最低賃金 地方引き上げ格差縮小を

  • 西日本新聞
  • 更新日:2020/08/01

本年度の最低賃金について厚生労働省の審議会は、引き上げ額の目安の提示を見送った。新型コロナウイルス感染症による経済危機下では雇用の維持が最優先だとして、現行水準の維持が適当と結論付けた。

目安がない中で都道府県別の審議会が今後、地域別の最低賃金を決めるが、ここは据え置きを前提とすべきではない。

コロナ禍で経済環境は一変した。大幅な引き上げが難しいのは理解できる。ただ全国加重平均で時給901円という現在の水準は主要先進国の中でも見劣りする。

福岡を除く九州6県は最低の790円で、最高である東京都の1013円の8割にも満たない。この223円の格差は放置できない。賃金が安い地域から人材が流出する要因となっている。地域間格差の縮小につなげるため、特に地方は可能な限り引き上げを模索してほしい。

安倍政権は最低賃金の底上げに意欲的に取り組んできた。2015年には、毎年3%程度引き上げて全国平均で時給千円を目指す方針を決めた。16年度から3%台の引き上げが4年続いたのは、この政府の強い後押しがあったからだ。

19年度は成長戦略に「より早期に千円達成を目指す」と明記し、27円の引き上げ額は現行方式で過去最大となった。ところがコロナ禍に見舞われた今年は「今は官民を挙げて雇用を守ることが最優先課題」とトーンダウンしてしまった。

コロナ禍の収束はなお見通せない。景気や業績の悪化で、賃上げの余裕などないというのが経営側の本音だろう。しかし、雇用か賃金かの二者択一を迫るような議論は最低賃金制度の趣旨にそぐわない。

最低賃金はパートやアルバイトなど全ての働く人に適用される。雇用形態が多様化し低賃金の労働者が増えており、健康で文化的な最低限度の生活を営める賃金の水準を定める意義は一段と重くなっている。

厚労省の審議会が引き上げ額の目安を示さなかった例は過去にもある。このうち02年度は17県が、04年度には44都道府県が時給を上げた。コロナ禍の経済や雇用への影響も地域で差がある。都道府県別の審議会はそれぞれの地域の実情を見極めてほしい。政府が中小零細企業が賃上げを継続できるよう環境整備に取り組むことも重要だ。

日本弁護士連合会は、地域別の最低賃金を廃止し、全国一律にして全体を引き上げるよう求める意見書を政府や国会に提出した。主要先進国の多くは全国一律の最低賃金を導入済みという。地域間格差の解消には、制度の見直しも検討に値する。

西日本新聞

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