優秀な学生が内定を取る"イメージ"の会社TOP20

優秀な学生が内定を取る"イメージ"の会社TOP20

  • 東洋経済オンライン
  • 更新日:2022/06/23
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伊藤忠商事は「優秀な学生しか入れない」イメージの会社の首位に君臨する(写真:i-flower/ PIXTA)

4月になると就活サイト各社が「就職人気ランキング」を発表する。これは学生の投票によって、人気企業を選んでおり、基本は「自分が志望したい、入りたい」企業ランキングだ。男女、文理、地域、調査時期によって内容は異なるし、そもそも投票学生層に就活サイトによる差異があるので、発表されるランキング企業には個性がある。

今回紹介するのは、「優秀な学生しか入れない」イメージの会社だ。ニュアンスとしては、学生に「憧れはあるが、自分より優秀な学生でなければ内定は取れないだろう」という会社を選んでもらっている。

使用するデータは、HR総研が2022年3月に実施した「楽天みん就」会員対象の「2023年卒就職活動動向調査」だ。

伊藤忠商事が他社を圧倒

就活における人気企業の顔ぶれを見ると、数年単位ではあまり変わらないことがほとんどだったが、この数年はコロナ禍による影響を受けている。コロナ禍以前には、全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)のエアライン系2社の人気が高かった。この2社は定番のトップグループであり、なぜかつねにANAのほうが上位だった。しかし、今回紹介するランキングに両社の名前はない。

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コロナ禍で、航空機による移動が激減し、採用が中止になったからだ。現在は両社とも採用を再開しているが、事業環境は依然厳しく、トップグループへの復帰にはまだ時間がかかりそうだ。

現在不動の座を占めているのは伊藤忠商事だ。2018年卒以前では電通がトップになることが多かったが、2019年卒以降は伊藤忠商事の首位が続く。

以前から商社人気は高かった。5大商社(三菱商事、伊藤忠商事、三井物産、住友商事、丸紅)という総称名もあるし、双日と豊田通商を加えて7大総合商社と呼ぶこともある。ただし、10年ほど前は財閥系の人気が高く、その中でも三菱商事、三井物産が抜きん出ていた。

しかし、2010年代半ばの頃から、伊藤忠商事が商社人気の1位、2位は三菱商事という構図が定着した。今回の調査でも三菱商事は5位だ。ただ、得票ポイントは伊藤忠商事の文理合計が163なのに対し、三菱商事は合計で40と4倍以上の開きがある。この背景には伊藤忠商事の好業績や話題性がある。2010年代に業績首位の期間が長かった。

学生のコメントを読むと、伊藤忠商事に対しては、「商社の中で伸び率が高いから」や「人気企業で首位を獲っているから」と業績や就職人気ランキングへの言及が多い。商社の活動内容は多岐にわたり、少々わかりにくいので商社を比較するときに売上高などの数字に着目していることがうかがえる。

三菱商事(5位)に対しては、「商社は、留学に行っていて優秀な人が多く行くイメージがあり、その中でも三菱商事は別格のような風格がある」「最も難易度の高い総合商社の中でもトップであるから」と、格の違いを感じとる学生が多いようである。

直近の業績(2022年3月期連結決算)を見ると、7大商社はいずれも好調だが、とくに三菱商事の伸びが大きく、売上高、最終利益ともに総合商社の中でトップだ。この好調な業績は次年度以降のランキングに影響する可能性がある。

2位にアクセンチュア

今回調査の2位はアクセンチュアだ。コンサル・シンクタンク系を志望する学生は上位校や理系に多く、野村総研(7位)のような国内企業もあれば、外資系コンサルを志望する学生も多い。しかし、2010年代にコンサル業界のトップ企業としてアクセンチュアの評価が定着しており、他のコンサル企業との差は大きい。

学生が、「優秀学生」と「アクセンチュア」をセットで連想する理由をコメントから探ってみると、まず面接での難関問題がある。「フェルミ推定等、難易度の高い選考を突破しているため」というコメントがあるが、フェルミ推定はアクセンチュアで出題されるという伝説がある。

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次に、Twitterによる口コミ拡散だ。「Twitterなどでよくそのような内容の投稿を見かけるから」という内容を書いている学生が3人いる。就活でTwitterを使う学生はいわゆる意識高い系に分類されるが、そういう学生同士が「アクセンチュア=就活難関企業」という伝説を増幅させているように見える。

ほかのコンサル企業に比べ、ITに特化していることも学生は知っている。「コンサル=優秀な学生というイメージ。それに加えて、国がバリバリに推しているIT技術に特化しているため、優良な人材を確保しようと、アクセンチュアも躍起になっていると聞いている」。

野村総研も優秀学生を採用しているイメージが強く7位に入っている。ただし、その理由は「内定者が高学歴だから」「有名企業だから」「人気だから」とイメージ先行のコメントが多い。

また、SIerのNTTデータは14位だ。「学歴フィルターは薄いが、本当に優秀な人が集まるイメージ」とコメントにある。

ITに関わる企業の採用は能力主義なので、学歴ではねられることはないはずだ。しかし、自信のない学生は応募をためらうから、結果的に高学歴の学生が多くなるのは当然だろう。

「年収が高い」イメージ

3位のキーエンスはトップグループに定着している。コメントには「給料がとてもよい印象がある」「若手から年収が高く、裁量権の大きい仕事であると思うから。選考通過が難しそうだから」「年収も倍率も高いから」と「年収」「給料」というフレーズが目立つ。

「キーエンス=高収入」という図式が成立した背景には、スマホとSNSの普及があると思う。というのは、2010年代の半ばあたりまで、キーエンスの知名度はそれほど高くなかったからだ。しかし、口コミサイトなどでキーエンスの年収が知れ渡ると、その情報が再生産されて多くの学生が周知するようになったのだと思う。

4位の味の素も知名度が高い。ただし、キーエンスと異なり、日常生活の中で馴染んでいる知名度だ。いまでは調味料の味の素をそのまま使う家庭は少ないだろうが、クックドゥー(Cook Do)で中華料理を作る、あるいは冷凍ギョーザのお世話になっている家は多いはずだ。日本人なら「誰もが知っている企業だから」、家族も安心する。ただ「年収がよく、福利厚生もよく、学歴もよい人たちの中で競争されている」から難易度も高い。

6位の楽天グループも、近年とくに就活生に意識されるようになった。最近の楽天の事業拡大が目立ち、中でも学生の関心が高い携帯電話事業によって知名度が向上したのだろう。学生ユーザーの取り込みのため、大学キャンパスのある地域での基地局整備も知名度を上げたはずだ。

ただ、コメントを読むと、学生が強い印象を持つ理由は英語力だ。「社内の公用語が英語と聞いた事や、TOEICなどの英語資格で非常に高い点数が要求されるから」「英語が公用語と聞いたから」「TOEIC800以上の人が多いらしいから」と強烈なインパクトを受けている。

英語力のない学生は応募できないが、排除された学生は悪い印象を持っているわけではないようだ。

広告業界も目立つ。電通(10位)は総合広告、サイバーエージェント(19位)はインターネット広告の最大手企業だ。

電通に対しては「人気の高い広告代理店の中でも最大手であるから」「倍率が高くて選考が大変そうだから」というコメントがあるが、業務内容には触れられていない。サイバーエージェントに対しては「企業の考えが上昇志向で、積極的。内定者に対して事業提案のイベントも行っているため」「メガベンチャーだから」と元気のよさが学生に伝わっている。

両社とも広告業界と言えばその通りだが、実態はかなり異なる。電通はグローバルに活動しているし、国内の地方創生事業にも携わっている。一方のサイバーエージェントはインターネット広告も手がけるが、IT企業の側面もあるし、Abemaテレビも提供している。

勢いのあるIT企業

現在は電通の規模が圧倒的に大きいが、勢いはサイバーエージェントにある。今年の5月20日にサイバーエージェントの時価総額が終値ベースで電通を上回った。原因は、電通の海外事業がコロナショックで低迷したことだそうだ。

こういう情報が口コミで広まると、サイバーエージェントを志望する学生はさらに増えそうだ。

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今回のトップ20を見ると、楽天グループ(1997年設立)とサイバーエージェント(1998年設立)が際だって若い。ヤフーのアメリカでの設立は1994年だし、キーエンスは1974年と50年未満の歴史だが、そのほかのほとんどの企業は100年を超す歴史を持っている。

日本にはベンチャーが少ないといわれるが、楽天やサイバーエージェントのような成功例が目立ち始めた。来年度もこの2社が「優秀な学生が内定を取るイメージが強い会社」に選ばれるだろう。いまわれわれが予想しないベンチャー企業も登場するかもしれない。

(佃 光博:HR総研ライター)

佃 光博

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