巨人・原監督は引責辞任を決断すべき...伝説の巨人OBがそんな苦言を正面からぶつけるワケ

巨人・原監督は引責辞任を決断すべき...伝説の巨人OBがそんな苦言を正面からぶつけるワケ

  • PRESIDENT Online
  • 更新日:2022/09/23

今シーズン、巨人はセ・リーグ5位(9月14日現在)と低迷している。巨人OBの広岡達朗さんは「生え抜きの選手を育てず、他球団の主力選手をかき集めてきたツケが回ってきたといえる。今のチーム作りでは、再び巨人に黄金期が来ることは絶対にない」という――。(第2回)

※本稿は、広岡達朗『巨人が勝てない7つの理由』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

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写真=時事通信フォト

原監督は自ら引責辞任するのが当然だ

昨季は巨人がセ・リーグ3連覇を逃し、日本シリーズで9年ぶりの日本一に挑戦することもできなかった。原辰徳監督にとっては、最悪のシーズンで3年契約の幕を閉じたわけだ。

それでも巨人は新たに原と3年契約を更新した。投打不振のなかでなんとかCS(クライマックスシリーズ)ファイナルステージまで勝ち残ったのは原采配の成果と評価したのだろうが、巨人は2012年以来、日本一になっていない。なかでも原はこの3年間、日本シリーズで宿敵・工藤ソフトバンクに2年で8連敗している。

初代オーナーの正力松太郎さんは、巨人がリーグ優勝しても日本一にならなければ「ご苦労さん。よくやった」と評価しなかった。そんな風土のなかで闘ってきた私から見れば、原は日本シリーズV5を逸したソフトバンクの工藤公康監督同様、自ら引責辞任するのが当然だろう。

楽に勝つ野球のツケが回った

それでも巨人は原に「崩壊巨人」の再建を託したが、私は球界のOBとして、原には一度巨人を離れ、弱いチームや問題を抱えているチームの監督に挑戦してほしかった。

だから私は2015年に2度目の監督が終わったとき、原に電話して「次は弱いチームで教えてみろ。選手に教えて強くしたら監督として勉強になるし、本当の名監督になるぞ」と伝えた。

「巨人の監督を務めて名監督といわれるのはけっこうだけど、本当の名監督は弱いチームを強くして日本シリーズに勝つことだ。そうすれば自分も選手から教えられて、本当の野球の勉強ができるんだよ」

原はそのとき、「いやあ、いいことを教わりました」といっていたが、その後もまた巨人の監督になった。

そして相変わらず、よそのチームが一生懸命育てた主力選手をFA(フリーエージェント)やトレードで集め、オールスターゲームのような野球を続けた。昨季は4年ぶりの10連敗で3年ぶりに負け越したのも、楽に勝つ野球のツケが回ったといえる。

私が「巨人黄金時代復活」はないと断言するワケ

昔の巨人はいまのように、よそで育ったいい選手を金で集めて、あふれた人材を二軍や三軍で調整させるような余裕はなかった。

そのかわり、選手は厳しい競争を勝ち上がってレギュラーになり、つかんだ椅子は必死で守った。控えの選手もなんとかレギュラーからポジションを奪い取ろうと努力した。だから歴代の監督は、激しいポジション争いのなかから調子のいい選手を使うだけでよかった。

だが時代は変わった。1973(昭和48)年に川上巨人のV9が終わってからは、セ・リーグもパ・リーグもヤクルトや広島、西武などの新興勢力が台頭し、2017年からは工藤ソフトバンクに日本シリーズ4連覇を許している。この47年間で巨人が日本一になったのは7度だけだ。

巨人の親会社と歴代監督は、プロ野球の盟主として日本一奪還に全力を傾けた。しかし、V9後は黄金時代復活をめざす方法が間違っていた。

生え抜きの選手を育てて勝つチーム強化の本質を忘れ、他チームで育った有力選手を人気と資金力によってFAやトレードでかき集め、大リーグでは使えない外国人選手を次々に獲得した。

その結果、次代のレギュラー候補を育てるはずの二軍が、あふれた一軍選手の「調整工場」になっている。

これでは巨人に憧れて集まった若者たちのモチベーションを低下させ、やっと一軍に上がってもマシンガン継投やなんでも屋のユーティリティプレーヤーで終わるのでは、黄金時代の復活が実現するはずがない。

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巨人二軍の本拠地であるジャイアンツ球場(写真=CC-BY-SA-3.0,2.5,2.0,1.0/ Wikimedia Commons )

選手を一人前に育てる気がない

2019年から原が3度目の指揮を執るようになってから私が心配しているのは、選手を一人前に育てる気があるのか、ということだ。

丸佳浩を広島から5年契約総額25億5000万円もの巨額投資で獲得したのをはじめ、毎年新外国人や他チームで育った選手をFAやトレードでかき集めた。それでも足りないと思ったのか、大リーグで肩を痛めてマリナーズの1Aに落ちていた岩隈久志まで迎え入れた。

結局、2018年に出戻り採用していた上原浩治は2年、岩隈も何も働かないまま2年で退団したが、二軍にはいまでも獲りすぎて余った外国人とFA複数年契約選手の余剰在庫がゴロゴロしている。

もっともこの間、捕手の大城卓三や内野手の吉川尚輝、外野手の松原聖弥、二刀流の増田大輝らが成長したが、問題はこの生え抜きたちの使い方だ。

バッティングのいい大城がバットで正捕手の座をつかんだかと思ったら、ちょっとヒットが止まると一塁の代役やベンチで代打要員。2020年、バッテリー以外の7つのポジションを守って得点圏打率.355を記録したスイッチヒッター・若林晃弘は昨季も途中出場が多く、96試合で打率.239だった。

足の速い増田も快足を生かした代走のほか、二塁、三塁、一塁、左翼、右翼のかけ持ち生活で、ユーティリティプレーヤーとかスーパーサブといえば聞こえはいいが、どこが本業かわからないなんでも屋でシーズンを終えた。

首脳陣は「やっと一軍の試合に出られるようになったんだからいいじゃないか」というかもしれないが、増田のように大学と社会人を経た選手が、いつまでも便利屋でいいはずがない。

このほか2020年、得点圏打率.448の勝負強さをみせたプロ17年目のベテラン・亀井善行も昨季は出番が少なく、打率.215、本塁打3で現役生活に幕を下ろした。

原がやっているのはアマチュア野球

こうした原の用兵には賛否両論があるだろう。

ひとつはFA移籍の丸は別格として、「2020年6月に楽天との交換トレードで加入したウィーラーや、昨季DeNAからFA加入の梶谷隆幸に巨人の生え抜き組が勝てないのだから仕方がない」という意見。しかしこれは、巨人がウィーラーや梶谷以上の選手を育てていない証拠でもある。

そして、やっと芽吹いてきた若い力を伸ばそうとせず、いつまでも穴埋めの便利屋に使っていたら自前の巨人復活は望めない。監督・コーチは選手の成長を待つのではなく、根気よく指導して不動のレギュラーを作り上げなければいけないのだ。

原のアマチュア野球のような用兵は、投手陣も例外ではない。

先発投手が5回100球をめどに降板すると、左打者には左、右打者には右投手を惜しげもなく繰り出してクローザーまでつなぐ。その典型が昨年6月8日、3-3で引き分けたオリックスとの交流戦だった。

前節、パ・リーグ最下位の日本ハムに1勝2敗で負け越した巨人は、先発・今村信貴が5回無失点、2-0で降板すると、畠世周が6回を0点に抑えたあと、7回には右打ちの紅林弘太郎に右腕・鍵谷陽平、左打ちの代打・T-岡田には左腕サイドスローの大江竜聖を投入。2死一、二塁になると、左の3番・吉田正尚に同じく左の高梨雄平を送ってショートゴロでピンチをかわした。

8回裏は中継ぎエースの左腕・中川皓太が4安打3失点と崩れて3-3の同点に追いつかれたが、この日、巨人が投入した投手は計9人。先発を除くリリーフ8人のうち中継ぎの4人はひとり1アウトずつ取る小刻みな継投で、マスコミは「原のマシンガン継投」と囃し立てた。

9回打ち切りの昨シーズン、巨人はこの試合の前まで7人登板の試合は9度あったが、9人の投入は球団史上初めてだった。

なかでも左打者キラーの中川はこの日が30試合目だったので、評論家の間では「連投の疲れではないか」という声も出たが、私が問題にするのはここではない。

原の極端な小刻み継投がよくない理由は、投手が成長しなくなるからだ。投手は左対右でも、自分の不利な相手を一生懸命抑えようとすれば成長する。不利な相手や状況を一生懸命乗り越えたとき、監督が「よくやったな」とほめてやれば、人間はそれでひとつ成長するのだ。才能があるからプロのユニフォームを着ているのであって、打者が左だから左投手、右だから右投手という使い方はアマチュア野球だ。

高梨や大江のように毎日、極端な左のサイドスローで左打者を抑えていると、いかにも継投策が成功したように見えるが、その投手はそれ以上成長しない。

また当人は休みもわからず、ベンチもいくら休ませたらいいかもわからない状態で左対左を繰り返していたら、だんだん成功しなくなる。

そしてなにより、左対左で成功し、打者が右に変わったら機械的に右投手に代えるようなことをしていたら、左にしか通用しない半端で未成熟な左腕投手になってしまう。

今の巨人の野球はみっともない

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広岡達朗『巨人が勝てない7つの理由』(幻冬舎)

高梨にしても大江にしても、一時抑えを任された中川にしても、ひとり1アウトのショートリリーフができるのなら左打者専用のワンポイントだけでなく、複数回のロングリリーフもできるはずだ。当人たちはワンポイントでも一生懸命務めるが、このまま年を取って引退したら「俺の野球人生はなんだったのか」と思うことになる。それでは遅いのだ。

監督はその試合に勝つためになんでもやる。しかし目の前の試合に勝ちたい、優勝したいのは巨人だけではない。

それでも巨人が常に日本一にならなければいけない球界の盟主なら、前述のオリックス戦のように投手を9人もとっかえひっかえつぎ込むような野球をするのはみっともない。

それも、2年連続でソフトバンクにやられっぱなしの日本シリーズならともかく、まだ6月の交流戦の継投だ。

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広岡 達朗(ひろおか・たつろう)
野球解説者
1932年、広島県呉市生まれ。早稲田大学教育学部卒業。学生野球全盛時代に早大の名ショートとして活躍。1954年、巨人に入団。1年目から正遊撃手を務め、打率.314で新人王とベストナインに輝いた。引退後は評論家活動を経て、監督としてヤクルトと西武で日本シリーズに優勝し、セ・パ両リーグで日本一を達成。1992年、野球殿堂入り。2021年、早稲田大学スポーツ功労者表彰。『動じない。』(王貞治氏・藤平信一氏との共著)、『巨人への遺言』『中村天風 悲運に心悩ますな』『日本野球よ、それは間違っている!』『言わなきゃいけないプロ野球の大問題』『プロ野球激闘史』(すべて幻冬舎)など著書多数。
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広岡 達朗

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