access、30年変わらない常識を打ち崩す姿勢 予測不可能なステージ展開した『ELECTRIC NIGHT 2022』豊洲PIT公演レポ

access、30年変わらない常識を打ち崩す姿勢 予測不可能なステージ展開した『ELECTRIC NIGHT 2022』豊洲PIT公演レポ

  • Real Sound
  • 更新日:2022/05/13
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浅倉大介(Key)と貴水博之(Vo)によるaccessが、30周年ツアー『ELECTRIC NIGHT 2022』を4月9日よりスタートした。

アニバーサリーツアーに相応しい新旧の楽曲を、最新鋭の演奏技術&巧みなボーカルで披露する同ツアー。30周年という冠はついているものの、そこには懐古ではなく、常に未来を見つめるaccessの姿があった。リアルサウンドでは、これまでaccessの動向を追い続けてきた音楽ライター 藤井徹貫氏による、5月1日に開催された豊洲PIT公演のレポートをお届けする(編集部)

『ELECTRIC NIGHT 2022』5月1日(日)豊洲PIT公演

1992年、浅倉大介と貴水博之はaccessとしてデビュー。SNSなど影も形もない時代。取材のたび、彼らはユニット名が意味するところを説明しなければならなかった。そして、インタビュアーや記者は、もれなく「なぜバンドではないのか?」と口をそろえた。たったこれだけのことでも、accessがいかに先進的だったか思い出せる。

あれから30年。歴史を手に入れた彼らだが、今なお先進的だ。『ELECTRIC NIGHT 2022』がそれを雄弁に物語っていた。ライブの内容を追う前に、『ELECTRIC NIGHT』そのものについて触れておこう。

2010年代、accessは年2回のツアーがルーティーンになっていた。そうした中、浅倉が単独でDJ活動を行う際、各地の小さなクラブを回ったことがきっかけとなり、やがてaccessの春ツアーもライブハウス中心になっていく。2015年から春ツアーは『ELECTRIC NIGHT』という統一タイトルになった。

もう1点の重要なポイントは、浅倉によるリアルタイムリミックス。一般的なライブでは、事前リハーサルで各楽器の音のバランスをとり、それを基本に本番が行われる。そのため、本番中にドラムの音がいきなり大きくなったり、ボーカルだけ音が小さくなったりすることはありえない。コンサート、リサイタル、ライブ、演奏会に欠かせない、PA(音響)システムが生まれてから、半世紀以上も続いた、その常識を覆したのがDJたちだった。フロアで踊る客とのかけひきで音のバランスを自在に操ることは、DJの腕の見せどころでもある。とはいえ、ライブやコンサートにおいては、21世紀になってからも、その常識は揺るがなかった。それを2010年代に浅倉が崩しにかかった。

リアルタイムリミックスとは、リハーサルなどで決めた、基準となる音のバランスを本番でいきなりガラッと変え、新たにミックスすること。それを可能にするためには、いくつかの壁があるが、もっとも高いのはボーカリストだろう。クラブDJの場合、基本的にはボーカリストはいない。ただし、accessの場合、生で歌っている貴水博之がいる。安心して歌いたいなら、リアルタイムリミックスのような、1秒先に何が起こるか、音がどのように変化するか予測不可能な状況を拒んでも不思議はない。

ところが、浅倉の提案を、貴水は二つ返事で受け入れた。自信なのか、器の大きさか、相棒と書いて理解者と読むのか。ライブ中、ときに型破りに、ときにヒートアップし、ときに脱線ギリギリの際を攻めるリアルタイムリミックスに対し、常にぶれない軸の役割を見事に果たす貴水。彼なしに成立しないライブだ。それは『ELECTRIC NIGHT 2022』でも同様だった。

5月1日、豊洲PITのステージに現れたaccess。曲は「Awake」。オープニングナンバーにふさわしいチョイスだ。次曲へのつなぎはボディソニックなキック。この1音色にも、時代のトレンドが詰まっている。そのキックが鳴り続け、曲は「We’ll」へ。きっとこのキックの音量や、サウンドのバランスは、リアルタイムリミックスによるもの。この瞬間だけの、その場にいないと味わえない快感だ。

MCで浅倉が言った。意識したのは「30周年ということもあり、なつかしくも新しい、新しくもなつかしいサウンド」だそうだ。有言実行。その言葉のあと、デビューシングル収録曲「Be NUDE」を演奏。メロディと歌詞には、もちろんあの頃の面影が宿る。だが、サウンドは今日的だ。30年前と今を、違和感なく結びつけているのが貴水のボーカル。ことさらオリジナルのボーカルに固執するわけでもないが、ことさら新しいアプローチに偏ることもない。見事なバランス感覚。やはり貴水なくしてリアルタイムリミックスは成立しないと、改めて痛感させられた。

そう、予定調和を排した『ELECTRIC NIGHT』は、さまざまな気づきと出会える。不意の出会いや偶然の出会いが、知っているつもりでも知らなかったaccessの魅力に改めて気づかせてくれるのだ。1994年のヒット曲「MISTY HEARTBREAK」も意表を突くサウンドになっていた。AメロとBメロは、ディレイ(残響音)三昧。多くの場合、隠し味やスパイス的に用いられるディレイを、サウンドの中心に据える。結果、独特のグルーヴが生まれていた。サビになると、いきなりコード(和音感)が強調され、解放と高揚がおしよせる。

続く「AGAINST THE RULES」でも、過激なリアルタイムリミックスがさえわたる。バックトラックの音をほぼほぼミュートしてしまい、ボーカルとキックだけの音場を創り出す。ライブで、つまりボーカリストが生で歌っているステージで、このアレンジはここにしかない。浅倉と貴水、信頼で結ばれた二人にしかできない。

「Star Tribal」では、「なつかしくも新しく、新しくもなつかしいサウンド」の中、貴水のボーカルがさらに存在感を発揮。きらめくハイトーンが代名詞の彼が、切なさをしみこませたトーンで歌う。歌に情感を込めすぎると重くなる。逆に、抜き過ぎると味気ない。その境界線上でバランスをとる貴水。また〈世界が交わる時まで〉では、微妙な時差で、ジワッと音程をあてる。いわゆるシャクリだ。accessでの貴水は、リズムもピッチもジャストで歌う傾向が強いから切れ味が鋭く、この歌唱法をほとんど使わない。だからこそ、ここ一番で、もっとも効果的なポイントで、たった1回だけ使うと、聴く者を一瞬にして歌の世界へ吸い込んでしまう、ブラックホール的な破壊力が生まれるのだろう。

もしかしたらリアルタイムリミックスの『ELECTRIC NIGHT』だから、貴水の生のボーカルや表現力が際立つ箇所が、予期せぬところに生まれているのかもしれない。予定調和を排した『ELECTRIC NIGHT』の効力だ。

90年代、00年代、10年代、さまざまな時代の曲が交差する。その中、いきなり英語詞の新曲が飛び出した。完成形ではないベータ版らしいが、2000年代に入ってから、accessはしばしばこのような未完の曲をライブで披露してきた。なぜなら完成までの過程をオーディエンスとともに楽しみたいからだ。

2017年リリースの「Heart Mining」からが終盤戦。『ELECTRIC NIGHT』らしい尖った音だった。ありがちなセトリなら、ここからアップテンポな曲を続けるが、accessは常識破り。「grand muse」「Missing 4 seasons」とミドルテンポの落ち着いた曲を続ける。リアルタイムリミックスをはじめ、サウンドもセトリもすべて、『ELECTRIC NIGHT』にしかないオリジナルだ。

本編ラスト3曲でテンションはついに大爆発。「ELECTLIC☆NIGHT」「SOUL DYNAMITE」「永遠dive」。声を出すことができないオーディエンスの心を、完全解放するとどめだ。『ELECTRIC NIGHT』のエキスが詰まった佳境だった。

アンコールでも、この日が初公開の新曲を演奏。こちらもベータ版だそうだ。筆者は、キャリア45年超のベテランアーティストが“新曲は希望”だと言っていたことを思い出した。この時代、いつかこの曲をライブで演奏し聴ける日がくるという、アーティストとオーディエンスの約束のようなものだから。きっとaccessの二人が、いちはやく新曲を披露した思いは、先述のベテランと同じだったはずだ。

ラストは夏曲の「DRASTIC MERMAID」。もうそこまできている夏、つまり未来で締めくくるセトリだった。30周年だからと、思い出にひたったり、デビュー曲で締めくくったりしないところもaccessらしい。常に未来へ向かっている。それはきっと希望は過去よりも未来にあると、彼らが固く信じているからだ。accessの一番大切なポイントがしっかりと伝わってきた『ELECTRIC NIGHT 2022』だった。

■ライブ情報
『access 30th Anniversary ELECTRIC NIGHT 2022』

(※終了分は割愛)
2022年5月14日(土)愛知県 ダイアモンドホール
2022年5月15日(日)愛知県 ダイアモンドホール
2002年5月22日(日)北海道 ペニーレーン24
2022年5月28日(土)大阪府 なんばHatch
2022年6月5日 (日)福岡県 DRUM LOGOS
2022年6月11日(土)宮城県 仙台Rensa

藤井徹貫

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