ニューノーマル時代、従業員エンゲージメントはどのように強化すべきか

ニューノーマル時代、従業員エンゲージメントはどのように強化すべきか

  • マイナビニュース
  • 更新日:2021/06/10
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中堅中小のDXはTeamsの導入が第一歩 - マイクロソフト三上氏

新型コロナウイルスの影響により、私たちの働き方は大きく変化しました。また、デジタルトランスフォーメーション(DX)の浸透も従業員の「働く」環境を変えつつあります。

このように変質する時代において、「企業は人材をどのようにマネジメントしていくべきか、そこで必要なものは何か」について、HRエグゼクティブコンソーシアムの代表である楠田祐氏、そして米オラクル・コーポレーション HCM製品開発 製品ストラテジー シニアディレクターである横井クリスティーヌ由美子氏が対談しました。以下、その内容を紹介します。

○楠田 祐氏
HRエグゼクティブコンソーシアム 代表
東証一部エレクトロニクス関連企業を経て、ベンチャー企業社長を経験後、中央大学ビジネススクール客員教授(MBA)を7年務める。2017年より現職。専門は人事部門の役割と人事の人たちのキャリアにおける研究

○横井クリスティーヌ由美子氏
米オラクル・コーポレーション HCM 製品開発 製品ストラテジー シニアディレクター
製品戦略の策定と製品ポジショニングの専門知識を持つソフトウェアアプリケーションのプロフェッショナル。Oracle Cloud HCM製品の市場や顧客の需要を分析して将来の製品の方向性を導き、ドメインの専門知識とソフトウェア開発の経験を生かして製品ビジョンを提示する。ニューヨーク在住。

非正規社員やギグワーカーも含めてマネジメントすべき時代

--初めに、ビジネスや人事を取り巻く現状について教えてください--

横井氏: ディスラプションという言葉でよく説明していますが、変化のスピードが増して、ビジネスや人事にもさまざまな影響が生じています。例えば、従来はなかった仕事が生まれているほか、仕事で求められるスキルも変わってきている。こうしたダイナミックな変化があります。

それと関連して、派遣社員や臨時社員、あるいは最近よく言われるギグワーカーなど、正社員やパートとは異なる働き方が広まっています。こうした変化も仕事を変えているし、フレキシブルな組織が求められる要因になっています。

楠田氏: 日本では雇用されている人たちの40%が非正規社員であり、現在はギグワーカーも増加しています。こうした正社員ではない人たちについても、タレント・マネジメントのシステムを使ってきちんと育成していく、そうした思想がアメリカだけでなく日本でも広がってきていると思います。

横井氏: テクノロジーも大きなトレンドです。テクノロジーが企業の至る所で使われるようになり、それが仕事に大きな影響を及ぼしています。その一例がAIで、ワークプレイスの中にAIが組み込まれ、AIの役割が拡大し、それがデジタル化を促して仕事の性質を変えていくという形です。

楠田氏: テクノロジーの観点において現在最も重要なことは、自社の事業にDXをどう実装するかです。ただ日本企業に対してアンケートを実施すると、DXを「実施中」あるいは「実施に向けて検討していると回答するのは約半数で、残り半分は情報収集の段階で止まっていたり、まったく取り組みを行っていなかったりという回答になります。

一方、アメリカでは85%の企業がDXを「実施中」あるいは「実施に向けて検討中」という状況です。おそらく、中国も多くの企業がDXを実装し始めている。このように見ると、日本は先進国の中でもDXの実装が遅れていて、「DX=ペーパーレス」と思っている経営者も少なくない。この差を埋めるためにも、本当にDXをやっていかなければならないと改めて感じています。
アフターコロナに向けて人事部が考えるべきこと

横井氏: トレンドという観点では、新型コロナウイルスも避けて通れません。2020年は多くの企業が新型コロナウイルスの影響を受けましたが、今後もこうした事態に対処していくことが求められるでしょう。感染に歯止めがかかり、オフィスに戻ることが可能になったとしても、オフィスワークとテレワークが混在した働き方が今後も続くと思われます。こうしたことに対処しつつ、長期的なスパンで従業員の働き方を考えていかなければなりません。

こうした中、従業員のエクスペリエンスを高めることも大きなテーマです。従業員と人事・企業側とのタッチポイントとなる入社後のトレーニングやさまざまな業務の中で、従業員にどのようなガイダンスを与えるか、どのようなアクションを促すか、どのようなサポートをするか。それぞれの場面やイベントごとに、テクノロジーを駆使して従業員のエクスペリエンスを高めていくことが、クローズアップされています。

楠田氏: まさにアメリカでは、エンプロイー・ジャーニーという言葉が広まりつつあります。入社してから退職するまでを指す言葉であり、その一連の流れをシステムを使ってきちんと見ていくことの重要性が認識されつつあります。

そうしたタレント・マネジメント・システムは、自社の存在価値、いわゆるパーパス(目的)を早く浸透させる上で有効だと言われています。さらに、タレント・マネジメント・システムを使うことでさまざまなデータを取得できるようになります。この目的とそれを浸透させるためのカルチャーおよびテクノロジー、そしてデータをうまく使い、トランスフォーメーションしていかなければなりません。


これからの人材管理のテクノロジーの方向性とは

**--オラクルでは、最新のテクノロジーを活用した人事施策に関してどのようなビジョンを持っているのでしょうか。

横井氏: オラクルでは人材・組織管理のためのSaaSを提供しており、そこでは「つながっている」ことと「従業員ライフサイクル全体の支援」、そして「パーソナライズ」の3つをビジョンとして、お客さまをサポートしていくことを考えています。

まず「つながっている」については、一人ひとりの従業員とマネジャーや従業員同士、あるいは個人と会社といった関係について、多様性を尊重しつつ各々が協調できる形でサポートすることを目指しています。

2つ目の「従業員ライフサイクル全体の支援」は、従業員のライフサイクルにおける会社とのタッチポイントをシステムとしてサポートしていくことを表しています。これにより、従業員に対してエンド・ツー・エンドで豊かな体験を提供します。

3つ目の「パーソナライズ」は、それぞれの従業員の役割やワークスタイル、好みや関心、スキルレベルといったものを把握し、個人と組織に合わせて体験と推奨を適切に提示していきます。
従業員を引き付ける仕組みの3つの特徴

――そのビジョンを実現するため、従業員を引き付ける仕組みとはどうあるべきでしょうか。
○(1)従業員同士の結びつきを強めてエンゲージメントを向上

横井氏: まず従業員同士がつながるというのが重要かと考えています。その特徴のひとつが「コネクション」という仕組みです。誰でもほかの従業員を検索してプロフィールなどの情報を見られるほか、自分のことをアピールする仕組みも用意されています。また、従業員同士でフィードバックを送り合うことも可能です。

楠田氏: まさに従業員のエンゲージメントを高めることができますね。

アカデミックの世界では、エンプロイー・サティスファクションとエンプロイー・エンゲージメントが明確に分けられています。エンプロイー・サティスファクション、つまり従業員満足度について、過去は労働組合が調査を行っていました。その後は人事部門が行うようになりましたが、いずれも従業員が不満に感じている部分を解消するための制度を作って終わりです。

ただ、それではうまくいかないということで、従業員一人ひとりが自己実現できることを目指す、エンプロイー・エンゲージメントの考え方が広まっています。

特に現在は在宅勤務が中心になり、事業部横断など横のコミュニケーションが減っていると感じています。しかし、こうしたツールがあれば、自分が話したいと思う人を検索してコミュニケーションし、いろんな人と対話することでエンゲージメントを高められるでしょう。
○(2)イノベーションを生み出すために必要な仕組み

横井氏: 社内でジョブの公募をしたり、プロジェクトへの参加を呼びかけたりするための仕組みもあります。

例えば、1週間に3~4時間、ほかのプロジェクトに携わって新しいスキルを身に付けたり、普段とはまったく違うチームのメンバーと交流したりすることで新たな気付きを得られ、自分の成長につなげていけるでしょう。こうした取り組みをサポートするのが「機会マーケットプレイス」で、これを使ってプロジェクトメンバーの募集などをオープンにすることで、従業員に対して均等に機会やチャンスを与えることがコンセプトになっています。

また、そうした情報をマーケットプレイスでオープンにすることで、自分が参加できなくても「今、社内でそういうことが起きているんだ」、「こういうプロジェクトをやっているんだったら、自分もこんなことにチャレンジしてみよう」など、いろんなことを感じたり考えたりする機会になるのではないでしょうか。その意味で、イノベーション・エンジンとしての役割も担えると考えています。

楠田氏: これは、箱の中にいる人を外に出してあげる思想だと思います。イノベーション・エンジンという言葉がありましたが、イノベーションというのはバックグラウンドのまったく異なる人たちが対話することで、新しいサービスや製品を開発するきっかけになるという考え方です。この「機会マーケットプレイス」で気付きを得て、従業員が横断的に対話することにつながれば、新しいひらめきが生まれるのではないかと思います。
○(3)「ソーシャル」が鍵を握るこれからのラーニング

横井氏: スキルの向上と新たなスキルの獲得の支援も重要な要素です。仕事の流れの中でおすすめのコースを推奨する機能があるほか、ソーシャルな要素を備えていることが特徴です。

例えば、受講したコースに対して星などのマークを使って評価することができるほか、自分でビデオを撮影してラーニングコンテンツを作成して公開するといったことも可能です。また、ほかの従業員をフォローする機能やコミュニティの仕組みもあり、社内のエキスパートが推奨しているコースを受講する、あるいはテーマに沿って従業員同士でコミュニティを作り、スキルを身に付けるための情報を共有することができます。

ずいぶん昔から、自分がやっている仕事、自分が持っているスキルを他人に教え、その人が理解した時に自分もその仕事やスキルを本当に理解したことが分かると言われてきました。こうしたテクノロジーを活用すれば、デジタル上で学び合うことができるため、教えることで自分の理解を深めていく、そうした取り組みにもつながるのではないかと思います。

楠田氏: 日本では以前、階層別に研修を行うことが一般的でしたが、それを廃止する企業が増えています。階層別研修では、基本的にみんなが同じコースを受講することになり、金太郎飴のように同質的な人間を作っていくことになると危惧されています。

その意味で、従業員が自ら動いて、あるいは推奨されたコースを受講するなど、それぞれの能動的な学習をサポートする仕組みは、人材の多様性につながっていくのではないかと思います。特に現在は価値観の多様化により、さまざまな意見を持った従業員を育成していくという観点において、こうした仕組みを検討することは有効になるでしょう。
改めて考えるべき従業員を引き付ける仕組み

新型コロナウイルスの影響、あるいは社会的なDXの進展など、企業経営を取り巻く環境は激変しており、人材育成、あるいは人材管理の観点にも大きな影響が生じています。

また、少子高齢化が進む日本では、人材獲得競争が激化することが十分に考えられるため、これまで以上に従業員エンゲージメントを高めることが重要になってくるのは間違いありません。

こうした観点で考えた時、人事部が考える従業員との関係性や最新のテクノロジーを活用し人事のDXをどのように進めていくのか。改めて考えてみるべきではないでしょうか。

執筆

○丸島美奈子
日本オラクル クラウド・アプリケーション事業統括 事業開発本部 ビジネス企画・推進部 HCM担当シニア・マネージャー

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