根絶したはずの天然痘の治療薬が承認へ、「生物兵器として使われること」の懸念により

根絶したはずの天然痘の治療薬が承認へ、「生物兵器として使われること」の懸念により

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  • 更新日:2021/06/12
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アメリカの医療品規制を行うアメリカ食品医薬品局(FDA)が、2021年6月4日に天然痘の治療薬「テンベキサ(ブリンシドフォビル)」を承認しました。天然痘ウイルスは1980年に撲滅宣言が出されており、すでに自然界には存在しないといわれていますが、今後、化学兵器として使用される可能性が懸念されています。

FDA approves drug to treat smallpox | FDA

https://www.fda.gov/drugs/drug-safety-and-availability/fda-approves-drug-treat-smallpox

天然痘は人に対して強い感染力を持ち、感染した人には高熱・頭痛・腰痛といった症状が出る感染症です。感染者は頭部や顔面に皮膚と同じかやや白色をした豆粒状の丘疹が生じ、全身に広がっていくことからこの名前が付けられました。致死率は平均で20~50%と高く、過去に世界各地で流行し、多くの死者を出してきました。

天然痘の症状は、以下の記事から見ることができます。

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歴史上で多くの死者を出した病気の症状を特殊メイクで再現するとこうなる - GIGAZINE

1980年5月8日にWHOによって「地球上からの天然痘根絶宣言」が出され、自然界において天然痘ウイルスが存在しなくなったと宣言されました。一方で、天然痘ウイルスは研究目的でアメリカとロシアの施設に保管されています。

自然界にウイルスが存在しなくとも、上記のような研究施設からウイルスが流出する危険性は常にあります。世界的に大流行している新型コロナウイルス(COVID-19)は、その発生源がまだわかっていないものの、中国の武漢研究所から流出したのではないかと考えられてます。

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新型コロナウイルスの「武漢研究所流出説」が世界を動かすまでの戦いとは? - GIGAZINE

また、これまでも天然痘はアメリカ政府によって「生物兵器テロの可能性が高い感染症」にも指定されてきました。

このような背景から、天然痘ウイルスに対する医療品開発が重要だと判断され、FDAが2021年6月4日付けで天然痘治療薬「テンベキサ(ブリンシドフォビル)」を承認しました。

承認により、テンベキサは、必要性の高い新薬開発を優先的に行う「ファストトラック」が適用され、希少疾病用医薬品の指定を受けたことになります。通常の薬であれば申請書のレビューは10カ月以上かけて行われますが、この措置によりテンベキサは6カ月でレビューが可能になります。また、病気の深刻さを鑑み、実験が迅速にすすめられることが許可されました。

天然痘が自然界に存在しないことから、テンベキサの開発は天然痘ウイルスの近縁ウイルスによって有効性が確認されたとのこと。動物を対象とした実験では、プラセボで治療された動物に比べ、テンペキサで治療された動物は生存率が高いという結果が示されました。一方で、テンベキサには動物有効性規則が適用されたため、「人を対象として臨床試験を行うには倫理性と実行可能性が十分ではない」という前提のもとで、研究の有効性の結果が認められることになりました。

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