親の反応は「いい結婚じゃないな...」 シングルマザーと結婚の55歳漫画家が“一番気を使うこと”

親の反応は「いい結婚じゃないな...」 シングルマザーと結婚の55歳漫画家が“一番気を使うこと”

  • 文春オンライン
  • 更新日:2021/05/04

55歳で突然、8歳と4歳の娘を持つ父親に…ステップ婚の漫画家が語る「子育てでズバ抜けてキツいこと」から続く

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3年前、55歳で8歳と4歳の娘を抱える16歳年下のシングルマザーと入籍。とある事情で、発達障害児である長女と半年におよぶ父子家庭生活を送ることにもなった漫画家・渡辺電機(株)。

当時の様子を綴った漫画『55歳独身ギャグ漫画家 父子家庭はじめました』をnoteで発表している彼に、50歳を過ぎてじわじわと湧き上がった結婚への思い、現在の家族の状況などについて語ってもらった。(全2回の2回目、#1より続く)

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漫画家・渡辺電機(株)さん

育った家庭では好きなことをやらせてもらっていた

――渡辺さんは、どういった家庭で育ったのかを教えてください。

渡辺 父、母、姉の典型的な核家族ですね。父親が裁判官で全国を転々としていたので、一家4人で移動していたという感じで。いたって平凡で、特に傷つくような出来事もなく。転校するのは嫌でしたけど、引っ越した先の方言が理解できないので困るとか、そういうレベルでしたね。

――家庭を持ちたくないなとか、親になるのは嫌だなという気持ちを抱く要素はなかったと。

渡辺 あまり厳しくされなかったし、わりと甘やかされたほうで、好きなことをやらせてもらいました。父親は、自分と同じ法律の仕事をしてほしかったみたいなんですけども。大学をドロップアウトして漫画家になったことに関しては、いろいろと思うところがあったようでしたが、涙目で「好きなことをやれ」と言ってはくれました。そこはありがてぇなぁと思うと同時に、めんどくせぇなぁという複雑な感情がありましたけどね。

結婚に対する父親からの圧

――お父様に「おまえ、結婚どうすんだ?」的なことは言われましたか。

渡辺 「孫を抱いてみたいなぁ……」みたいなのは、ちょいちょい呟いていましたね。「若い女と付き合って、結婚して、子供を作ってほしい」とか。息子が50歳を過ぎてるのを知ってるのに、なにを言ってんだろって(笑)。シャイな人なのであまり声高には言ってはこないものの、なかなかの圧は感じました。

それでも、結婚したいとも、結婚したくないとも思ってなくて、50歳を過ぎたあたりで、「あ、これはしないで終わるな」って……結局、結婚しましたが(笑)。

――結婚しないで終わるなと予感めいたものを感じたけど、どこかで結婚したいなという願望も生まれてきたのですか?

渡辺 寂しいわけではなかったし、真剣にしたかったわけでもないけど、「孫を抱いてみたいなぁ……」と呟く親に対してかわいそうだなという気持ちも少しはあったので。だから、1回くらい結婚を体験してみてもいいかなって。でも、そんなに深刻なもんじゃないです。

あと、両親も僕も、姉だけは結婚するものだと思っていたんです。 だから好き勝手に生きていたんですけど、ぜんぜん姉が結婚をする気配がなくて当てが外れてしまったなと。そういう面も含めて、親には負い目がありました。

――独身で50歳近くになると、急に虚しくなってきますよね。食べていける程度の仕事も雨風をしのげる住まいもあるけど、この先もこんな感じで生きていくのかという虚無感を抱くといいますか。

渡辺 それはありますね。40歳を過ぎると、だんだん死ぬ時までのプランができてくるじゃないですか。漫画家としても、40、50を過ぎると伸びしろみたいなものをそんなに感じなくなる。そうなると、あとはもうきれいに死ぬための準備に必要なお金を稼いでいくだけ。そういうことが、結婚への願望に直接結びつきはしなかったですが。

父親は「あんまり、いい結婚じゃないな……」

――“流れ”で結婚され、いきなり血の繋がらない子供がふたり。ご両親の反応はいかがでしたか?

渡辺 やっと結婚すると聞いたら「なんだ、それは?」みたいな。だいぶショックを受けたようで、父親は絞り出すようにして「あんまり、いい結婚じゃないな……」と言っていました。

まぁ、わからないでもないですけどね。どこかの知らない子のために遺産をあげなきゃいけないのかとか、その手続きとかするのかみたいな。えらく複雑な顔をしてましたけど、娘たちに会うとかわいがるんですよね。結局、後で奥さんと僕との間に男の子が生まれたのもあって納得できたようですけど。

ハードモードのゲームをプレイしている感じ

――50歳を過ぎて子持ちになったわけですが、その年齢だからこそ落ち着いて対応できた育児の場面も多かったのではないですか?

渡辺 やっぱり幼いのでいろいろとやらかすけど、腹が立たないんですよ。もともと、なにかあってもカッとくるタイプではないのもありますが。いろいろと家のものをぶちまけられても「後で片付けるか」と冷静に。若い時はそうはいかなかったでしょうけど。

原稿をグシャグシャにされたり、ご飯を作ったのに「いらない」と言って捨てられたりした時は、さすがに心が折れそうになりましたね。もちろん叱る時もあるけど、感情的にはならないです。そこはもう、難しいゲームを与えられた感覚として捉えています。ハードモードのゲームをいまもずっとプレイしている感じ。

「パパがいつかいなくなるんじゃないか」

――ステップファミリーゆえに気を使う場面はありますか?

渡辺 上のふたりは僕が実の父親じゃないのをわかってますから、「いつかいなくなっちゃうんじゃないか」みたいな不安を抱えているっぽいんです。アユがもうちょっと小さい頃は、一緒に歩いててパッと僕が急に走り出すと死にものぐるいで追いかけてきた。それがかわいくてしょうがなかったんだけど、いまになって考えると父親がいなくなると怖がってたんじゃないかなって。

そこは気を使って、なるべくベタベタできる時はベタベタするようにしてますけどね。アユは小6になって思春期にも入ったので平気になってきましたけど、次女は小1なのでまだまだですね。

それよりも気がかりなのは、次女から2歳になる息子への嫉妬ですね。弟だけ血が繋がってることもあって、特別扱いしてるように思われてるんじゃないかって。保育園から帰ってきた弟をあやしてると、次女がスーッと部屋の奥へ引っ込んで黙々とゲームをするんですよ。それを見ると「ワーッ」となりますね。

だから、3人の子供には均等に接することを、ものすごく意識してます。誰かが淋しそうにしているのを見つけたら、ウザがられるくらいまでかまったりしてますね。ウザいくらいの方がいいだろうと。

――どの家庭でも「お姉ちゃんばっかりズルい」とか、「妹ばっかりズルい」とかありますけど、さらに血のつながった父親ではないという自覚まであるから複雑ですね。

渡辺 それが大きくなっても傷が残らないようにはしたいので。あまり血がつながってないことを意識させないようには気を使っていますけど。

50代にして、ママ友ができた

――子供を持つと人々との関係や地域との繋がり方が激変するというか、住んでいる町の風景は変わらないのに違う世界に入り込んだ気になりますよね。

渡辺 地域社会に自分が溶け込んでいく感じがありましたね。それまで児童館がなんのためにあるのかも知らなかったけど、子供を抱えたら「あぁ、そういうためか」とえらく感心したり。

近所を歩いてて、向こうから小学生とそのお母さんが歩いてくると緊張するわけですよ。「挨拶されるかな?」「こっちから挨拶したほうがいいかな?」「でも、誰だっけ?」とか考えてしまう。そんな場面なんて、以前の自分にはなかったですからね。

ママ友なんか、死ぬまでできないと思ってましたよ。アユと父子家庭期間だった時に小学校の保護者会に行ったら、なぜかお母さんたち全員がうちの事情を知ってて。誰が喋ったんだろうって、その情報網には驚きましたね。

とにかく保護者会に来るお父さん自体が珍しいし、育児するお父さんってお母さん方にすごく好感を持たれるらしいです。ママ友会に呼んでくれたり、いろいろと助けてくれてラッキーだったと思います。パパ友は現在にいたるまでほとんどいないですけどね。というより、育児や学校にパパが一切出てこないんですよね。

独身でいるよりは確実に面白かった

――渡辺家という家族の形で良かったことって、なんでしょう?

渡辺 難しいですね。なにしろ、この家族しか経験ないので。結婚したし、連れ子も経験したし、自分の子供も作ったし、ひと通り全部こなしたのかな。でも、まだ、やってないことのほうが多いのかもしれない。まぁ、独身でいるよりは確実に面白かったかなと。あのまま独身で、なんとなく年を取るんだなというのが全部ひっくり返っちゃったんで。

【マンガ「父子家庭はじめました」第1話を読む】55歳漫画家に、突然小学生の娘が…「おれは全くわかっていなかった」初めての父子生活の顛末

写真=深野未季/文藝春秋

55歳漫画家に、突然小学生の娘ができて…「おれは全くわかっていなかった」初めての父子生活の顛末へ続く

(平田 裕介)

平田 裕介

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