中国でiPhoneがピンチ!? すぐには消えないだろうが、脱iPhoneは進むかもしれない

中国でiPhoneがピンチ!? すぐには消えないだろうが、脱iPhoneは進むかもしれない

  • ASCII.jp
  • 更新日:2023/09/19

中国でもシェアが伸びているアップルに嫌がらせ!? スマホの価格が全体的に高くなって、iPhoneは逆に人気に

中国でもiPhone 15が話題になっているが、一方で中国の政府関連組織でiPhoneの利用を禁止する動きが拡大しているという不穏な動きをブルームバーグが報じている(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-09-07/S0LLXVT0AFB401)。この報道について、ホワイトハウスも米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官が「動向を注視する」というコメントした。

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中国でもiPhone 15は話題だが、直前に登場した5G搭載のHUAWEI Mate60 Proも注目を集めている。ユーザーによって比較されることも

まず理由として考えられるのは、中国から見ると米国に国家機密が漏れるかもしれないというセキュリティー対策だ。網絡安全法(ネットワークセキュリティ法)により、中国で生み出された個人情報データは国外に出さず、中国国内のクラウドに保存するとルール化されている。アップルの中国向けクラウドも例外なく貴州省で運用されている。それでもなにか機密が漏れてからではよろしくないと、iPhone自体の利用を政府関連施設では制限するというわけだ。

また、中国の自国産業や企業を伸ばすために、外国の有力企業を不利な立場に追いやりたいという理由も考えられる。網絡安全法の以前から、百度が軌道に乗って以降にグーグルに圧力がかかり、優酷などの動画サイトが台頭するとYouTubeにアクセスできなくなったといったことがあった。特にグーグルは、さまざまな嫌がらせを受けていたことを撤退時に公表している。Amazonも中国向けECとKindleから撤退したが、これは中国の競合企業が競争力を上げ中国式のエコシステムを作り上げたことに起因する。世界で支持されるサムスンでさえ中国の特殊な市場ではシェアを落とし、現在は極めて小さくなった。

中国ではシャオミ、OPPO、vivo、ファーウェイ、それからファーウェイから分かれたHonorといった世界展開も活発な有力スマホメーカーがひしめき合っている。それでも中国ではiPhoneは人気だ。

愛国心を持った中国人は多いとはいえ、アップルを強引に中国市場から追いやろうものなら、多くのネットユーザーから強烈な反対が出るだろう。Counterpointによれば2022年に最も中国で売れたスマートフォンはiPhone 13で、それに続くiPhone 13 Pro MaxやiPhone 13 Proを加えれば10%を超えるシェアとなる。しかも前年よりもアップルはシェアを拡大しているのだ。中国でのiPhone 15への期待もまた大きい。

中国でiPhoneが売れているのには理由がある。そもそも中国ではスマートフォン自体が勢いがなくなっている。品質が向上して壊れにくくなり、買い替えても体感が大きく変わることはなくなったからだ。

その結果、売上自体は不調だがメーカーとしては利益を確保しないといけないので、上位機種を中心とした値上げを進めている。そうするとますますスマホの購入は鈍化する。その結果、もともとはコスパが売りだった中国メーカーのスマホがiPhoneの価格に近づく。それだったら、iPhoneのほうがいいと消費者が判断した結果が、iPhoneのシェアが伸びている理由だ。

ファーウェイから中国製チップを用いた5Gスマホが登場 OSについてはある程度、脱米国は進んでいる

そんなiPhone人気を前に話題をさらったのが、ファーウェイが予告なく出した最上位モデルの「HUAWEI Mate60 Pro」だ。米国からファーウェイに対し厳しい措置がとられているのにも関わらず、5Gと衛星通信機能のある新型プロセッサの「Kirin 9000S」を搭載している、しかも米国陣営の技術に頼らずに商品化したと話題に。Kirin 9000Sをどこが生産したのかが次なる話題となり、それは中芯国際(SMIC)ではないかと言われている。しかし同社は欧米にも多数の顧客がいる。米国からさらなる規制を受ければ同社も大打撃を受けるリスクがあることから、同社の生産を疑う論も出ている。

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ファーウェイと言えば、カメラ。引き続き強力なカメラ機能を搭載するが、HUAWEI Mate60 Proではエンティティリストによって米国発技術を使えない中、独自開発のチップで5G対応した点も話題になっている理由だ

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こちらはA17 proとKirin 9000Sの性能比較

高価なハイエンドモデルではあるが、中国でもHUAWEI Mate 40は今でも話題になるほどの名機であり、その後継機種で5G対応となれば、ファンにはマニアには期待大の商品だ。そして発売されるやあっという間に売り切れた。その様子はかつてシャオミが知る人ぞ知る企業からメジャー企業になるまで行った、新製品を小出しで予約販売する飢餓戦略を思い出す。このように中国で消費者を満足させる国産ハイエンドモデルが出たこともあって、愛国的なネット世論を受けて、国内のガス抜きや政治家のリップサービスとして、iPhoneに厳しい措置をとるという発言は今後ありそうだ。

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中国にあるファーウェイのショップ

ファーウェイのKirin 9000Sは中国においては華のあるニュースだが、一方PC系端末でもLinuxベースの中国産システムやプロセッサやGPUなどの各種チップ開発による脱アメリカ化を進めていて、中国国内の政府機関のPCをすべて中国産にする指示がされたという報道もある。

中国国産部品によるハードウェアは、本連載の過去記事(「中国独自の命令セットのCPUとパーツを用いた「完全中国製PC」でWindowsアプリが動いたと話題に」「中国産CPUやGPUが続々発表、中国政府も力を入れる脱米国は現実化するか?」)を読んでいただくことにして、ソフトウェアについて紹介すると、政府関連機関で普及する「統信UOS」は、中国の各種CPUをサポートするDebianベースのLinuxディストリビューションで、中国開発のOSとして初めて、対応ハードウェア・ソフトウェア数が300万を突破し、これまでの中国産Linuxとは違って本気で普及させていくとアピールしている。

実際、政府機関のサービス端末の70%、大型国有企業の45%に導入されたほか、教育や金融業界でも導入されているという。中国の政府関連機関での脱iPhoneも同程度に進んでいってもおかしくない。

山谷剛史 編集● ASCII

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