尾原佐和子氏、井上詞子氏ら3名の女性記者が現代人のリアルな結婚観に迫った『ルポ 婚難の時代 悩む親、母になりたい娘、夢見るシニア』(光文社)を引用。Zoomを活用したユニークなイベントを次々と企画する婚活支援サービス「LMO」(高田康太社長)などの取材を通し、オンライン婚活の実態を紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

◆◆◆

オンライン→会ったその日にプロポーズ

取材が一段落ついた6月中旬、高田さんから、「熊本と東京で成婚が決まったカップルがいる」と連絡がきた。聞けば、告白も交際もオンラインだけだという。今までいろいろなカップルの取材をしてきたが、聞いたことのない展開でとてもわくわくした。

7月に入り、二人へオンラインで取材をすることができた。熊本県に住む紀徳さん(31歳)と東京都に住む綾子さん(43歳)の夫婦で、6月中に入籍していた。

二人は2020年4月26日にLMOが主催したオンラインの婚活パーティーで出会った。紀徳さんはコロナが流行し始めた頃から婚活を始め、綾子さんは、

「コロナで友達にも会えないし、どこにも出かけられないので、婚活というより誰かと話したくて参加した」

と振り返る。そのときは、9人が参加したものの二人の関係は、特に進展しなかった。

5月20日のパーティーで再会したとき、運命が動き出す。

全国転勤があるホテルに勤務している紀徳さんは、綾子さんが「結婚したらどこに住んでもいいです」と気負うことなく話す姿に感動した。綾子さんも、以前話したときよりも話し上手になった紀徳さんの向上心に惹かれるようになった。2日後にLMOが仲介したオンラインでの一対一のお見合いに参加し、紀徳さんが「交際しませんか」と告白して交際がスタートした。

もともと熊本と東京で距離がある上に、コロナ禍で会うことはかなわない。二人は毎日ビデオ通話で、お互いの過去や年の差、仕事のこと、結婚後の夫婦像などを率直に話し合った。

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写真はイメージ ©iStock.com

料理や入浴で席を立つときも、通話をつなぎっぱなしにして、すっぴんやパジャマ姿まで見せるなど、できるだけ生活感を共有するようにした。私はその話を聞いて思わず「すごいですね!」と声を上げた。つきあい始めの段階で、化粧をする前の無防備な顔を相手に見せるのは勇気がある、と思ったからだ。

すると綾子さんは、

「会って時間を無駄にしたくなかったので。オンラインだからこそ、冷静にお互いのことを知ることができた。だらだらと会っていたら、逆にうまくいかなかったかも」

と説明してくれた。紀徳さんも「すっぴんも気にならなかったし、むしろ素の姿を見せてくれてうれしかった」という。

そして、緊急事態宣言が明けた6月19日、ついに二人は熊本で初めて会うことになった。

私は綾子さんに「会うのに迷いや不安はありませんでしたか」と質問した。綾子さんは、

「私は怖くなかったけれど、仲のいい友達にも『怖くない?』『その男は実在するの?』と心配されましたよ」

と笑った。その友達は、綾子さんの飛行機の便を聞き、「熊本に着いたら連絡してね」と念を押したそうだ。綾子さんが物騒な事件に巻き込まれることを心配していたのだろう。杞憂だったとしても、そうやって親身になってくれる友達がいるのは素敵なことだ。

準備されていたサプライズプロポーズ

無事にデートにこぎ着けた二人。ずっとビデオ通話をしていたこともあり、お互いずっと一緒にいたような居心地のよさを感じた。すると、紀徳さんは「近くで高田さんがイベントをやっているから会いに行こう」と誘い、熊本市内の結婚式場に向かった。綾子さんはオンラインのパーティーやお見合いの席で何度も「会っていた」高田さんとの初対面を喜んだ。

実はこの日、紀徳さんはサプライズでのプロポーズを企画していた。

「オンラインでやりとりをする中で、綾子さんには負の部分をさらけ出すことができた。この人しかいないと思ったんです」

高田さんとLMOのスタッフはサプライズの協力者として福岡から熊本まで駆けつけていた。綾子さんが高田さんらに促されてチャペルに入ると、トイレに行っているはずの紀徳さんの姿が。そばに近づくと、紀徳さんは緊張した様子で「あなたと一緒にいたい」などと用意していた手紙を読み上げ、指輪を差し出して求婚した。

「まさか会ったその日にプロポーズなんて予想もしていなかった」という綾子さんも、迷うことなくその場で受け入れた。その様子はこれまでオンラインパーティーに参加した仲間たちに中継され、二人は大きな祝福を受けた。

翌日、二人は高田さんらが見守る中、熊本市の区役所に婚姻届を提出。正式に夫婦になった。予期せぬプロポーズだったため、綾子さんは急きょ父親に「結婚しようと思うんだ」と電話を入れた。綾子さんの父親は驚いた様子を見せながらも、「二人で考えて決めたことならいいんじゃないか」と賛成してくれた。

取材中、私が「最初から好印象だったのですか?」「他の女性とオンラインで会ったことは?」などと答えにくい質問をしても、二人は笑顔で率直に答えてくれた。画面越しにも、二人に信頼関係ができていることが伝わってきた。紀徳さんは、

「普段だったら、職業も年齢も異なる二人が、熊本と東京で出会うチャンスはなかったと思う。コロナは大変だけれど、災い転じて福となすといった感じでしょうか」

と笑顔を見せた。コロナ禍が落ち着いたら、同居や挙式なども進めていくそうだ。夫妻はコロナがつないだ縁をこれから紡いでいく。

ドライブスルー婚活

他の結婚相談所もこぞってオンライン婚活を導入し始めた。

一方、LMOは今後、オンライン婚活だけでなく、対面式のイベントにも力を入れていく計画だ。「コロナ禍では対面は難しいのでは?」という外野の声にも、アイデアマンの高田さんは動じない。

5月下旬には、熊本市で男女11人がマイカーに乗ったまま参加する「ドライブスルー婚活」を初めて開催した。参加者ははじめ、離れて駐車し、Zoomを使って車内で自己紹介する。その後、男性が自分の車を女性の車のそばに近づけ、窓越しにお互いの姿を見ながら、スマホで一対一の会話を順々にしていく「ハイブリット型」のイベントで、カップルも2組誕生した。

福岡市と佐賀県唐津市では「スナック婚活」もスタートした。唐津市のスナックには男性が、福岡市の方には女性が参加するシステム。そして、男女がオンラインで画面越しに自己紹介し合い、気に入った異性が見つかれば、一対一で話をすることもできる。スナックといえば人生経験が豊富で相談に乗ってくれる「ママ」の存在が大きい。実際にスナックでは、ママの紹介で結婚につながるカップルもいる。コロナ禍で厳しい状況が続く飲食店同士がオンラインでつながり、県域を超えた新たな婚活の場として脚光を浴びるかもしれない。

高田さんは、

「オンライン婚活は、新しい出会いや交流の場として広がりつつある。同じように、新しい生活様式にあったサービスをどんどん考えていきたい」

と意気込む。

オンラインでの婚活パーティーや告白、バーチャル同棲、プロポーズの中継……。二人の結婚までのストーリーはどれも初めて聞く斬新な内容ばかりだった。経緯を文字にすれば、たしかに初めて会った翌日に結婚したことになる。でも、よく考えてみれば、ビデオ通話などのオンラインという「ツール」が新しいだけで、出会いから告白、求婚というやりとりは、一般的な恋愛となんら変わらない。オンラインはお互いの動く姿が見える安心感があり、メールが主流のネット婚活よりも一段進化した印象を受けた。

見つけた答えは

コロナ禍で人生を見つめ直し、オンライン婚活を始めた男性にも出会った。

首都圏に住む自動車メーカー勤務の元気さん(仮名)。大学時代はラグビーをしていたという体育会系の41歳で、明るく朗らかでおしゃべり好きな印象だ。ほぼ毎晩仕事終わりは同僚と飲み、週末は趣味のボルダリングを楽しみ、これまで結婚を真剣に考えたことはなかったという。

ところが、コロナの感染拡大よって状況は一変する。

4月頃から仕事は原則在宅勤務になり、飲み会など「不要不急」の外出も制限された。最初は仕事仲間や大学の同期を誘ってオンライン飲み会を開いたが、「妻がいい顔をしない」「ダラダラ続くのが嫌」と段々参加者が減っていった。昔つきあったり、デートをしたりした女性たちにも連絡を取ったが、みんなつれない様子だった。

そして、誰かと仕事以外の話をする機会が激減した。

「自分は人気者で友達が多いと思ってたのに、他の人には家族や恋人がいて、いざ非常事態になったらひとりぼっちだった。生まれて初めて孤独を感じた」

と弱音を吐いた。

1カ月ほど自宅で引きこもっていると、眠れない日が増え、仕事中も集中力が続かなくなっていった。結婚して故郷の東北で暮らす妹と電話で話したとき、心身の不調を伝えると、

「いつも旦那や子どもがいなかったらもっと自由な時間ができるのにと、お兄ちゃんをうらやましく思ってたの。でも、こういう不安ばかりの時代になって、家族が心の支えになっていると実感した。お兄ちゃんもそういう人を真剣に探してみたら」

とアドバイスされた。

弱っていた元気さんにはその助言が身に染みたという。交際した女性は20人以上いたものの、結婚は「いつかするもの」で常に「今はめんどくさい」と思っていた。男性ならある程度の財力があれば50歳でも60歳でも結婚できると漠然と信じていた。

「モテてきた自信があったのですね」と尋ねると、恥ずかしそうに、

「そうですね。自分は選ぶ側、女性は選ばれる側だと勝手に思っていました。実際は選ぶどころか誰もいなかったんですけど」

と苦笑いしていた。

紹介されたのは、都会では絶対に出会わないタイプの女性だった

一度だけ、約10人が参加するオンライン婚活パーティーに参加してみた。しかし、20~30代前半の女性たちと共通の話題がなかなか見つからない。最近流行しているお笑い芸人や歌などよく知らない話題になると、隠れてスマホで検索して分かったふりをした。

終わった後は、どっと疲れてしまった。

「大人数だと見栄っ張りな部分が捨てきれなくて……」と反省する元気さん。その後、高校や大学時代の同期や会社の後輩に頭を下げて、一対一で紹介してもらう作戦に切り替えた。周囲は結婚願望などなかった元気さんの変化に驚きつつ、親身になって相手を探してくれた。

何人かとオンラインで「お見合い」を続け、7月に友人の紹介で出会ったのが30代後半で、元気さんの生まれ故郷と同じ県の女性だった。今も地方都市で暮らす女性には20代の頃に離婚歴があり、ずっとその町で事務の仕事をしながら暮らしてきた。都会でボルダリングや合コンをしていたら、絶対に出会わないタイプ。紹介してくれた高校の同級生は「なんとなくお前と合いそうな気がしたから、とりあえず話してみなよ」と勧めてくれた。

ビデオ通話で話してみると、「あの店はまだあるの?」「遠足といえばあそこだよね」と地元トークで盛り上がった。何でも楽しそうに笑ってくれる女性と話していると、高校時代のようなときめきを感じた。一日の終わりに女性の声を聞くたびに、心のよりどころができたという安心感がある。「結婚に失敗をしているので、急がず話を進めたい」という女性の思いをくんで、ゆっくりと交際を進めている。

東京から地方へ、コロナで変わった価値観

「東京で仕事をしてこそ成功者だ」

元気さんは上京してから一貫してそう考えていた。コロナの流行という未曽有の事態になり、仕事や遊びに邁進していただけで、実は人生の経験値を積み上げてこなかったのではないかという疑問が心の中に生まれた。

そんなとき生まれ故郷の女性と出会い、疑問は確信に変わった。今は、地方転勤や生まれ故郷での転職も選択肢に入れている。

「この苦しい時間が自分と向き合い、答えを探す貴重な時間になった。いつかコロナが終息したときに、何かを得て成長していたい。……できたら、彼女が隣にいたらいいのですけど」

パソコンの画面越し、照れながらすがすがしい笑顔を見せた。

【前編を読む】「『欠陥人間』と否定されるような気持ち」「傷つかないで済む」 “結婚相手”を“親”に任せる女性の本音とは

(筋野 茜)

筋野 茜

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