「自分の感覚を信じる」 パ・リーグ投手三冠の福岡ソフトバンク・千賀滉大(蒲郡出身)の調整法 【前編】

「自分の感覚を信じる」 パ・リーグ投手三冠の福岡ソフトバンク・千賀滉大(蒲郡出身)の調整法 【前編】

  • 高校野球ドットコム
  • 更新日:2020/11/21

2020年のパ・リーグ全公式戦が終了。最多勝、最多奪三振、最優秀防御率の投手3冠を獲得したのがソフトバンク・千賀 滉大蒲郡出身)だ。育成選手出身ながら、通算66勝、1006奪三振と、ソフトバンクでは押しも押されもせぬエースへのし上がり、今や多くの高校生投手が憧れる存在となった。そんな千賀はなぜ先発投手として活躍し続けるのか。

なぜ千賀はキャッチボールを最重要視するのか?

「自分はどちらかという打撃が好きな投手でした。打撃練習もよくしていたと思います」

高校時代についてそう振り返る千賀。もちろん投手としてレベルアップするためにいろいろなトレーニングに取り組んだ。だから投手としての思い出は「きつい練習しかない」と振り返る。プロになって、10年。投手はこれほど考えて練習をしないといけないポジションなんだと痛感している。

実際に取材をすすめると、投球、トレーニング、取り組み面においても、踏み込んで取り組んでいるのがわかる。
だが、高校時代から考えて取り組んでいたかというと、「それはなかったです。今の高校生もマックスの数字が好きな傾向にありますが、自分もそうでした。でも大事なのはいつでも、常時140キロを投げられる状態を作れるかどうかですよね」と語る。
高校時代は最速144キロ右腕として注目を浴びていたが、まだプロに入るまで、投手としてのイロハはわかっていなかった。

先発として、いかにしてベストボールに近いストレートを投げるためにはどうすればいいのか。日々苦しみ抜いて、たどり着いたのはキャッチボールでメカニックを確かめることだった。

「自分はフォームのバランスを大事にしていて、例えば5割の力でキャッチボールをして、4割~5割の力のボールがいくようであれば、それは理想とは違うメカニックだと思っています。

ピッチングはイニングを重ねれば、重ねるほど、体のバランスはずれていきますので、さらに故障のリスクや球速低下になりやすい。野球は同じ方向にしか体を使わない特殊なスポーツなので、体のバランスがずれていきますが、自分の体との対話をしていて、5割ほど力の入れ加減でも、6割~7割の力のボールを投げられるようにしてきました」

プロで活躍している投手たちの中では、安定した調子を発揮するために同じフォームで投げる事が重要と言う話を聞くが、千賀自身の考えは異なる。

「日々の体調によって感性が全く違っていますので、同じフォームで投げ続けるというのは難しいです。自分のメカニックを確かめる上で、キャッチボールはとても大事で、ブルペンの投球練習だけでは絶対に良くなりません。これは僕個人の考えとなりますが、そう断言できます」

千賀は何度も取材の中で「キャッチボールの重要性」について口にした。プロの世界で10年間プレーしてきて、その重要性を年々実感しているからだろう。

自分の感覚を信じて

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2020年、投手3冠を獲得した千賀滉大(蒲郡出身) (C)SoftBank HAWKS

昨今、映像を使ってフォーム分析をして、役立てる選手も多くなった。自分が思っている動きと映像で見えた動きのギャップを埋め、日々の投球練習に生かしている。
しかし千賀の場合、自分の投球映像は見ないという。
「僕はほとんど見ないですね。自分の体との会話を行って、体の状態、動きを把握しています」

これは千賀個人のやり方であり、現在、フォーム解析をしながら上達を目指している高校生投手たちはその方法を継続してももちろん良いと思う。ただ視覚から見える部分だけではなく、自分の体から感じる感触を毎日確かめながら確認を行い、調整を進める千賀のやり方は大いに耳を傾けるべきである。さらに現在は回転数を測り、それをパフォーマンスアップに役立てる考え方も浸透してきた。それについても千賀は「高い回転数を出すことを前提にして練習をするのではなく、自分が求めるパフォーマンスを実現して、打者を抑える。その上で数値が高ければいいですし、それにとらわれる必要もない」とあまりこだわる様子はない。

自分の感覚を何より大事にする千賀だからこそ用具選びにもこだわる。とくにスパイクは体と一体となるような感覚を求めている。

「用具選びのポイントとして自分の体が一緒になっているような感覚を求めていますね。自分とスパイクが別の感覚になっているとあまり合わない感じで。『靴ズレ』という言葉があるように、フィットしていないスパイクだとそういう感覚になりやすいです」

そんな千賀は、プロ入り後は、いくつかのスパイクを試して履いてきたが、2017年からスパイクにベルトがついている「コウノエベルトスパイク」を使用している。「自分の体に対して、しっかりとフィットし、体の一部になっている感覚があります」と、自分に合うスパイクを見つけ、現在に至っている。

千賀はこうアドバイスもする。

「見た目も大事ですけど、実際に動いてみて、自分にあうものを見つけていくのは大切だと思います。高校生にとっては難しいですし、それでも自分の感覚に合うものを見つけていく事が大事だと思います」

千賀は非常に自分の感覚を大事にし、体と対話しながらプレーをしている選手だといえる。そして、試行錯誤しながらも、自分なりの考えと答えを持っている。一切のブレがない。なぜ2016年から5年続けて二桁勝利、規定投球回、防御率2点台を維持できる投手であり続けるのか。

千賀の野球に対する考え方、日々の取り組み方を突き詰めると超一流ならではの回答がでてきた。続きは「後編」にて!

(記事=河嶋 宗一

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