選ばれたのは、気鋭の映像クリエイターと異色の経歴を持つオールドルーキー...東映ビデオの発掘プロジェクトがおもしろいことになっていた!

選ばれたのは、気鋭の映像クリエイターと異色の経歴を持つオールドルーキー...東映ビデオの発掘プロジェクトがおもしろいことになっていた!

  • MOVIE WALKER PRESS
  • 更新日:2022/11/25
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東映ビデオの発掘プロジェクトで選ばれた2人の監督

“Vシネマ”というジャンルを確立し、近年では『百円の恋』(14)、『愛の渦』(14)、『アンダードッグ』(20)など、多くの賞を獲得した劇場映画を製作して 個性豊かな監督や俳優を多数輩出してきた東映ビデオが立ち上げた、新進クリエイターの発掘プロジェクト「TOEI VIDEO NEW CINEMA FACTORY」。MOVIE WALKER PRESSでは、本プロジェクトを統括する東映ビデオの佐藤現プロデューサー、第1回で選出された2作品をそれぞれ手掛ける中村貴一朗監督、北村美幸監督にインタビューを実施。佐藤プロデューサーは、「これまで多くの作品をつくってきた歴史があり、そこで培ってきた制作能力や人脈は会社としての財産です。それをいま、アップデートしていきたいと考えました」とプロジェクト発足の経緯を語る。

【写真を見る】1963年生まれ、アダルトビデオ業界出身でコンペ参加という異色の経歴を持つ『17歳は止まらない』の北村美幸監督

現在も若手監督の登竜門と称されるコンペティションはいくつも存在しているが、佐藤プロデューサーは「自主制作を行ない、商業映画を目指している優秀な監督たちはたくさんいます。しかし彼らが商業映画へ進むための橋渡しになるような作品はまだ少なく、映画市場はおおむね決まった監督やキャストたちで回っていると言えます」と日本映画界が抱える課題を指摘する。「そこでプロジェクトとして、新たな才能を発掘していくことに決めました」。

第1回となる今回は、「低予算でも傑作が生みだせるジャンルで、若い世代のクリエイターと若手俳優を発掘するならば」ということから、「青春映画」をテーマに気鋭クリエイターから作品企画・脚本の公募を実施した。そうして集まった応募作は309本。それらすべてを年齢も性別もキャリアも問わない十数名のプロジェクトチームで手分けして隈なく目を通し、特別審査員を務めた脚本家・映画監督の足立紳も加わり選び抜かれたのが、2本の斬新な青春映画だ。

5分間を無限にタイムループ!?気鋭の映像クリエイターが挑む、誰も見たことのない青春ラブストーリー

中村監督が手掛ける『神回』は、ある夏休みの高校を舞台にしたファンタジックな物語。文化祭の実行委員となった主人公の沖芝樹は、もう1人の実行委員である加藤恵那と教室で合流し、文化祭の出し物について打ち合わせを始める。ところがその5分後、気がつくと打ち合わせの開始時に戻ってしまっている樹。無限に続く5分間のループから抜け出そうと奮闘する樹だったが、次第に自暴自棄に陥っていく。

「『バタフライ・エフェクト』や『パーム・スプリングス』など、“タイムループ”を描いた作品は傑作ぞろい。そうしたキャッチーな題材を選びながら、これまでのどの作品ともひと味違う。まるでジェットコースターのようにどこに連れて行かれるのかわからず、最終的に普遍的なラブストーリーへと落とし込まれるのが本作の魅力です」と、佐藤プロデューサーも太鼓判。

メガホンをとった中村監督は、これまで数多くの映像の企画演出を手掛けてきた気鋭の映像クリエイター。ユネスコ世界遺産委員会へのプレゼンテーション映像「GUNKANJIMA -Traveler in Time-」で国内外の賞に輝き、YOASOBIの楽曲をソニーの立体音響技術を使ってオーディオドラマ化した「夜に駆ける」など、最新鋭の技術を駆使した画期的な映像表現を得意としている。「10年以上、このような長編コンペに挑んできました。でもなかなか結果が出ず、先が見えなくなっていたタイミングで連絡をもらい、『続けてきてよかった…』と心から思いました」と、中村監督は安堵の表情を浮かべる。

なぜ“タイムループ”という題材を選んだのか、その理由を訊ねてみると中村監督の謙虚な人柄が見えた。「青春映画は世界中の監督たちがしのぎを削る激戦区。世の中に知られていない自分が、どう立ち向かうかを考えた時に、いっそのこと誰が監督してもおもしろいと思える脚本にしようと考えました」。劇中では何度も何度も同じ5分間が繰り返され、その都度物語は想像もしない方向へと転じていく。「制約があることで物語は活気づいてくる。主人公の内面の機微を大切にしながら、テンポ感を意識して編集作業を進めています」。

異色の経歴を持つオールドルーキーが、女子高生のバイタリティをみずみずしく描く!

もう一本の受賞作は、北村監督の『17歳は止まらない』(応募時タイトル『17歳は感じちゃう』)。農業高校を舞台に、動物たちの生と死に向き合いながら自らの恋愛には衝動のままに突き進む女子高生を描いた“畜産系青春映画”だ。家畜から “命をいただく”ことの尊さを学び、家計を助けるためにアルバイトも両立している高校2年生の瑠璃。教師の森に想いを寄せている彼女は、情熱を募らせるあまり、森の家へ押しかけて強引に想いを遂げようとする。

同作について佐藤プロデューサーは、「瑠璃というヒロインが本当に魅力的で、一直線で真っ直ぐ。動物たちの生死にまじめに向き合う姿と自分の欲望に忠実な姿のギャップもすごかった。『動いているヒロインを見てみたい』というのが、審査を行なった全員の一致した意見でした」と大絶賛。そして「企画書を読んだ時、脚本家の名前が女性で監督の名前が男性。でも最初の打ち合わせの際に、北村監督しか来なくて、実は両方とも監督のペンネームだったということがありました(笑)。しかも年齢は僕よりも上。それを脚本でまったく感じさせないみずみずしい台詞に、とても驚かされました」。

北村監督は1963年生まれのまさに“オールドルーキー”であり、約20年にわたってアダルトビデオの製作や監督を行なってきた異色の経歴の持ち主。「やはり映像に関わる仕事をしている人間として、映画に携わり監督をしたいという思いはずっと持ち続けていました」と、夢をひとつ叶えたことに感慨深げな表情を浮かべる。「以前別の賞に応募した時には相手にされず、それでも自信があったので推敲し直し、翌年に女性名のペンネームで再応募したところ二次選考まで残った経験がありまして…。今回もその時の女性名で応募しました。そしたらまさか通ってしまって…。佐藤プロデューサーに最初に会う時に、どう取り繕うか考えに考え、もう正直に謝るしかないと…(笑)。でも佐藤プロデューサーは笑って許してくれました」。

農業高校を舞台に選んだ理由は、数年前にテレビで見たドキュメンタリー番組がきっかけだという。「農業高校の生徒を追っていて、これまで農業高校に対して勝手に持っていたイメージを覆されるような生活ぶりと、生徒たちのバイタリティにものすごく感動しました」。撮影にあたって避けては通れなかったことは、動物を使うということ。「本当に言うことを聞いてくれないので苦労の連続でした」と北村監督は苦笑いしながら振り返る。「犬はバテるし飽きっぽいし、最初に使おうとした元ばんえい競馬の馬は恐ろしく大きくてキャストがビビってしまったり。もう動物はこりごりです(笑)」。

これぞ青春映画の醍醐味!ネクストブレイク必至の若手キャストが勢ぞろい

『神回』で樹役を演じるのは、NHKの連続テレビ小説「カムカムエブリバディ」にも出演した青木柚。ヒロインの恵那役には2021年のぴあフィルムフェスティバルで2部門に輝いた自主映画『愛ちゃん物語』で主演を務めた坂ノ上茜。『17歳は止まらない』で主人公の瑠璃役を演じるのはNHK大河ドラマ「青天を衝け」にも出演した池田朱那。共演には片田陽依や白石優愛、青山凱、そして人気インフルエンサーの大熊杏優と、これから注目を集めることまちがいなしの新進俳優が顔をそろえた。

『神回』主演の青木柚はキャスティング、『17歳は止まらない』主演の池田朱那は別途行ったオーディションで選んだとのことだが、『神回』のヒロイン、坂ノ上茜をはじめ、それ以外の大部分はそれぞれの監督による演技ワークショップを開催して発掘していったという。中村監督は「才能豊かな方々に出会えてとてもいい思い出になりました」とワークショップを振り返る。中村監督のワークショプでは、同じシチュエーションを異なる感情で演じ分けるエチュードの形式で行われていき、作品の要となる主人公2人の感情のキャッチボールを見極めていったのだとか。「体力と精神力が求められ、とにかくヘトヘトになりましたね」。

一方で北村監督は、そんな中村監督のワークショップを見学して刺激を受けたことを明かす。「参考にさせてもらおうと思って見学したのですが、これ俺にできるのかなと自信がなくなってきたので、とにかくひたすら脚本に忠実に演じてもらう方法を取りました」。そして「変なタイトルの作品で、変な経歴の人間のところにどれだけ人が集まるのかと危惧していましたが、本当にいい方ばかり集まってくれました」と自虐混じりに参加者への感謝を述べると、「存在感も演技力もある方ばかりで選定に苦労しました。今回の作品は登場人物も少なかったこともあり、選びきれなかった。自分にまた次のチャンスがあれば是非ともお願いしたいと思っています」と有意義なワークショップに大満足の様子で語った。

2作品のクラウドファンディングは現在実施中!エンドロールに名前が載るチンスも

両作品共すでに撮影は終了し、現在完成に向けて編集作業などが鋭意進められており、どちらも2023年夏に新宿シネマカリテで公開されることが決定している。また、クラウドファンディング・プラットフォーム「MOTION GALLERY」ではこの2作を1館でも多くの劇場で公開するための応援を募っている。リターンには劇場鑑賞券やキャストの複製サイン入りブロマイドなどのほか、10,000円以上の応援をすると本編エンドロールに名前が載るチャンスも。

中村監督は「この作品は、誰にも理解されない苦しみや勝つことができない存在が周りにいる息苦しさ、せつない儚げな思いなど、あのころの気持ちを大事に作っています。どの年代の方でもきっと心に突き刺さる作品だと思うので、クラウドファンディングを通じて1人でも多くのお客さんに観てもらいたいです」。北村監督も「すでにご支援いただいた方には御礼申し上げます。これからの人には是非、悩みながらも突っ走る17歳の躍動が見られる映画ですので、期待していただければと思います」とそれぞれアピール。

そして佐藤プロデューサーも、「『神回』は観たことのないようなタイムループもの。新しい才能に支援し、あの監督のデビュー作を支援しているのだと後々誇りに思えるような作品です。『17歳は止まらない』も、魅力的なキャラクターが見られること間違いなし。様々なキャリアを積んできた北村監督が、この年齢で商業デビューするというのは夢のある話だと思います。是非とも“オールドルーキー”を応援していただければと思います」と呼びかけた。

『神回』応援プロジェクトは11月28日(月)23時59分まで、『17歳は止まらない』応援プロジェクトは2023年1月23日(月)23時59分まで実施中。

取材・文/久保田和馬

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