「すがる相手は二階先生しかいません」微妙なパワーバランスが働く原発事業で二階俊博が信望を集める“奇妙な理由”

「すがる相手は二階先生しかいません」微妙なパワーバランスが働く原発事業で二階俊博が信望を集める“奇妙な理由”

  • 文春オンライン
  • 更新日:2021/05/03

購入費用は相場の3倍…なぜJALは152億円もの大金を支払い“二階後援会幹部の所有する土地”を購入したのかから続く

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一般には知られていない中堅ゼネコンの社長にもかかわらず、永田町では知らぬ者のいない有名人だった男が、2020年12月17日に帰らぬ人となった。その男の名前は水谷功。小沢一郎事務所の腹心に次々と有罪判決が下された「陸山会事件」をはじめ、数々の“政治とカネ”問題の中心にいた平成の政商だ。

彼はいったいどのようにして、それほどまでの地位を築き上げたのか。ノンフィクション作家、森功氏の著書『泥のカネ 裏金王・水谷功と権力者の饗宴』(文春文庫)より、芸能界でも幅を利かせていた男の知られざる正体に迫る。(全2回の2回目/前編を読む)

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原発事業と族議員

空港建設をはじめとした公共事業には、中央の官庁が発注する国の工事と県や市町村単位の権限で受注業者を決めるケースがある。たとえば関空の工事なら国交大臣が発注者で、南紀白浜空港のそれは和歌山県だ。和歌山県や福島県の知事汚職に見られるように、自治体発注の工事なら、ゼネコンが県知事に攻勢をかければ済むときもある。しかし、その地域や行政分野に見えない中央政界の力が働くことも少なくない。そのため、そこに不正がないか、東京や大阪の地検特捜部が、実力国会議員の尻尾をつかもうと血眼になってきた。だが、往々にして公共事業における中央政界と地元自治体のつながりがはっきりせず、事件は矮小化されてきた。

中央政界と地方政治、霞が関の官庁と地方の役所、さらに各種の業界や業者。それらが複雑に絡み合った不正や不透明な関係を立証するのは、容易ではない。

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たとえば福島県知事汚職の贈賄側である水谷建設は、県発注のダム工事を巡って知事側に賄賂を贈ったとされる。だが、水谷功の狙いはそれだけではない。水谷本人が逮捕されるきっかけとなった脱税事件は、原発の残土処理事業に絡んだ裏金が見つかり捜査が進んだ。水谷は福島第二原発の関連工事を使い、東京電力や中央政界とパイプを築いてきた。いちダム工事より、原発事業のほうが大きな狙いだったに違いない。

佐藤栄佐久の懐柔に奔走した水谷

折しも福島県では、原発事業をとり巻く状況が逼迫していた。たとえば2002年8月、福島第一原発の事故隠しが発覚した。それも大きな出来事だ。知事だった佐藤栄佐久は、従来のプルサーマル計画反対を表明し、原発事業そのものの先行きが危ぶまれていった。そこで知事に翻意させるべく近づこうと奔走したのが、東電であり、水谷功である。水谷が平成の政商と異名をとるようになったのは、このあたりからだ。つまるところ、水谷のもう一つの狙いが東電サイドに立った原発事業であり、そのための知事懐柔だった、と関係者は明言する。

「原発事業には地元政界の意向が強く反映されます。それが中央の国会議員の動きと微妙に絡むことも少なくありません。和歌山県でもそんな関係がありました」

そう話す地元の建設業者がいる。こう言葉をつなぐ。

原発事業における本音と建前

「和歌山では昔から、関西電力が運転する御坊の火力発電所がありました。御坊は二階さんの出身地です。火力発電所は今も運転中ですけれど、施設の脇にあいたスペースがあり、関電はそこを原発のプルサーマル計画に使おうとしていました。使用済み核燃料の保管庫を建設しようとしたのです。なにしろ原発となれば、一大事業ですから、ゼネコンはどこも工事をとりたい。従来の火力発電所は飛島建設が押さえていましたが、原発事業は新たな計画です。だから、工事に入り込みやすいのです」

使用済み核燃料を扱うとなれば、たいてい地元の反対運動が起きる。そこをどうかいくぐって計画を推進することができるか、それが電力会社とゼネコンとの共同作業になる。ゼネコンが原発事業に参加するためには、地元対策にうまく立ち回る必要がある。まず、電力会社や経産省が大学教授などの専門家を招いて、プルサーマルがいかに安全な計画か、というアピールをする。それにもゼネコンが協力しなければならない。そしてときに反対運動の裏にまで、地元政治家や中央の政官界の意向が反映される。

「地元の御坊市や近隣の田辺市、まわりの町は案の定、原発に反対していました。地方はどこも税収がなく、財政がアップアップしていますから、本音をいえば、首長は原発に来てほしい。でも、それをいえば住民から総スカンを食らう恐れがある。それで、地元の政治家は選挙の動向などを見ながら、反対の旗をあげたり、おろしたりするわけです」

ある和歌山の建設業者は、原発事業において本音と建前が複雑にからみ合う関係者の意図を次のように解きほぐす。

「原子力事業は、計画段階から地元の合意を取り付ける作業が始まります。一カ所完成させようと思えば、30年かかるといわれる厄介な事業です。その長く大変な計画を進める上で、多くの関係者を説き伏せていかなければならない。そこで関電の立地部や経産省が、誰を頼るか。最後に和歌山ですがる相手は、二階先生しかいません。御坊市や田辺市は二階先生のお膝元であり、原発に反対している県議や市議は二階派が押さえている。地元の説得役にはもってこいでしょう。関電が先生に頼ることを知っているからこそ、ゼネコンも先んじて二階詣でをする。そういう構図なのです」

地元対策、行政、業者すべてに睨みを利かせる

建設業者は中央官庁と業界、政治家の力関係について、こう分析する。

「電力会社と政界のあいだにも、微妙なパワーバランスが働きます。電力会社は監督官庁である経済産業省に首根っこを押さえられている。その経済産業省は、通産族の大物議員の言うことを聞かざるを得ん。経産大臣を務めていた二階先生などには、からっきし弱いのです。二階先生の強みは、そのあたりにもありました」

有体にいえば、地元対策、行政、業者すべてに睨みを利かせている。それが二階俊博なのだという。ゼネコンやマリコンが日参するわけだ。ちなみに二階の出身地、御坊市にある関電の御坊発電所は、東京ドームの7倍の広さを誇る人工島の上に建設された。そこに4基の火力発電所が林立している。御坊発電所の人工島埋め立て工事は、浮島につくられている関空のモデルになったともいわれる。

逮捕された元秘書が下請け業者の支店長に

この御坊発電所の建設工事に参加したのが西松建設である。その下請けとして、丸磯建設という重機土木工事の中堅ゼネコンが入っている。

93年7月、ときの総選挙で二階事務所の秘書らが、5人も逮捕された選挙違反事件が起きた。その5人のうちの1人は、のちに丸磯建設の関西支店長になっている。二階事務所とのパイプ役にするため、丸磯建設が秘書を引き取ったというのが、業界の定説だ。選挙違反で泥をかぶった当の元秘書本人に、そのあたりを尋ねてみた。

「なんでそれを話す必要があるの? 僕は議員事務所を辞め、しばらく間があって、それで今の会社に入っただけです。人にそんなに興味を持たれるような関係ではありません」

そうにべもない。丸磯建設は水谷建設や山崎建設などと並ぶ中堅の土木工事の下請け業者である。それだけに、政治的な動きもしばしば取り沙汰されてきた。小沢一郎の政治資金規正法違反事件で話題になった岩手県の胆沢ダムの工事にも、しっかり加わっていた。

元秘書の抗弁

「それ(胆沢ダム工事の受注)は普通の営業の結果です。われわれのような(重機土木の)会社だったら、どういうかたちだって、ダム工事には入ると思う。とうぜん営業するでしょうけど、丸磯が議員とどうのこうのだからやっているものでもないしね。二階先生に近いといっても、それは関西のことだけじゃないですか。うちは、どっちかというとその関西が弱いんです。どっちにしたって、われわれサブコンは民民の話ですから、直接、官庁の仕事を取るわけじゃない。だから政治力うんぬんと言ったって、さほどどうこうということにはならないんじゃないでしょうか」

元秘書のいう「民民の話」とは、元請けから工事を請け負う民間同士の受注発注行為という意味だ。それゆえ、政官界の絡んだ贈収賄などには無関係だと抗弁する。だが、水谷建設に見るように、下請けであるサブコン業者ゆえの別の意味での役割がある。再び地元の建設業者が指摘する。

「あの選挙違反のときは、二階先生も危ない、と囁かれたもんです。秘書が泥をかぶったわけだから、本当なら議員先生がそのあと面倒を見なきゃいかんですわな。先生に代わり、みずから買って出て面倒を見たのが丸磯ということでしょう。丸磯にとっても大きなメリットがあった。元秘書は、丸磯の営業部長と呼ばれている。あれは二階先生の秘書や、と業界ではみんな知っています。今は関西支店長の肩書を外していますが、二階先生には秘書の面倒を見てもらったという弱みもあるし、二階事務所との関係は変わっていない。抜き差しならん関係ではないでしょうか。西松事件で、ゼネコンの窓口になっていた二階先生の政策秘書の長田(武敏)なんかは、丸磯の関西支店にしょっちゅう麻雀をしに来ていました。何か用があって東京から来るんでしょうけど、夜の接待も受けてました。それは業界では普通なんです」

【前編を読む】購入費用は相場の3倍…なぜJALは152億円もの大金を支払い“二階後援会幹部の所有する土地”を購入したのか

(森 功/文春文庫)

森 功

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