人間の脳より100万倍速い人工シナプスが開発される

人間の脳より100万倍速い人工シナプスが開発される

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  • 更新日:2022/08/06
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デジタル・プロセッサにとってトランジスタが肝であるように、アナログ(情報を連続的な量として扱う情報処理方式)のディープラーニング(深層学習)」にはプログラム可能な「レジスタ(記憶回路)」が肝になる。

こうしたレジスタを複雑な層に並べれば、アナログの人工シナプスとニューロンからなるネットワークを作ることができ、AIはよりいっそう高度な処理が可能になる。

マサチューセッツ工科大学の研究グループが開発した「陽子プログラム可能レジスタ」で構築された「人工アナログ・シナプス」は、人間の脳内にあるシナプスより、なんと100万倍も高速であるという。

これまではあり得なかったほど複雑なニューラルネットワークを訓練することが可能で、自動運転車・嘘検出・医療用画像分析などに応用できると期待されている。

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脳とニューラルネットワークが学習する仕組み

マサチューセッツ工科大学のプレスリリースによると、AIが学習する方法の1つである「ディープラーニング」は、意外にもデジタルよりもアナログの方が高速で、エネルギー効率にも優れているという。

その理由は、アナログ・ディープラーニングを担う「アナログ・プロセッサ」が、データをメモリとプロセッサ間でやりとりせずに演算し、しかもそれを同時に並行して行えることだ。

今回MITで開発されたアナログ・プロセッサの重要な部分が、「陽子プログラム可能レジスタ」と呼ばれるものだ。

人間の脳における学習とは、すなわち「シナプス」という神経細胞同士の結合が強まったり、弱まったりすることだ。

陽子プログラム可能レジスタにおける学習もこれに似ているが、それは「電気の流れやすさ(コンダクタンス)」の増減によって行われる。

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生体細胞の100万倍の速さ

電気の流れやすさは「陽子」で制御される。電気を流れやすくするには、レジスタのチャネル内に陽子をたくさん押し込んでやればいい。

反対に流れにくくするには陽子を追い出す。そのために必要なのが、電子を遮断し陽子だけを通過させる「電解質」だ。

これまでこの電解質には有機化合物などが使われてきたが、MITのグループは「無機りんけい酸ガラス(PSG)」を採用した。

これは珍しいものでもなんでもなく、乾燥剤として使われるシリカゲルと同じものだ。だが、ここにほんの少しリンをくわえると、高い陽子伝導性を与えることができる。

PSGフィルムは、非常に極端な電圧でも耐えることができ、10ボルトが加えられても絶対に壊れない。電場が強いほど陽子は高速化するので、生体細胞では不可能なスピードを実現することができる。

その動きはまさに目にも止まらぬ速さ、ナノ秒という次元に達している。それは生体シナプスより100万倍も高速だ。

ナノ秒という速さについて、研究グループのJu Li教授は、「陽子は量子トンネルの領域に近づいている」と説明する。

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超複雑なニューラルネットワークの訓練が可能に

今回のアナログ・プロセッサは、ニューラルネットワークの学習能力を大幅に向上させるだけでなく、エネルギー効率も非常に優れている。

それゆえに室温であっても普通に動作する。これはコンピュータに組み込むことを考えれば、とても重要なことだ。

これを使えばディープラーニングモデルをもっと簡単に開発し、自動運転車・嘘検出・医療用画像分析などに応用できるようになるかもしれないという。

Science』(2022年7月28日付)に掲載された研究の筆頭著者であるムラト・オネン(Murat Onen)氏は、「アナログ・プロセッサがあれば、今のようなネットワークの訓練などやらなくなるだろう」と述べている。

これまでなら誰にも手に負えなかったような複雑なネットワークを訓練し、圧倒的な成果を挙げられるようになるとのことだ。

オネン氏に言わせれば、その圧倒的なまでの性能は、車が速い車になったのではなく、宇宙船になったようなものであるそうだ。

References:New hardware offers faster computation for artificial intelligence, with much less energy | MIT News/ written by hiroching / edited by /parumo

追記:(2022/08/06)本文を一部訂正して再送します。

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