「放っておけば悪くなるだけ」認知症の症状が改善しなかった人の特徴とは

「放っておけば悪くなるだけ」認知症の症状が改善しなかった人の特徴とは

  • 文春オンライン
  • 更新日:2020/09/16

「私はこうして認知症からよみがえった」カギは筋トレと音楽療法から続く

一度発症したら進行するのみと思われていた認知症だが、最新研究によれば、グレーゾーンの時期なら戻れる可能性があるという。それでは、認知症の症状が改善した人としなかった人の違いは何なのだろうか。(全2回の2回目/前篇を読む)

認知症、MCI対策のデイケアや予防教室では、場所によってさまざまな療法を取り込んだプログラムが用意されている。具体的にどのようなプログラムが進められているのか。

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©iStock.com

金沢医科大学病院で認知症予防教室を開催している入谷敦・認知症センター副センター長が語る。

「うちの教室では、MCIの方が中心で毎回20人ほどが参加し、認知症にならないための生活習慣を学んでもらっています。毎回2時間。月に2回、全8回がワンクールです」

実際に教室に参加してみることにした。この日の参加者は60代から80代の男女十二名。

まずは座学。次にコグニション(認知)とエクササイズ(運動)を合わせた、コグニサイズと呼ばれる国立長寿医療研究センターが開発した運動が始まる。

放っておけば悪くなるだけ

ウォーキングなどの有酸素運動は、脳への血流を増やすだけでなく、BDNFという脳の成長に不可欠な脳由来神経栄養因子が分泌されるため、認知症予防に有効であることが実証されている。有酸素運動をしながら足し算や引き算などの計算をし、体と脳を同時に使うのがコグニサイズだ。

色分けされたラダー(布製のはしご)を床に敷き、1マスずつ、できるだけ速くステップしていく運動もコグニサイズのひとつ。ラダーのタテ軸は赤、青、緑、黄の四色に色分けされており、「緑と青の時は、足を外に出す」などの指示があれば、その色のマスでは、マスの中ではなく外側をステップする。

記者(47)もやってみたが、なかなか思い通りに足が動かず、いい汗どころか、冷や汗の連続だった。

「あの話、忘れちゃったの?」

さらに、シナプソロジーと呼ばれるプログラムの後、回想法(同前)と呼ばれる心理療法を行ってこの日は終了。

「MCIから戻るために有効とされるプログラムのうち、何がどれだけ効果があるかは人それぞれです。筋トレなどで高い効果がある人もいれば、音楽療法や回想法などで心が落ち着き、回復に向かう方もいます。何が効果的なのかは、やってみなければわかりません。

有酸素運動、認知トレーニング、社会交流、ボランティアなど、できることは全てやること。ただ、あまり考えすぎると心理的抵抗も大きいはず。あらたに始めたことを習慣化して、生活の中に取り込んでいくことです」(朝田氏)

高橋義博さん(仮名・67)は、妻の助言もあって昨年から金沢医科大学病院の認知症予防教室に参加した。

「4、5年ほど前からですが、家内と話していると、『あなた、あの話、忘れちゃったの?』と指摘されることが多くなりました。その話自体を思い出せないことが多く、まるまる忘れていることも。自分も七十に近くなったし、年相応だと思っていましたが、家族に迷惑をかけるのが嫌なので、思い切ってもの忘れ外来で診察を受けてみることにしたんです」

本人はこう話すものの、来院当時はあまりいい状態ではなかったという。

前出の入谷氏が話す。

「受け答えにも、ちょっと心もとないところがありました。MMSEは26点でした」

高橋さんは、手先を使う伝統工芸の職人として、40年以上のキャリアがある。仕事が身に付いているため、普段の仕事で支障をきたすことはなかったが、そのぶん自分では症状に気付きにくかった。

戻れた人と戻れない人の違い

「基本的に1人で黙々とやる仕事ですから、コミュニケーションの機会が少なかったようです。自分から積極的に話すタイプではなかった。それがいまでは本当に明るくなり、教室でもムードメーカーです。

放っておけばどんどん認知機能が落ちていくということもよく理解して、一生懸命プログラムに参加しています。そのおかげでしょう、参加者の中でも特に元気になったうちの一人です」(同前)

高橋さん本人もこう語る。

「一番役立ったと思うのは、会話をするようになったこと。話をすることで頭がはっきりしてきました」

ここまで、元気に回復した人たちの体験談を聞いてきたが、残念ながら戻れない人もいる。戻れた人と戻れない人では、どこが違うのだろうか。

前出の朝田氏はこう指摘する。

「他人となかなか話そうとせず引っ込み思案の人、全部自分で抱え込んでしまう人はなかなか戻ることが難しい。ですから夫婦のどちらかがデイケアに通う際に、一緒に来て夫婦並んで座ったりして、周囲と壁を作ってしまうようだと、ダメですね。

話が出来なくても自ら輪に入ろうと努力する人は戻れるはずです。また、プログラムを恥ずかしがったり、逆にバカにする人などは難しい。とにかく楽しんで積極的に取組んでいる人が元気になっています」

仕事などでそれなりの地位があった人などは、家族が知られることを嫌い、家の中に閉じ込めてしまうケースも多いという。

「恥ずかしいとか、世間体が悪いとか。もうそんなことを言っている場合でも、時代でもありません。歳をとれば誰でも認知機能は落ちていきます。気づいた時点で食い止めるためにも、家族で助け合うことが重要です」(同前)

MCIの段階で対処すれば戻れる。そのためには、まずは早期発見。そして現実を受け入れ、早期治療を心がけることが大切だ。

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続きは『最新予防から発症後の対応まで 認知症 全部わかる!』に収録されています。

(「週刊文春」出版部)

「週刊文春」出版部

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