「私ら世代が20年。もういい加減消えて、ですよね」光浦靖子(50)が考える“好感度が急に上がった理由”

「私ら世代が20年。もういい加減消えて、ですよね」光浦靖子(50)が考える“好感度が急に上がった理由”

  • 文春オンライン
  • 更新日:2021/07/26

『めちゃイケ』(フジテレビ)の初期メンバーとして一時代を築いたオアシズ光浦靖子。芸人界で確固たる立ち位置を得たはずの光浦が、突然留学を決意、しかしその留学がコロナで頓挫し……『50歳になりまして』(文藝春秋)には、50歳になった1人の女性が抱える悩み、苦しみ、希望が笑いとともに真正面から綴られている。彼女はどんな思いで自分の頭の「言語化」に踏み切ったのか。(全3回の第1回/第2回を読む)

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光浦靖子さん

◆ ◆ ◆

「それはもう、いい加減世代交代だと思いますよ」

——『50歳になりまして』の中で「老後」は大きなテーマになっていますよね。そもそも私たちにとっていつからが「老後」なんだろうと……。

光浦 私は漠然と、定年退職してからが老後なのかなと思ってます。

——ということは芸能人の場合、明確な定年がない。

光浦 ないですよね。ずっと働ける人は働けるし、もうボチボチ淘汰されていくと……本当にここ最近はテレビの様子も変わってきてますし。みんなお金もなくなってきたし。

——光浦さん自身に「淘汰されてる」という感覚がありますか?

光浦 やっぱり……そんなに仕事があるわけじゃないしね。今、レギュラーの人たちだって様変わりしちゃったでしょ。同じ少数の人しか出てないし、そこの枠には私は入ってないから。このまま細々と好きなことだけ地味にやれたら最高だけど、それすらも今奪い合いなので、そんなにのんびり構えてはいられないのかなと思ってます。

——なるほど。

光浦 中堅どころがね。ずっと中堅どころが幅を利かせてたけど、いよいよ世代が変わったでしょ。だって、20代の時から20年間、私ら世代はずっと若手みたいなポジションでやらせてもらってた。20年、昭和40年代生まれの人たちがずっとそこをやってきたからね。それはもう、いい加減消えて、ですよね。20年も幅利かせたら駄目でしょう。

——若手の仕事を奪ってきた。

光浦 若手から中堅というところまでの全部。トップの上澄みから下全部やってたもんね。それはもう、いい加減世代交代だと思いますよ。

——それは光浦さんの中では納得のいくことですか?

光浦 最近はもう納得いくようになりました。ちょっと前は焦ってましたけどね。「ああ、消えちゃう」とか「ああ、仕事なくなっちゃう」とか思ってましたよ。「正直私のほうが面白いのに」って思うことも多々ありました。でも「面白い」って使い勝手というか、私が思う「面白い」と番組が求める「面白い」は違うしな、とか、だんだん分かってきちゃった。

——そうですか……。

光浦 番組は私を求めてないな、と思って。

コロナで環境が変わっても「あ、どこでも面白いな」って

——「正直私の方が面白いのに」とか「私の方ができるのに」という感情はどうやって手放せばいいのか。それこそ老後になったら解放されるのでしょうか。

光浦 ねえ。分かんないですよね。私の場合は一回「もういいや」って思っちゃって。「もう十分楽しんだ」と思って。

コロナで人に会わなくなったじゃないですか。私がこの世界をやめたくないなと思う一つの理由って、こんなに魅力的な人たちとおしゃべりできなくなるのが悲しいってことなんです。カメラに映らなくてもいいから、ずっとこの人たちとおしゃべりができればいいのになって思ってたけど、コロナがやってきて、会わないなら会わないで別にどうってことないってことが分かってきて。

それと、英会話スクールとか行くと、クラスメイトができるじゃないですか。それが十分面白かった。いつもと環境が変わったらつまらなくなるのかなとか、寂しくなるのかなと思ってたけど、「あ、どこでも面白いな」って。そんなにビビることはないなと思って。

——確かにコロナで生活が変わりましたが、その新しい生活も過ごしていくうちに「意外と大丈夫」だったりして、それにびっくりしたりショックを受けたり……。

光浦 そうですね。あと、過去のことを懐かしんだり、過去の栄光にすがりつくんじゃないかなって、それがずっと怖かったんです。そうしたら、意外とそうでもない。ちょっと前のほうがありましたね。細かいことにこだわったり。

「お水あります?」といまだ素直に言えない

——「私の方が面白いのに」みたいなネガティブな感情を無くしてしまうと、自分が「いい人間」になってしまう、いい人間になったらつまらなくなってしまう……みたいな怖さはなかったですか。

光浦 そうそう、それもありました。でも売れてる人に嫌な人なんかいないんですよね。みんないい人なんだよ。今は特にいい人しか残らないですよね。

——光浦さんが思う「いい人」って、どういうタイプですか?

光浦 明るいし、スタッフさんともすごくフレンドリーにおしゃべりするし。あと、気を使うよね。「お水あります?」とか。

——分け隔てない人。

光浦 分け隔てないのか、職業として、プロとしてそこはやっているのか分からないけど。やっぱりそうすると「あの人いい人だよね」で噂になるでしょ。それは全く自分に損はない、得しかないので。

——そうですね。

光浦 「あ、お水あります?」って言えばいいだけの話なんですよ。一言いうだけ。だけど、私、それをやるのはいまだに恥ずかしくて、一回も言わない(笑)。そこは変な恥ずかしさがあるんですよ。

——もう1人の光浦さんが見てる。

光浦 そう。悪魔が見てるから。「お前、今いい評判流そうとしただろ」って、もし誰かにバレたら、私はそこの言い訳はまだできない!

——そんなこと全然ないと思いますが(笑)。

光浦 そんなことばっかり脳内でやってるんですよ。「いい人に見られようとしてるでしょ?」とか言う人を「え、まだそのレベルの話してるの?」って思える自分がまだいない……。まだ、一瞬「ハッ」としてしまいます。この「ハッ」ていう顔をしない自信がつくまで、スタッフに水は勧めないでおこうって思います。

1人でね……ずっとこんな自問自答してるんです。スッと「お水どうぞ」なんて言える人はいいよね。私なんかこんなにラリーしてるのにな、と思って。

——頭の中で(笑)。

光浦 そう。私なんかヘトヘトですよ、って(笑)。

——この本にはそういう光浦さんの頭の中のラリーが詳細に記録されている……。

光浦 だから、文字にしていこうと思って。脳みそでずっとこうやって忙しく考えて、性格の悪さも、「いいわね、そんなこと言えて」みたいなところも含めて。何様のどの目線かもう分からなくなってきちゃってるから(笑)。

——そのラリーを伝える言葉が巧みで、ストレスがないから読む方はずっと気持ちいいです。

光浦 だいぶ整えておきれいにして皆さんにお届けしてるから、本当に頭の中をドーンって出せたら面白いのになと思ってます。

——ソフトにしているんですね。

光浦 そう。そうしないと伝わらないんじゃないかと思って。「意味分かんない」で終わっちゃうだろうなって。

思ったことを口にしていたら共感してくれた

——以前光浦さんが爆笑問題さんのラジオに出られた時に「笑いって流れに任せること」「共感と理解がなきゃ笑われない」とおっしゃっていて。光浦さんはどうやって「共感と理解」にアプローチしていましたか?

光浦 私、全然してないな。迎合してないですね。

——自分が面白いと思うことを貫いた?

光浦 面白いというか、思ったことを口にしていたら、「分かります」って、そういうことを口に出せなかった人たちが共感してくれたんじゃないでしょうか。

いつもそうかもしれないですね。デビューした時から、別に意図してしゃべっているわけでもないし、役割としてしゃべったこともいっぱいあるんだけど、そうすると、今まで口に出せなかった人たちが「共感しました」と言ってくれた。

——それに励まされる人がいたんですね。

光浦 「初めて気持ちが言語化されました」というふうに言ってもらえて。もう、それだけでありがたいなと思って。私はマスの人たちからウケる人間ではないと思うんですね。少数のお友達とか、一部の互助会みたいな結束、そういう小さな繋がりがあるだけですごいうれしいし、そっちでいいなと。

——でも、そうは言っても『めちゃイケ』という、最高視聴率30%の番組にずっと出演されていました。

光浦 そうなんですよ。メジャーな番組にマイナー気質な人間が出てたから。だからおかしなことになったんでしょうね。

——おかしなことというのは?

光浦 私、別に後ろ向きなことを言ったつもりはないのに、いつも「後ろ向きだね」って言われるんですね。「ネガティブだね」って言われるけど、ネガティブなこと言った覚えはない。普通に思いついたことをしゃべっただけでそうやって言われる人間なんですよ。

それが土曜の8時のメジャーな番組に出るって、絶対フィットしてないじゃないですか。おかしいじゃないですか。

——明るい番組に……。

光浦 そう、明るい番組ですよ。実際電飾だって明るかったもん。土曜8時だからライト多めにしてあるって言ってた。メッチャ明るい。白い明かりの中に。

——その真ん中に光浦さんはいた。

光浦 そうよ。普通に元気よく笑ってるのに、なんで「機嫌悪いの?」っていつも言われてしまうのか。これ以上笑えないぐらい笑ってるのにっていつも思ってました。

私は「ドキュメンタリー部門」だった

——「こうやったらウケる」とか「こうやって笑わせたい」とか、そういうことじゃなかったんですね。

光浦 私はドキュメンタリー部門のほうに所属させられたので。『めちゃイケ』でもコント部門、いわゆる演じる人部門とドキュメンタリー部門とに分けられたんです。ド素人の時に、ひよこの段階でピョピョッて選別された。ドキュメンタリーのほうは、常にリアルに怒ったり、リアルに笑ったりっていう、そっちのほうです。

そっちに入れられたのは、男だと加藤(浩次)さん、濱口(優)もドキュメンタリー部門かな。よゐことやべっち(矢部浩之)はちょっと微妙にニュートラルなところだけど。

——なるほど。

光浦 岡村(隆史)さんは完全にコメディ部門でしょう。いろんなキャラクターでイケる。で、山さん(山本圭壱)もそう。大久保(佳代子)さん、雛形(あきこ)もそう。(鈴木)紗理奈は私と一緒でドキュメンタリー部門。

——すごいな……。

光浦 そうやって分けられたから、もともとキーッとなるほうではありましたけど、ドキュメンタリー部門ではその「キーッ」をさらに大きくしてっていうのが使命としてありました。

自分の中にあるキャラクターの1個を求められて、ビューッと広げているので、それは嘘ではなかったんです。ちょっと不正を見つけるとヒステリックに怒ってみるとか、自分の中にもともとあるものをギューッて可能な限り広げてましたね。

だけどやっぱり、長いことギューッとやりすぎて、どこかちょっとバランスが悪くなった。

——その一部分を広げたものを「自分」として周りから認識されることに、苦痛を感じなかったですか。

光浦 一時ありましたね。あまりに意地の悪いセリフとか、あまりにただ意地悪を仕掛ける役とかだと、嫌だなっていう時はありましたね。番組が終わって、今はそれを無理して広げる必要がなくなってきたんです。それでヒューッと閉じ始めたら、好感度が急に上がってきて(笑)。

——ドキュメンタリー部門の使命を終えたら(笑)。

光浦 たぶん不自然さが抜けたのかね。悪役をやっても善人をやっても不自然は伝わるんじゃないのかな? 嘘くさい感じとか、無理してる感じがね。

【続きを読む】「自分でも不思議なくらい嘘が嫌い」…“生きにくい”人間・光浦靖子(50)が芸能界で見つけた「居場所」

撮影=鈴木七絵/文藝春秋

「自分でも不思議なくらい嘘が嫌い」…“生きにくい”人間・光浦靖子(50)が芸能界で見つけた「居場所」へ続く

(西澤 千央)

西澤 千央

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