
【写真:Getty Images】
●マンチェスター・ユナイテッドがUEFAチャンピオンズリーグ出場権獲得
プレミアリーグ第32節の延期分、マンチェスター・ユナイテッド対チェルシーが現地時間256日にオールド・トラッフォードで行われ、マンUが4-1で勝利した。今季リーグ戦37試合目にして初の1試合4得点を挙げたマンUの快勝の裏には、どのような要因があったのだろうか。(文:井上泰輔)
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【動画】マンチェスター・ユナイテッド対チェルシー ハイライト
残り2試合で勝ち点1以上を獲得すればUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場圏内の4位以上が確定する状況だったマンUは、この試合に勝利したことで来季のCL出場権獲得が決まった。エリック・テン・ハフ監督は就任1年目で、カラバオカップ優勝に続き、2つ目の大きな成果を残した。
順位は3位に浮上しており、最終節で勝利すれば、優勝争いを演じた上位2チームのマンチェスター・シティとアーセナルに次ぐ順位でフィニッシュすることができる。この2チームとは勝点だけでなく、チーム全体の完成度にまだ大きな差があるが、テン・ハフ監督は結果を第一に考え、成長を促しながら現有戦力をうまく使いこなして勝ち点を積み重ねていった。その戦いぶりは賞賛されるべきものだろう。
そして、そのテン・ハフ監督の結果を何よりも重視した試合に対するアプローチは、今日の試合でも見受けられ、快勝の大きな要因となっていた。また、その戦い方を勝利に結実させるためのキープレーヤーの存在も大きかった。
●試合の入り方と先制後の振る舞い
マンUはアグレッシブに試合に入った。チェルシーのキックオフで試合が始まると、1トップのアントニー・マルシャルが先陣を切って相手GKまでプレッシャーをかけ、開始15秒ほどで、敵陣ペナルティエリア付近で最初のボール奪取に成功した。立ち上がりはこのように敵陣でのハイプレスを指向し、ボールを奪ったら素早くゴール方向に矢印を向けていた。
すると6分、左サイドでFKを獲得し、クリスティアン・エリクセンの正確なクロスを中央でカゼミーロが頭で合わせて早々と先制に成功した。
結果的にセットプレーから生まれたものではあったが、マンU先制点は立ち上がりのアグレッシブな姿勢がもたらしたものだった。テン・ハフ監督は立ち上がりから攻撃的な姿勢で入ることで相手に脅威を与え、あわよくばそのまま先制して試合の主導権を握ろうと試みたのだろう。
ただ、前がかりになった守備の裏を突かれてチェルシーにカウンターのチャンスを与える危険なシーンもあった。10分以降は徐々に敵陣での圧力は弱めていき、自陣でのブロックからカウンターを狙う戦い方がメインになっていった。
チェルシーには右寄りでプレーするカイ・ハヴァーツのポストプレーや、ノニ・マドゥエケのボールキープ、カーニー・チュクエメカのボールキャリーなどによって、右サイドから前進を許してしまうケースが多く、自陣でのプレーは長くなった。しかし、マンUのブロックは強固だった。ラインを必要以上に下げすぎず、中央を優先してしっかりとゴールへの進路閉め、ブロックの外の相手選手をマーカーがしっかりと捕まえて自由を与えなかった。
こうして時間が経過していく中で、攻撃に移った際にはマンUらしいカウンターを中心に追加点のチャンスを作り続け、結果的に3得点を追加した。4-0になってから少し隙ができて1点は失ったものの、時間帯と場所によってメリハリをつけたテン・ハフ監督の守備構築は試合を通じて光っていた。本来のポゼッションを高めるスタイルには固執せず、まずは失点をしないことから考えたテン・ハフ監督のアプローチが勝利へとつながった。
●攻守におけるキープレーヤー
こうしたテン・ハフ監督の戦い方には欠かせないキープレーヤーがいる。それがカゼミーロだ。レアル・マドリードで勝つ術を知り尽くしたベテランは、マンUにおいても存在感抜群で、今日も攻守で光っていた。
一番貢献度が高い部分はやはりボール奪取だ。ボールを奪うチャンスがあれば、ピッチのいたるところで激しくボールホルダーに圧をかけ、高確率で奪うか、もしくは相手の攻撃を遅らせる。今日もその強度は抜群で、立ち上がりのハイプレス時は狙いを定めたタックルで即時奪回に貢献した。
またブロックを敷いた際には、中央でライン間に侵入してくる相手を潰し、その他にも、CBが出ていったスペースのカバーや、クロス対応などの仕事もこなし、守備ブロックの強度を保証した。今日の試合も含め、相手にボールを持たれてもそう簡単に失点を許さないのはカゼミーロの存在が非常に大きい。こうした幅広い守備面での貢献により、カゼミーロはテン・ハフ監督の守備構築の核を担っている。
さらにカゼミーロは攻撃面でも輝いていた。セットプレーではターゲットの1人として得点源になり、今日も先制点を挙げた。また、オープンプレーの中では機を見て積極的に攻撃参加をする。2点目のシーンでは、アシストをしたジェイドン・サンチョにノールックで華麗なスルーパスを供給した。
カゼミーロは自陣からのビルドアップでの貢献度に課題があるが、その弱点はエリクセンのサポートを受けることで隠し、その分、長短問わず質の高いキックや、タイミングの良い攻め上がりという長所を活かして、攻撃に貢献している。
来季以降チームがよりポゼッションを重視していった場合に、カゼミーロがアンカーとして最適なのかには疑問が残るが、少なくともテン・ハフ監督1年目の今季のマンUを語る上では、カゼミーロの存在が最も大きかっただろう。
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編集部