血管が詰まると脚が壊疽! 「脚の動脈硬化」を治す最新の遺伝子治療薬が登場

血管が詰まると脚が壊疽! 「脚の動脈硬化」を治す最新の遺伝子治療薬が登場

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  • 更新日:2021/02/23
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※写真はイメージです(写真/Getty Images)

私たちのからだには常に血液が巡り、全身に栄養を届けている。しかし、血液の通り道である血管が動脈硬化によって細くなったり、詰まったりすると、血液が十分に全身へ行きわたらなくなる。脚の血管の血行が悪くなり、痛みや壊疽(えそ)を引き起こすのが、閉塞性動脈硬化症(ASO)だ。

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動脈硬化による血行障害は、心臓なら心筋梗塞や狭心症、脳なら脳梗塞という具合に、部位ごとに病名がついている。ASO(閉塞性動脈硬化症)は、主に脚に起きる動脈硬化性疾患のことを指す。同義語として、PAD(末梢動脈疾患)とも呼ばれる。

ASOは、進行すると足先から壊疽を引き起こし、最悪の場合は下肢切断にまで至る。間欠性跛行(しばらく歩くと脚が痛み、少し休むと回復する症状)などの、ASOの兆候が見られる人は、放置せず病院で治療を受けたほうがよいだろう。

ASOの初期治療は、よっぽど重症でない限り、まずは運動療法や薬物療法などの保存的治療(手術以外の治療法)が選択される。

東京医科大学病院循環器内科教授の冨山博史医師はこう話す。

「運動療法では、医師や理学療法士などの監視または指導の下で歩いてもらいます。間欠性跛行の患者さんは歩くと痛みが出てきますが、無理しない程度で負荷をかけることで、症状改善や進行予防になります。薬物療法では、傷んだ血管を直接良くする薬は存在しないので、高血圧などの血管に悪さをしている因子を改善する薬を処方します」

保存的治療をおこなっても改善が見られない場合は、血行再建術が検討される。ただし、保存的治療を集中的におこなっていれば、重症の虚血や脚切断に至るケースは5%未満と少ない。血行再建術に進む前に、間欠性跛行などの症状によって受ける悪影響と治療によるリスクとを天秤にかけて慎重に判断することが重要だ。

■血管内治療が血行再建術の中心に

血行再建術には、主に自身の静脈や人工血管を移植し、血管の迂回路を作るバイパス手術と、カテーテルと呼ばれる細い管を血管内に挿入し、管の先端についているバルーン(風船)やステント(網状の金属管)で、内側から血管を押し広げる血管内治療がある。

血管内治療では特に、ステントを血管内に置いてくることで、再び血管が狭くなるのを防ぐステント留置術が現在の主流となっている。

ASOの血行再建術は、50年以上にわたってバイパス手術が主力であった。だが、ここ20年間の血管内治療の急速な進歩と普及により、現在では患者の状態に応じて術式を選択できるようになった。

慶応義塾大学病院外科准教授の尾原秀明医師はこう話す。

「血管内治療は、からだを切らずにカテーテルを挿入する穴を開けるだけなので、からだの負担が少なく済みます。近年では、従来の金属製ステント以外に、ステントグラフトと呼ばれる人工血管付きステントも開発されたことで、より多くの部位に対して治療が可能になりました。対して、バイパス手術は全身麻酔が必要で、患者さんの身体的負担は大きくなります。しかし、より多くの血流量が確実に得られ、長持ちします」

どちらの術式でも同程度の効果が見込める場合は、基本的に、負担の少ない血管内治療が選択される。しかし、血管の太さや、病変の範囲によっては血管内治療が適切でないケースもある。病変の範囲が血管内治療に適応している部位とそうでない部位に広がっている場合は、バイパス術を併用したハイブリッド手術をおこなうこともよくあるという。

最近では、一度留置したステントを取り除けないという血管内治療のデメリットを解消するため、薬剤溶出性バルーンが使われることもある。バルーンの表面に再び血管が詰まるのを防止する特殊な薬を塗ったものだ。体内に異物を残さないので、もし再発しても治療の余地がある。

こうした血行再建術をおこなうと、脚(下肢)の血流は改善するが、それで終わりではない。

潰瘍などの傷はすぐに治るものではなく、血行再建術の後も、切除や洗浄などの適切な処置をおこなう必要がある。また、術後も再発の可能性はある。ASO患者は脚だけでなく、心臓や脳などにも動脈硬化が起きている可能性がきわめて高い。生活習慣を改善し、高血圧や喫煙などの危険因子を排除していかなければ、命の危険もあることを忘れてはいけない。

■遺伝子治療薬による補助療法が登場

血管内治療の登場により大きく前進したASO治療だが、現在も新たな研究が進められている。2019年に、5年間限定という条件付きで保険適用された遺伝子治療薬「コラテジェン」は、筋肉に注射することで新たな血管が生まれやすくなるように促す効果がある。5年間の保険適用期間のうちに優れた臨床結果が出れば、その後も保険が適用される。

また、尾原医師らにより、これまでの標準治療のみでは治すことが難しかった皮膚潰瘍に有効な塗り薬の臨床研究が本年中に開始される予定で、新しい再生医療として注目されている。

「血行再建術の後に遺伝子治療や再生医療を用いることで、潰瘍などの治りが早くなる可能性があります。今ある標準治療にプラスアルファで用いられる、補助療法という位置づけです。注射するだけで太い血管が次々に生えてくるというイメージを持たれがちですが、目に見えないような細い血管の新生を促す効果を期待しています」(尾原医師)

今後の動きに注目したい。(文・中川雄大)

※週刊朝日  2021年2月26日号

中川雄大

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