Forbes JAPANは11月16日、第7回「スモール・ジャイアンツ アワード」をライブ配信で開催した。イベントでは、全国から集まったファイナリスト7社によるプレゼンテーションと審査が行われ、自社開発した汚泥脱水機を世界77カ国に輸出する、アムコン(神奈川県)がグランプリに輝いた。
スモール・ジャイアンツ アワードは、1.創業10年以上、2.売り上げ100億円未満、3.従業員数500人以下という条件のもと、規模は小さくても、独自の技術やアイデアで世界規模の活躍をする企業を発掘・表彰するForbes JAPANの名物プロジェクト。
前回のグランプリは、顧客の不満をヒントの宝庫とする「ボヤキニズム経営」で世界中に草刈り機を輸出する、福岡県の筑水キャニコムが受賞。歴代のグランプリ受賞企業も、生体情報を取得できるトータルサービス「hamon」を開発したミツフジ、ディズニーやNASAからも試作依頼が舞い込むアルミ加工メーカーのHILLTOP、安全確保のために使われる保護デバイスなどを製造する生方製作所など、アワードを機にさらなる成長を続けている。
120社から選び抜かれた、すごい7社が登場
7回目のグランプリに輝いたアムコンは、自社開発した汚泥脱水機を世界77カ国に輸出するメーカー。下水や排水の浄化処理過程で生じる汚泥の脱水を行う機械によって、産業廃棄物の処分量の減少に寄与している。なおかつ従来型の汚泥脱水機と比べ、電気代が40分の1、水の使用量は200分の1となるほどの革新技術も備えている。
選考プロセスは、商工組合中央金庫や中小企業基盤整備機構、デロイト トーマツグループ、野村證券、ベンチャー型事業承継など、全国の中小企業にネットワークを持つ10組が出場候補の80社を推薦。また、今回は協定連携パートナー・パートナー団体も40社を推薦し、合計全国120社の企業から、書類審査を経てアワードに出場するファイナリスト7社が選出された。
アワード当日の審査員は、山井太(スノーピーク代表取締役会長執行役員兼社長執行役員)、坊垣佳奈(マクアケ共同創業者/取締役)、大坪正人(由紀ホールディングス代表取締役社長)、内田研一(やまなし産業支援中小企業経営革新サポート事業統括マネージャー/SMALL GIANTS AWARD Executive Producer)、藤吉雅春(Forbes JAPAN編集長)の5人が担当。「グローバル市場の開拓」と「地域への貢献」、「稼ぎ続ける力」の3点を審査基準に、各審査員の立場からファイナリストの事業の魅力に目を光らせた。
アワードは、各社の代表者が、自社独自の成長戦略やアイデア、いかに逆境を乗り越えて「小さな巨人」となったのかをプレゼンテーション。また、ファイナリストと審査員との質疑応答を通して、ビジネスモデルや今後の可能性なども語られた。

プレゼンするアムコン社長 相澤学
プレゼンでは、アムコン社長の相澤学が登壇。「競合他社は売り切りのビジネスモデルだが、私たちは日本企業として“おもてなし”のようなソフトサービスにもこだわっている。保証期間も他社が半年で、私たちは最大4年間。売り切りとは異なり、私たちは世界中の現場に赴いて立ち上げ作業を行い、汚泥脱水機の最大のパフォーマンスが発揮できるようにしている」と、他社との差別化について明かした。
また、みかん30個を手絞りした高級ジュース「みかんしぼり」が人気を誇る伊藤農園(和歌山県)も、注目を集めた。同社は自社農園などでとれたみかんを使用し、商品を開発・販売。看板商品である無添加の100%ストレートのみかんジュースが振舞われると、「甘い」「おいしい」という言葉とともに、審査員が一気に飲み干すシーンも見られた。

伊藤農園のみかんジュースを試飲する審査員たち
同社はかつて、全国的な過剰生産によってみかんの価格が大暴落したことを機に、みかん問屋からジュースメーカーに事業転換。現在はリブランディングに成功し、世界32カ国へ商品を輸出している。
代表取締役社長を務める伊藤彰浩は、目指すビジョンについて、「ショップやレストラン、農業体験、宿泊施設を併設した里山の豊かさを体感できる伊藤農園ビレッジを作りたい」と語り、自社のみならず地域を元気にする新たなプロジェクトもアピールし、ローカルヒーロー賞を受賞した。

レボインターナショナル代表取締役 越川哲也
使用済みの食用油からバイオディーゼル燃料を製造するレボインターナショナル(京都府)は、経営危機を乗り越えて業績を伸ばしている企業。現在25期目で過去18期は赤字だったという同社だが、1日3万リットルのバイオディーゼル燃料を製造し、9割をヨーロッパに輸出している。
川や湖を汚染から守りたいと立ち上げた非営利団体が原点で、地元自治体と協力して使用済みの食用油のリサイクルを啓もうし続けてきた。
プレゼンに登壇した代表取締役の越川哲也は、レーシングドライバーを目指し、レーシングチームにも長年携わっていた異色の経営者。自社燃料の品質をモータースポーツ競技で実証するなど、取り組みも異彩を放った。「もう潰れる、なぜ持っているのか、と言われ続けた。世の中からようやく認めてもらった」と語り、今回のアワードではパイオニア賞を受賞した。
ファイナリスト7社が受賞した特別賞は、以下のとおり(順不同)。
アムコン:グランプリ
伊藤農園:ローカルヒーロー賞
コーカス:ベストタレントイノベーション賞
東北電子産業:カッティングエッジ賞
村松フルート製作所:グローバルブランド賞
コーワ:エボリューション賞
レボインターナショナル:パイオニア賞
グランプリの選考について、編集長の藤吉は「大手企業とは全く異なるほど、技術が画期的。日本の技術で、世界の現場を支えているところが素晴らしかった」と、アムコンに言及。山井も「モノづくりの人間である私からしても、挑戦と創造という会社のミッションにふさわしい業容と言える。グローバルで活躍してもらいたいという思いも込めて選出した」と称えた。

藤吉編集長(左)からトロフィーを授与されるアムコン 相澤社長
グランプリを受賞したアムコンの相澤は、「選んでくださったみなさん、いつも一緒に働いてくれているみんな、本当にありがとうございます」と涙ぐみながら感謝。
「今年10月の社長就任まで海外営業を務め、国際競争に勝ち抜く大変さを肌身に感じてきた。日本を代表するような気持ちで仕事に向き合うということに共感し、みんなが同じ方向を向いて協力してきたのが、今回認められて嬉しい。期待に応えるような会社になれたら」と、思いを明かした。

緊張した面持ちで各賞の発表を見守る受賞者ら
売り上げ、利益、従業員数という「規模のモノサシ」では測れない、「小さな巨人」たち。規模の大小をものともせずに、独自の方法で可能性を切り拓いている彼らには、飛躍のためのアイデアやヒントが詰め込まれていた。
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