国家権力がなければ自警団が必要:メキシコの農家対麻薬組織

国家権力がなければ自警団が必要:メキシコの農家対麻薬組織

  • アゴラ
  • 更新日:2021/07/21

メキシコのアボガド生産業者3000人余りが再び自警団を編成。麻薬組織による犯罪から守るためである

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MÉXICO, AGUACATE PUEBLOS UNIDOS CONTRA CARTELES. 19-07-2021.より

メキシコのミチョアカン(Michoacán)州と言えば世界でアボガドの生産量では最大の地域である。世界で需要がますます増大しているこのグリーンゴールドと称されているアボガドから上げる利益を横取りしようとして登場したのがメキシコで蔓延ってしいる麻薬組織カルテル(Cartel)である。

Aguacateros de Michoacán toman armas contra cárteles de la drogaHoy, en estas poblaciones, una verdadera fuerza armada privada custodia la zona, erigiéndose en una autoridad paralela que quiere hacer frente a los cárteles.www.milenio.com

それが顕著になったのは2013年頃からだ。当時、この地域を支配していたカルテルはロス・カバリェロス・テンプラリオスであった。翌年2014年になると、2つのカルテルが縄張り争いを展開するようになってアボガドの生産業者への暴力、ゆすり、殺害などが激しさを増した。

この二つのカルテルというのは従来のロス・カバリェロス・テンプラリオスとそれに対抗したラ・ファミリア・ミチョアカンである。

アボガドの生産業者の間では、もちろん自警団を組織した。カルテルの侵害から守ることに努めた。しかし、その防衛も永久に継続できるわけでもなく、油断を見せるようになるとカルテルがその隙をついてまた侵害を加えるようになって行った。

昨年からそれがまた激化している。これまでのロス・カバリェロス・テンプラリオスとラ・ファミリア・ミチョアカンに加えて、今度はロス・ビアグラとカルテル・ハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオンの二つのカルテルが縄張り争いに加わったのである。

特に、カルテル・ハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオンはメキシコのカルテルの中で最も狂暴なカルテルとして知られている。これまでカルテルとして最大の勢力を誇っていたシナロアに対抗できるまでに成長している。特に米国ではシナロアとハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオンとの間で勢力を二分するまでになっている。

ハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオンの前身はカルテル・ミレニオだ。ミレニオはシナロアと同盟を結んだ仲であった。その後ミレニオが2派に分裂した。そのひとつを2009年から率いたのがネメシオ・オセゲラ・セルバンテス(通称エル・メンチョ)である。それから僅か7―8年で最大のカルテルの一つとして成長させた。

メンチョはカルテルが蔓延するミチョアカン州の出身で、幼少時の彼は家庭が貧困でアボガドの生産を手伝っていた。90年代から麻薬の密売に従事するようになり、1994年に米国の北カリフォルニアで麻薬の密売で逮捕されて3年間収監されていた。その後、メキシコに戻りハリスコ州の自治体の警官として働いていた。彼が元警官だったということで、カルテルの組員は軍隊式に規律が守られ統率が取れているというのが特徴としてある。

一般にカルテルがアボガドの生産業者をゆする際、1ヘクタール当たり5万ペソ(28万円)の分け前を要求しているという。脅しても生産業者が支払わない場合は、アボガドを燃やして収穫をゼロにしたり、その家族を誘拐して殺害したりするのである。特に、カルテル同士で縄張り争いが激化するようになると、そのしわ寄せがアボガドの生産業者に向けられた。分け前を要求する度合いも執拗になって行った。

そこでミチョアカン州のアボガドの生産では肥沃な地域の4つの自治体から3000人余りのアボガド生産業者が8か月前に新たに自警団を編成することに決めたのである。これまで自治体の方からアボガド生産業者を守る具体的なプランはまったくみられなかったからである。

自警団を編成した4つの自治体というのは、「サルバドル・エスカランテ」、「アリオ・デ・ロサレス」、「ヌエボ・ウレチョ」、「タレタン」だ。カルテルの組員がこの4つの自治体のテリトリーの中に入ることができないように、自警団を組織して警備を開始した。彼らは防弾チョッキに身を包み、銃はカラシニコフAK47、ライフルR-15、M1カービンをもって道路でのコントロールを開始したのである。

54か所でバリケードをつくって150人からなる自警団が分担してそれぞれ12時間交代で監視している。また道路の路面に土をもったり小石を置いている箇所もある。通行する車のスピードを遅くさせて、中に乗っている乗客に4つの自治体に入る理由を尋ねるためである。

自警団を維持する費用は、アボガド生産業者や関連の企業家が負担しているという。彼らにとって銃を購入する方がカルテルに恐喝されて分け前を払うよりも安くつくからだとしている。

自警団のメンバーのひとりは32歳くらいの電気機械技師が取材に答えた。ヌエボ・ウレチョでアボガドの畑を持っていることや、この自警団を設立して以後よい成果が出ていることを語った。例えば、自治体アリオ・デ・ロサレスのロス・アテス地区ではカルテル・ロス・ビアグラは完全に姿を消したそうだ。

自警団のリーダーは「小山なども20人から60人のグループを編成して徹底して歩いてカルテルの組員を一掃した。それはこれまで政府がやらなかったことだ。そのようにして彼らを追い払った」と取材に答えた。さらに、「我々の努力の甲斐があった。我々が武装していることもあって、暗殺、誘拐、ゆすり、車の盗難などが少なくなった」とも付言した。

市、州、連邦政府当局が安全を保障してくれるのであれば彼らは畑仕事に戻る意向だという。

アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は、政府でカルテルの存在が顕著なミチョアカン、グアナフアト、サカテカスといった州の住民を保護して犯罪を減らすために努力しているとして、自警団といった組織を創設することは控えるように要請している。

しかし、住民側からの警察や軍隊への信頼が薄いことが一番の要因であり、犯罪が起きても例えば警察にそれを通報しようとしない傾向にある。なぜなら、警察も犯罪組織と関係をもっているかもしれないという恐れがあるためだ。メキシコでは、通報した人が逆に狙われるのではないかという不安があるのだ。

白石 和幸

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