動き出す「スーパーシティ」の現状と課題とは

動き出す「スーパーシティ」の現状と課題とは

  • JBpress
  • 更新日:2021/04/08
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Fintech協会の落合孝文常務理事(2021年3月15日に開催された財務省東北財務局主催の「金融機関向けオンラインセミナー」で)

AI、IoT、自動運転技術など最先端のデジタルテクノロジーを活用して革新的な住民サービスを提供するのが「スーパーシティ」だ。Fintech協会常務理事を務める弁護士の落合孝文氏は、さまざまな業界でのビジネスへのアドバイスや制度構築などについて活動を行っており、政府や民間団体の委員などを数多く務めている。スーパーシティを巡る最新の動向と実現に向けた課題と、その中でフィンテックが果たす役割を落合孝文氏に聞いた。(JBpress)

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戦略特区の指定公募が進行中

――2020年秋に国家戦略特別区域法が改正され、「スーパーシティ型国家戦略特区」の枠組みができました。2021年2月にFintech協会が開いたスーパーシティ関連のオンラインイベントは、150人近くが参加する盛況だったと聞きました。まず、スーパーシティを巡る動向の最新状況を教えてください。

現在は、政府がスーパーシティ特区の指定を受ける自治体を公募しているところです。4月16日に公募を締め切った後、専門委員会や国家戦略特区諮問会議、政令での区域指定のための閣議を経て最終決定される、というのが大きな流れです。

2020年12月25日の公募開始に先立ち、スーパーシティの構想を検討している自治体などから検討中のアイデアを政府が募集したところ、同月までに50件を超えるアイデアが寄せられたそうです。アイデアは「新規開発型」と「既存都市型」の2種類に大別でき、自治体の一部や全域を対象にした内容や、中山間地域のQOL(生活の質)向上を目指すものなど多岐にわたっています。

内容をもう少し詳しく見てみると、内閣府が公表している構想イメージの中でも通院対策をはじめとして、医療をテーマにしたアイデアが複数公表されています。たとえば、医療や新たな交通手段「MaaS(Mobility as a Service)」を連携させて、運転免許を返納した後期高齢者の通院を支援するといったものです。そのほか、自動走行やキャッシュレスにMaaSを組み合わせての活用を想定した観光関連のアイデアや、エネルギーの地産地消や防災拠点としての機能整備を視野に入れたアイデアなどがあがっています。

最終的に指定を受ける自治体の数は限られますが、その自治体は、今後スーパーシティ実現の旗振り役を担っていくことになるでしょう。先進的な取り組みに挑戦している自治体の提案に基づいて、規制改革がされることが予定されています。私見ですが、各省庁が主導して推進するさまざまな実証のフィールドに選ばれたりする可能性も高まるのではないかとが見込んでいます。

料金支払、地域ポイント、本人確認などでフィンテックが関わる

――スーパーシティ構想に、フィンテックはどのように関わるのでしょうか。

スーパーシティで展開されるサービスの主役はあくまでも医療、交通、観光などのテーマかもしれませんが、それぞれのサービスを提供するうえで、フィンテックはなくてはならない存在だと言えます。

例えば、MaaSを利用すれば料金の支払いが生じますから、電子決済をはじめとする金融サービスが必要になります。また、観光地を手ぶらで観光するにはキャッシュレス決済の仕組みを整えなければなりません。このようにスーパーシティで想定されるさまざまなサービスにフィンテックが必要になってきます。

地域ポイントや地域通貨の発行・運用といった点でも、フィンテックは期待されています。たとえば、MaaSの担い手として住民がボランティアなどの形で車両と運行サービスを提供した際、ボランティアポイントを発行するといった用途が指摘されることもあります。

そのほか、フィンテックに関連する技術やサービスとして注目されているのが本人確認です。キャッシュレス決済サービスなどの本人確認に使われている技術やサービスを提供している「レグテック※」事業者が、本人確認のアグリゲーター(仲介者)サービスを検討しています。本人確認のアグリゲーターは、特に個人に即したサービスの提供にあたっては、データ連携の基礎ともなるものであり、このような分野での活躍は十分に期待されます。

※レグテック:Regulatory Technologyの略で、企業が各種の規制に対して効率よく対応するための技術活用

避けて通れないデータの相互運用性

――スーパーシティの実現に向けた課題としてはどのようなものがありますか。

大きな課題のひとつがサービスのインターオペラビリティ(相互運用性)の確保です。政府のスーパーシティの検討会では、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)を通じてデータを送受信するデータ連携基盤や、データを一元的に蓄積するのか分散させるかといったデータ管理の方式などについて議論が重ねられてきました。

相互運用性が伴わなければ、スーパーシティの随所に非効率が生じるでしょう。例えば、法務局の土地の登記簿や公図と、道路や農地などの台帳の紐付けがすぐにできない場合があります。航空写真とこれらの図面や台帳を一致させることも容易な作業ではありません。そうすると、何かの仕事をする際に関係者が、紙の図面や台帳を集めて手作業で比較する、という非常に非効率的な状況が生まれます。スーパーシティにおいても相互運用性がいかに大切になってくるか、想像に難くないと思います。

MaaSに代表される移動手段だけをみても、自治体内にとどまらない相互運用性の検討は避けられません。ある自治体に居住する住民の生活圏が、その自治体に閉じているとは限らないからです。日ごろ隣接する県や市の商業施設を利用している住民が多ければ、住民の生活圏は複数の自治体にまたがります。そうなれば、自治体間でMaaSの相互運用性が求められるでしょう。その一方で、自治体の間で持っている情報が連携されていないこともあります。これは市区町村の間だけではなく、これら自治体と都道府県や国との間でも起こっていることです。

そうは言っても、相互運用性を確保するためにデータを連携させることは、そんなに簡単ではありません。そもそもデータ化されていないものもあり、データがあるとしても、データの所在やフォーマットがバラバラになっているのが一因です。

都市ごとに、バラバラでつながらないデータ連携基盤となって、モビリティや医療なども含めてサービスが分断されないよう、それぞれのAPIを公開することが求められることになります。

――解決策はあるのでしょうか。

データ連携基盤を整備することが必要になります。データを利用したサービスが提供できるよう、標準フォーマットも整備されていきますが、実施のスーパーシティでの取り組みも参考にしつつ、どのような形でデータを生成、収集、連携するようにするかが深められていくと考えられます。

データ連携基盤を通して、医療と交通や、交通とエネルギーなど各種サービスや機能が利用できるようになるため、必要なデータを提供していく考え方です。

自動運転を見据えたMaaSと道路データのように、密なデータ連携を実現する仕組みをサービスごとに個別に用意したほうが好都合なケースはあるかもしれません。しかし、スーパーシティの多様なサービスを見越して、データを結びつけたり、利用したりできる核になることがデータ連携基盤には期待されます。

――データ連携基盤を介して連携するデータのフォーマットを全国で標準化していく必要もありそうです。

デジタル庁で議論が進められる「ベースレジストリ」(国・公の側で有する基本的な情報基盤)については、ある程度全国的に標準的なものが利用されることになると思います。また、地方自治体のシステムも共通化される取り組みも進められていくので、自治体によらず共通のITシステム、データ利用の枠組みが整えられる部分もあります。

一方で、具体的な医療、交通、エネルギーほかのサービスの提供まで見据えた場合には、全国的にはスーパーシティやスマートシティとひとくちに言っても、抱えている課題や目標が自治体によって違っています。そうしたことを考えると、いくつかのモデルを参考に、横展開をする形でデータ連携基盤や、サービスレベルでの情報連携などが進められていくと考えられます。

フォーマットが異なる状態でデータ連携するより、標準化したほうが、相互運用性を確保するうえで得策なのは言うまでもありません。

栗原 雅

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