「菅首相が『東京五輪』を『中止』にする可能性はある」...米大手紙コラムニストからの“警鐘”

「菅首相が『東京五輪』を『中止』にする可能性はある」...米大手紙コラムニストからの“警鐘”

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/06/11
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【前編はこちら】→『「日本は『東京五輪』を開催しないほうがいい」…米大手紙コラムニストが“断言”するワケ』

「東京五輪は開催しないほうが日本らしい」――。米紙ロサンゼルス・タイムズのスポーツ・コラムニスト、ディラン・ヘルナンデス氏はそう断言する。いま日本が五輪開催に突き進めば、それは日本人がこれまで大切にしてきた価値観や日本の文化に反することになるのではないか、と。

そして、もしこのまま日本が五輪開催を強行すれば、日本にとって信頼を失う事態が起こり得る可能性もあるとさえヘルナンデス氏は指摘する。「判断の日」が刻一刻と迫ってきている中、ヘルナンデス氏が海の向こう側からどうしても伝えたかった“痛切なメッセージ”――。

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東京五輪は強行されるのか… photo/gettyimages

日本の「予防する文化」

「お金を最優先するアメリカでは五輪を開催して当たり前という雰囲気があります。しかし、日本はお金だけを優先する社会ではないことを考えると、僕としては、五輪は開催しないほうが日本っぽいと思うし、むしろ開催することは日本の文化に反することになるのではないかと思うわけです」

そう語るヘルナンデス氏はまた、日本は問題が起きないよう予防する文化であるのに対し、アメリカは問題が起きてから対処する文化だと指摘する。

「例えば、球場の場合、日本では予防のためにファールグラウンドにずっと前から、きちんとネットが張られていました。一方、アメリカでは、ファールボールやバットがファンにあたって訴えられるという問題が起きた時点で初めてネットを張るようなところがあるんです」

東京五輪開催「常識から外れている」

なるほどと思う。筆者も“問題が起きてから対処するアメリカ”については、日常生活を送る中、感じていた。

例えば、筆者の住まいの近くに交通量が多い大通りがある。しかし、横断歩道の数が少ないため、筆者も車が来ないタイミングを見計らっては横断していた。ある時、その大通りを横切っていた歩行者が車にはねられるという事故が起きた。すると、数日後には、その歩行者が横切ろうとしていたところから程近い交差点に新しく横断歩道が敷かれていた。

交通事故の予防に力を入れていないことには問題を感じていたが、事故後の対応は速かった。

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事前対応と事後対応 photo/iStock

新型コロナウイルス対策においても、日本は、手洗い、消毒、マスク着用など徹底した予防に力を入れた。それが奏功して、当初は、他国と比べて、感染が抑えられていた。

一方、アメリカの場合、日本のようには予防に力を入れていなかったことはマスク着用率が低かったことから明らかだ。しかし、感染拡大という大問題が起きたため、すぐにワクチン開発に乗り出すことで問題に対処した。

しかし、今、日本の“予防する文化”は機能していないといえるだろう。なぜなら感染を本気で予防したいのなら日本政府は五輪を中止するはずだが、開催を強行しようとしているからだ。

「五輪を開催したら、当然、感染者が出ることになります。バブル方式で予防するとはいっても、感染が起きるのは必至で、万全とは言えません。慎重できちんとしている日本だから、開催中止による予防というやり方が取られるべきなのに、なぜ、日本政府が日本の常識から外れるような行動をとってるのか理解できません」

「ポチ」でいいのか

お金よりも大切なモノがあると考える日本人。きちんとした対応をとる日本人。そして、予防を重視する日本。しかし、日本政府は、今、そんな日本の素晴らしい文化に反する行動をとっているとヘルナンデス氏は嘆く。

そして、IOCやアメリカの言いなりになるなと力説する。

「IOCは収益の7割を占めるテレビ放映権料がほしいので絶対に開催したいでしょう。また、日本で五輪が中止になり、日本が莫大な借金を背負ったら、今後、五輪開催地に手をあげる都市もなくなるのではないかと憂慮していると思います。

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IOCのバッハ会長 photo/gettyimages

それでなくても、五輪のイメージはすでに悪くなっています。五輪のためにお金をかけて球場やアリーナをつくっても、終わればほとんど使われていません。ギリシャも借金をして水泳施設を作りましたが、まったく使われていません。経済効果ももたらされませんでした。次に五輪が開催されるのはパリやロサンゼルスなどすでに五輪に対応できるスポーツ施設がある国ですが、これからは、そんな施設がある国以外は五輪に入札しなくなるのではないかと思います。

アメリカもIOCに巨額の放映権料を払うNBCも、五輪を開催したいでしょう。しかし、日本は彼らに従う必要はないと思います。日本は言いなりになるような愚かな国であってほしくないです。それに、開催したら、日本は何でもいうこときく国だというイメージも強まるでしょう。特に、アメリカサイドから“ポチ”だと思われてしまう可能性もある。

また、日本では、経済的、政治的に五輪と絡んでいない人々からは五輪をやろうという声があがっていません。五輪が世界の国々が絡まない、日本国内だけのイベントだとしたら、緊急事態宣言が出ている今の状況では絶対にやらないと思います。日本政府には、日本の人々にとって最善といえる判断をしてほしいと思います」

「いま菅首相が五輪中止を決断したら…」

しかし、五輪を中止にした場合、世界は日本をどう見るだろうか? イメージダウンになるのではないか? ヘルナンデス氏はそんな懸念をこう言って払拭した。

「世界は、日本が開催できなかったら、世界のどの国も開催できないと思うでしょう。日本は世界に良いイメージを与えているからです。トヨタ車にこだわっているアメリカ人は多いし、アニメ文化も世界中で人気があり、宮崎映画も愛されています。日本人スポーツ選手も活躍しており、彼らは、基礎ができていてしっかりしているというイメージはもちろん、アメリカのスポーツ選手に比べると礼儀正しく、インテリだという印象も与えています。

僕はダルビッシュ投手に何度かロング・インタビューをしましたが、記事を書くたびに、読者から“こんなに頭がよくて、精神的にも安定していて、素晴らしい選手がいるのか”という感動のコメントが寄せられます。日本人スポーツ選手は日本のイメージアップに貢献しているのです。

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菅首相は「決断」できるか photo/gettyimages

菅首相が五輪を強行しようとしているのは、五輪に投入した莫大な金を回収したいからでしょうが、今、彼の支持率は急落しています。80%以上の国民が五輪に反対の声をあげていることを考えると、五輪を中止にしたら勇気ある行動だと評価され、支持率は上昇し、選挙にも有利になるのではないでしょうか。

五輪を中止にしても日本のイメージダウンにはなりません。むしろ、五輪開催により感染が拡大したら、世界に与えるイメージはダウンすることになるでしょう」

五輪開催まで50日を切った。そんな中、ヘルナンデス氏は思う。日本政府は日本の文化に抗うことのない判断をしてほしい。それは他でもなく、五輪中止という判断だ。

「日本はきちんとしている国です。だから、僕としてはまだ政府が五輪を中止にする可能性があると思っているんです」

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