泥沼化するナゴルノ・カラバフ紛争。その陰で使い捨てにされる「傭兵」たち

泥沼化するナゴルノ・カラバフ紛争。その陰で使い捨てにされる「傭兵」たち

  • ハーバービジネスオンライン
  • 更新日:2020/10/16
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ASKERAN, NAGORNO-KARABAKH — OCTOBER 13, 2020(Marcus Yam / Los Angeles Times via Getty Images)

◆泥沼化するナゴルノ・カラバフ紛争とは?

最近は日本のメディアで取り上げられるようになった南コーカサスに位置するナゴルノ・カラバフ紛争であるが、そこではロシアとトルコが雇っている傭兵の戦いが繰り広げられていることについては殆ど触れていない。

ナゴルノ・カラバフ紛争に直接絡んでいるのはアルメニアとアゼルバイジャンの両国。それぞれ1991年にソ連から独立した国である。紛争中の地域というのは1921年に当時のソ連によってアゼルバイジャンの領土とされた地域のひとつで、そこの住民の7割がアルメニア人。彼らに自治権が与えられて1923年に人口15万人のナゴルノ・カラバフ自治州が成立した。その翌年にはナゴルノ・カラバフ共和国として独立を宣言した。それ以後、そこで生活しているアルメニア人はアルメニアに編入されることを要求している。それを許さないのがアゼルバイジャン政府だ。

これまで双方の小競り合いは頻繁に起き、時に大規模な武力衝突になるということを繰り替えしている。今回もそれが先月末から始まった。

◆汚い仕事=戦争は傭兵任せ

ところが、最近の武力紛争で目立つようになっているのが、自国民からなる軍隊以外に傭兵を雇って自国民の犠牲者をより少なくするという傾向にあることだ。要するに、汚いしかも危険な仕事を傭兵にしてもらい、それに対して報酬を支払うというものだ。

今回の紛争で、アゼルバイジャンにはトルコが雇った傭兵シリアのトルクメン人がそれぞれ軍隊の中に加わっている。

「シリア人権監視団(OSDH)」によると、トルコ政府が傭兵に出している報酬は1000ドルから3000ドルまでだと推察されている。傭兵として働いている層の人々が通常稼ぐ賃金はひと月50ドルくらいだから、傭兵の仕事は危険であるが引き受ける者に不足することはないという。

またOSDHは、10月6日に傭兵50数名の遺体が彼らの郷里に送られたということも報告している。

トルコとアゼルバイジャンの両政府は勿論この傭兵の存在は否定している。〈参照:「El Pais」〉

◆アルメニア側にはプーチンも間接的に関わる傭兵舞台

一方のアルメニアの方はロシア人の傭兵組織「ワグナー」の戦闘員が派遣されている。ワグナーはプーチン大統領が間接的に関係している傭兵部隊だ。ウクライナ出身でロシア特殊部隊の中佐だったディミトリー・ウトキンが創設した傭兵部隊で3000人から5000人の戦闘員から成る陣容だとされている。

ワグナーの存在が知られるようになったのはウクライナ東部の親ロシア派の武装勢力とした活躍したことからである。クリミア併合の際にも彼らが活躍している。また、現在のベネズエラのマドゥロ大統領の護衛などにもワグナーの戦闘員が活動している。

この傭兵部隊に資金を提供しているのはイブジェニ・プリゴジンという人物で、彼は「プーチンのシェフ」と呼ばれている。公共事業の受注で利益を上げている人物で、プーチン大統領の意向を反映させた動きをしている。

◆死んでも「プーチンの汚点」にならない使い捨ての傭兵

ロシア人から成る戦闘員は3000ユーローを稼げるということで、志願兵を募るのに事欠かないということらしい。何しろ、ひと月200ユーロ程度しか稼げないロシアではこの報酬は魅力あるとされている。

但し、戦闘で死亡してもロシア兵の死亡とは公には公表されない。もちろん、それはプーチンが望むことだ。というのも、彼らが戦死してもロシア兵の死亡とはされないからプーチンの汚点にはされないからだ。

アルメニアは現在までの戦闘による死者525人と民間人20人と発表し、アゼルバイジャンは民間人41人の死亡と負傷者205人は公表しているが、兵士の死亡については明らかにされていない。

この紛争が長引けが昨年開通したカスピ海からのアゼルバイジャンからトルコを経由してヨーロッパに輸送されている石油と天然ガスの供給に支障を来す可能性もある。

現在、トルコのエルドアン大統領がトルコ、ロシア、アルメニア、アゼルバイジャンの4か国協議を提案している。

<文/白石和幸>

【白石和幸】

しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身

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